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第16章ー第二都市(寮の3階、1番奥の部屋) 1,「一つの方向から、物を見ないようにしろ」




太字の()は、私(主人公)の気持ちや考えていることです。
()の中の文字は、作者による注釈です。
太字の「」は複数人の声や大きな声です。

作者より




 ルナの部下たち


 寮の3階、1番奥の部屋の前で私は立ち止まり、ドアの把手とってに手をかけ内側へと押す。
「あっ、澪様!」とハピラキの声
(このドアは食べられなかった。脱衣室も押し入れも・・・なぜ、あのドアだけ食べられたの? っていうか、なかったの? 金具ごと・・・。)
などと考えながら、ドアを閉めた。


この章での寮の3階、1番奥の部屋の見取り図です。
寝室と花柄のカーペットの間の壁がなく、代わりにキングが出したテーブルがあります。
登場人物たちは、そのテーブル周辺にいます。


 部屋の方を振り向くと、左手にあった部屋の壁が取り払われ、代わりに大きな長方形のテーブルが置かれ、その上には昼食と同じ豪華な夕食が並べられ、すでに食べ始めている。

 私の所に部下たちが来て
お疲れ様です。
「う、うん・・・どうしたの? これ。」と、目の前のテーブルを指差し
「押し入れも、ここに壁があったはずじゃ。」
 テーブルの近くの椅子にドカッと座っていたキングは、得意気に笑みを浮かべ
「お主、わしの能力を何もわかっとらんな。わしは出すだけではなく、入れることもできるのだ。」
「えっ、じゃ、(私が)アルケさんと話をしている間、ウロウロしていたのは・・・(14章-1)
「もちろん、部屋のレイアウトを考えていたのよ。」
「うそつけ! ついさっき、できるようになったばかりのくせに」とマーズちゃん
 監視するように置いてあった丸テーブルと椅子は、部屋の角(和室の隣)にポツンと置かれている。
(良かった、跡はついてる。)

「澪ちゃん、こっちよ!」
アルテミスが、隣の空いている席に私を呼ぶ。
 その反対側には、月の女神ルナとアーサーたち。
 ルナが立ち上がり
「私の部下を紹介するわね。」
 部下たちも立ち上がる。
「アーサーは知ってるわね。」
 アーサーが頭を下げる。
「その隣が、トリスタン、パーシヴァル、ランスロット」
 ルナが次々と名前を呼び、部下たちが同じように頭を下げていく。
 みんな、ルナのいない間の昼間の表情(12章-1)とは、打って変わって口元に笑みをたたえ、誇らし気だ。やはり、主人の女神がいるのと いないのとでは、落ち着きがまったく違う。
 私とルナがアルテミスをはさんで座ると、部下たちも一斉に座った。


 問題は山積み

 
 さっそく私が
「ルナも、しばらくいるの? 第三都市と王宮の雰囲気が悪いって、アルテミスからきいたんだけど(7章-1)・・・。」
「悪いってことは、ないんだけどね・・・第二都市が面白そうだったからよ。」
と、笑みを浮かべる。
 マーズちゃんが椅子を持って来て、私の近くに座り
「澪木、キングがお前の力がおとろえたって言うんだけどさ、絶対にそれはないって思うんだよ。お前ほどの強い力を持ったやつが、あれを視てないってのは絶対ありえないんだって。」
そう言って、グイッと一気にグラスの中の酒を飲み干す。トカレフたちも、椅子を持って来て、マーズちゃんの後ろに座った。
「良い良い、負け惜しみなら、いくらでも、きいてやろうぞ。」
キングは、さらにうれしそうだ。
(んーきっちり不定するのも嘘をついてる、みたいだし・・・もうちょっと、このままで、いたい気もするし・・・)

「みんな(主人公の部下たち)は、視えたの?」
部下たちはうなずき
「視えました。ことの起こりが」とアオバ
「ことの起こり?」
 アオバがうなずき
「降魔術でヒドルが大きくなって・・・あの排水溝の死体があったわけが・・・・・。」(排水溝の死体については、6章-1)
「じゃ、地獄の穴が空いたのは?」(2章-1)
「・・・・?」
アオバが首をかしげる。ヨシツネは考え込み、女神たちと部下たちも私たちの方を見ている。
「じゃ、降魔術により、ヒドルが大きくなったのが、ことの発端じゃないって
ことですね。」と副隊長
「んーそれも、ことの発端だけど、いつも言ってるじゃない。一つの方向から、物を見ないようにしろって。」
 アルテミスとルナがうなずく。
あれ・・は、ことの発端の出入り口に立ったにすぎない。あれ・・で、すべてを理解したと思われては困る。)ライガはどうするの? 誰がライガをこの部屋で飼い始めたの? あの今は椅子と机が、かどにあるけど、あそこ(椅子と机の跡)に座って出入りを監視していたのは誰? 誰があの机の下に写真を貼ったの? あの写真を撮ったのは誰? どうして、今はキングがけちゃったけど、あそこにあったドアはどうなったの?」(写真については、8章-4)(ドアについては、14章-1
「問題が山積みですな。」
クリスが、メモを見てつぶやく。
(さすがクリス、今のをすべて記入していたな。習慣かな?)

