奇妙な家族⑨-1
中学生になった私は下の姉と5年ぶりに一緒に暮らすこととなります。構成は母、私、姉、そして姉の彼氏でした。初めの内はよくわかっていませんでしたが、姉の彼氏は暴力団の方でした。
ここまでの私の住まいをまとめると、
父親から虐待を受け母親と夜逃げ
そして母親と夜逃げして母親が男の所に行ってネグレクト
中学に入り姉の彼氏の暴力団の人と暮らし始める
文字にしてみると中々な略歴です。この話しの流れから言うと大変な新たな家庭環境になる展開な訳ですが、私にとってこの時が一番家族を出来ていた時期でした。
この暴力団の彼氏は地元で知らない人が居ないぐらいに有名な人でした。何度か
「あのマンションに◯◯くん住んでるらしいから近づかん方がええで」
っと言われたことがあるぐらいで、
(一緒に住んでるねんけどな)
っと内心思っていました。こんな悪名高い彼氏でしたが、私に対しては一度も暴力的なことや何かを言ってくることがなかったのです。武勇伝らしき話しをされたこともありません。怪しい携帯が山積みで怪しい機械もありました。のちに飛ばしの携帯と言われるものと体感器と言われるものだと言う事を知ります。
私もよくわからないのですが、飛ばしの携帯とは昔通話料が高かった時代携帯電話で長電話は出来なかったんです。携帯は料金を払わなくても2ヶ月ぐらいは止まらないようで、携帯を債務者の方に契約させ、この携帯を売ると電話を2ヶ月かけ放題の携帯電話が誕生するとのことでした。体感器はパチンコかなんかの当たるタイミングに打てるマシンみたいな感じです。両方気になったのでその時姉の彼氏に教えてもらった説明です。中学生ながらに2ヶ月しか使えない携帯が数万円で売られる理由がよくわかりませんでした。今思うと当時の電話代やテレフォンカードなどを考えると安かったかも知れません。
話は戻りますが、姉の彼氏は私の事を色々な所に連れて行ってくれました。姉は水商売をしていて家にはほとんどおらず、母は相変わらず家に居なかったので、他人の暴力団と呼ばれる彼氏が一番私に寄り添ってくれました。
一緒にゲームセンターに行ったり
一緒にプレステを買いに行ったり
ご飯を食べに行ったり
本当に良くしてくれました。私を悪の道に誘うことや一緒にやることなど一度もありませんでした。
私はその頃非行に走っていた時期でもあったのですがある日彼氏に
「ご飯食べに行こう」
っと誘われて車で出かけたことがあります。1時間ぐらい走った後大きな建物の前で車は止まりました。そこは鑑別所でした。彼氏に降りるように言われて私は一緒に降りました。すると彼氏が私に
「お前はこんな所に入りたいんか!」
そう一言だけ言いました。暴力団の彼氏が私に言っていることは矛盾しているのはとてもわかります。ただ、当時の私には本気でぶつかってくれているこの姉の彼氏の一言はとても有り難かったです。まるで
「お前はおれみたいになるなよ」
言葉にはしなくてもそう言っているようでした。
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