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第6章、寮(機械室)ー2「目の前のやつに集中しよ。」

本編には死体が出てきます。苦手な方はご注意ください。

太字の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
・()の中の文字は、作者による注釈です。
太字の「」は、大きな音や声です。
                    
2024年 3月 8日、更新しました。

作者より



死体を引き上げてみる


前回と同じ、寮の機械室とその周辺を拡大した見取り図です。
機械室内の機械や道具などは省略しました。
寮1階の全体を見たい場合は、第5章ー5をご覧ください。
(2023年4月15日に書き直ししました。)

  副隊長の顔が「くっ!」と歪み
くわー!重てー!!
アオバが声を上げ、水が
ザバー!!
音を立ててアオバの頭を伝って、貯水槽(?)の中へと勢いよく落ちていく。
 
 ドアの所では、ヨシツネとマーズちゃんの部下たちも見守っている。
 オフィーリアと藍白たちも来た。
「どうですの?」
「死体で蓋をしているんじゃない、みたいだぜ。」
「えー!?」
 部下たちも不安そうに、部屋の中を覗き込んでいる。
 
 アオバが起き上がり、両手に抱えていた死体たちを「ふー。」と言いながら床に置いた。
 貯水槽(?)の中を覗き込むと、頭の中に、学校の下駄箱から廊下に上がる時にえた、廊下を全速力で走って逃げる女生徒の姿(幻覚)が浮かぶ。(そうだ!あの、倒れた下駄箱や血は、亡者たちが、したことなの?)(第5章-4) 
 
 貯水槽(?)の中の水は案の定、流れて行かずまったまま。
 その底には、2つの取手が付けられた、鉄でできたような四角い板がある。
「開けてみましょうか?」とアオバ
いや、ダメ!マーズちゃんもオフィーリアもみんな下がって!機械室を出てドアを閉めて! アオバ、あの板の所を棒で突いてみてくれる?」
「了解!」
 私の緊迫した声で、ヨシツネ以外全員、外に出る。
 私の手には、いつしか刀が握られ、副隊長とその後ろのドア付近で、ヨシツネも刀を両手に構えている。アオバは細長い棒を1本、両手に持っている。
 ドアの外ではトカレフが
「マーズ様、ドアを閉めますか?」
「んな素直に俺がきくか、かまえろ!」
「はい!」と同時に「ガチャ!!」と銃の音が聞こえてきた。
「えー!? 」
 私は苦笑し、釣られて副隊長とアオバも苦笑いになっている。
 私はふと、アオバが引き上げた死体に目をやる。(あの女生徒だ!私の前を走り抜けて行った(第5章-4)・・どうして右腕がないの?・・・)
 
 私は小声で
「アオバ、ちょっと待って・・ヨシツネ。」と手招きする。
「はい。」
ヨシツネが小声で返事をして、私の所に来た。
「マーズちゃんに、」
「どうした?」
 マーズちゃんが顔を見せる(さすが私の親友)。その後ろにはニッカちゃんがいる。
「あの寮母さん、見てて。」
「OK。」
(やっと、この水の溜まった場所が何かわかった、下水道だ。機械室のこの部屋を見て不思議だった、なんでこんな地面の下にあるの? 貯水槽っていったら屋上とか高い所にあるもんだよね。(この小説内での主人公の説です 。)みんな知らないから、こんなものかって・・・だめだ、目の前のやつに集中しよ。それから・・・。)

 マーズちゃんが機械室を出たのを確認したヨシツネが、私にうなずいた。
「アオバ、お願い。」
「はいっ!」
 小声で返事をして、手に持っていた棒を水の中に入れ、板を2回突いた。
「ゴンゴン」と鈍い音がする。
「もう1回。」
「ゴゥンゴゥン!」
今度はさらに、くぐもった音が聞こえた。
「下がって。」
 私たちは、貯水槽じゃなく下水道から 目を離さずに、1歩下がる。



根くらべによる結果

 

1分ほど経っただろうか?(根くらべだ。)


 さらに1分経った。
パァン!!
機械室の外で銃声がした。
キャー!!
 ヨシツネがドアの方に顔を向け
「マーズ様が!」
(あっちが我慢できなかったか・・・。)
「来ました!」
アオバが後ろに下がる。
ガシャーン!
水飛沫みずしぶきと共に、板が天井近くまで宙を飛ぶ。その下からピンク色のイモ虫のような長い生き物が出てきて、アオバも飛び上がり
オリャ!
そのイモ虫の頭に棒を振り下ろした。と同時に自分も天井に頭をぶつけ、その下を副隊長の刀が真横に動き、イモ虫が真っ二つに切られ、その切り離された上部分が床に転がり、ピクピクと痙攣していたが、やがて動かなくなった。
 その横でアオバが
いてぇ!
しゃがんで頭を押さえている。
 
 私は下水道を覗き込み、両手を差し入れて、イモ虫の切り離された下部分を引っ張り上げる。
「自分がします。」と副隊長
 私は離れ、ヨシツネが駆け寄る。
「こんにゃろ!」
アオバは涙目で、副隊長と一緒に引っ張り上げ
「スポン!!」という音と同時に抜け
うわっ!
二人が尻もちをついた。
 すぐさま
ザァッ!
水が勢いよく流れ始める。
「ふうっ。」と、私は息を
「やったね!」と笑顔で親指を立て
「「「おお!」」」
3人が笑顔で、親指を立てた。

 水の流れる音を聞きつけたオフィーリアが駆けてきて、中を覗き込み、笑顔で
「良かったわ! 流れていますわ!」
「「おめでとうございます、姫!」」
 ナナとミミ、タガメも、彼女を囲んでたたえている。
 藍白が、笑顔で中を見て
「なんだ、それ?」
「やるよ。」
副隊長が、藍白に放り投げる。
うわっ!
藍白が慌て
「あっはっはっ。」
アオバとヨシツネが笑い、私も笑顔になりながら、床に転がっているもう半分を手に取った。涅槃ねはんにより生まれた怪物?・・・でもないな。ハップルの実験動物・・かな?)
 副隊長も自分が放り投げた半分をもう一度拾い上げ、私に
「どうします?」
「アルテミスに調べてもらう、死体を運んで。」
「了解。」
 
 そこにいる部下たち全員が二人1組で死体をかつぎ、機械室の外へと運んで行く。
(4人か・・しかもみんな服を着ていない、水は・・溜まっていたから流れで脱げたってのも、おかしいな? それとも、どこかの下水道から侵入してきて、ここ・・に流れついたのか? それにあの女の子は、あのいも虫に追われていた・・・のか?)
 オフィーリアが、藍白とミミが抱えている死体の顔を見て
「この方、寮母さんですわ!」
 藍白が落ち込んだ表情を見せ
「姫、申し訳ない、私が付いていながら・・・。」
「あなたのせいじゃ、ありませんことよ。」
部下をなぐさめながら、外に出て行く。
 その後ろから、死体を担いだヨシツネ、アオバ、副隊長、そして最後にイモ虫を手にした私が、機械室を出て行った。


次回

第7章ー寮(食堂)
1、「銀河からってことになりますか?」

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