 キングの横にいる市長さんと校長先生は、私の物言いに圧倒されている。
「うん、まだ、問題の半分もわかってない。」
そう言って私は振り向き
「ドアがないのは、キングが次元ポケットに入れたんじゃないの?」
「わしがそんなことをするか!
「すみません。」とアオバは自分の頭をなで
「すみません。」とヨシツネ
「すみません。俺が、ことの発端って言ったばかりに・・・。」と藍白
 タガメもうなずいている。
 トカレフやサイケ、ヒアキッソス、アーサーまでが
すみません。
(いや、あれ・・だけが、ことの発端じゃないって言いたいんだけど・・・わかってくれたかな?)
「お前はあれ・・を見とらんから、そのようなことを言えるのだ。あの、まるでその場にいるかのような、鮮やかで強烈な血の匂いまでしてきそうな・・・まだ、あの ちぎれた右腕の傷口と飛び散った血の様子が、ありありと目に浮かぶ。」
キングはうっとりしている。(幻覚については、13章-1)
(幻覚ですけど・・・)幻覚です。」
「いや、あれは幻覚などではない。過去にあそこで起こったこと、つまり、ことの発端だ!
(だから、それだけじゃないんだって。これだからあまり、みんなと視たくなかったんだよな。幻覚の強烈さに現実を見失ってる。確かに、あの絵を除けたら、あの様子が頭に浮かんだ通りに出てくるんだと思うけど・・・。)


 明日の予定と寝る所


「それで? 明日はどうするの?」と私
 キングは、しばらく考え込み
「明日は、校長と市長が校舎内を案内してくれるそうじゃ。そういうお前は、どうするのじゃ?」
「せっかく校長先生と市長さんが案内してくれるんだったら、一緒に行きますけど(いろいろ見て回ったら、いろいろなことが、わかってくるだろうから・・・私の言ってる意味も、わかってくれるかな?)マーズちゃん、部屋はどこ・・にするか決まった?」
「キングはな・・・ここ・・にするらしいぜ。」
(やっぱり・・・・どうりで、いろいろレイアウトしてると思ったら・・・)
 アルテミスが
「私とルナは二人部屋にするわ。誰も希望したい人はいないし、ベッドは隣から持ってきてもらって」
(さすが、ライガに食べられた遺体なんて、ものともしない。)じゃ、アーサーさんたちは、その隣ですか? ナナちゃんとミミちゃんがいた。」
「はい。」
アーサーが幸せそうにうなずく。
「俺たちは、どこにしようか?」とマーズちゃん
「んー・・・・」
「♪〜♪〜🎶〜♪〜♫・・・」
バッカスがハミングし始めた。
(退屈しているようだ。場所を変えるか・・・)

「キング」
「なんだ。」
「私たち、食堂で食べようかと思うんだけど・・・・。」
「おっ、いいぞ、いいぞ、好きにしろ、わしは疲れた。クリス!」
「はい。」
「余は寝る。」
「かしこまりました。わたくしも、女神さまたちのお話を聴きたいのですが・・・。」
「かまん、かまん、好きにせ。あっ、この上の物、すべて好きにして良いぞ。」
 言われなくても立ち上がり、椅子を元の位置に戻したり、グラスを手に持ったりしていた私たちは、校長先生と市長さんも一緒に、テーブルの上の料理、食器、グラスを持てるだけ持って、ドアの方へと歩き出す。
 アルテミスが笑顔で、ドアを開けて待っている。
 ふと思いついた私は、振り向いて
「キング、幻覚にとらわれて現実を見失わないようにね。気づいたら、足元をすくわれてた・・・・・・ってことになっても知らないよ。」
そう言うと、部下と共に出て行った。


次回

第17章ー第二都市(食堂)
1,「月の光は、幻覚を視せるのよ。」

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