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#42 人工内耳を装用して見えてきたこと②(前編)

にいまーるは、障害福祉サービス事業を中心に手話普及活動も行なっている団体であり、ろう者と聴者が一緒に働く職場です。
障害福祉サービスの利用者は全員耳が聴こえません。
しかし、スタッフの比率は、ろう者2割:聴者8割と、聴者が多いので、双方の文化の違いが垣間見え、時には食い違うことも多々あります。
そんな職場から生まれ出る、聴者とろう者が共に仕事をする中での気づきを連載していきます。
今回は、にいまーると繋がりのあるCさん(匿名希望)から寄稿いただきました。ご自身の経験をもとに「人工内耳」について書いていただきました。
前回の記事は、こちら
■プロフィール
Cさん(匿名希望)
生まれた時は中等度難聴。補聴器を装用して、地域の小中学校(難聴学級)に通う。13歳の時に完全失聴。手話を学び始め、高校は聾学校高等部に進学。以降、手話を中心にコミュニケーションをとる。30歳のときに人工内耳手術を受け、左耳のみ内耳を装用。現在は特別支援学校教員として勤務。

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 みなさん、こんにちは(^_^)/
前回の寄稿をいろいろな方に読んでいただけたこと、とても嬉しく思っています。様々な人工内耳装用者(ユーザー)がいますが、その中の一人の想いとして知っていただけるとありがたいです(^_^)

 さて、前回は『人工内耳にしていても「条件付き」でしか聞こえない』ということをお話しました。同じ人と話していても、場所によって聞こえ方が全く異なり、『聞こえる時と聞えない時の格差(ギャップ)がかなり大きい』ということがわかっていただけたかと思います。人工内耳ってとても便利だけど、「聞えているはず」と誤解されることが多いのが難点です。その人工内耳と上手に付き合っていくために考えてほしい大切なことをお話していきたいと思います。

大切なこと① 
「人工内耳にしても聞えないことが多い」という現実を知り、受け止める

 「誰が?」と聞かれたら、みなさんは「周囲にいる方」と答えるのではないでしょうか。周囲にいる方ももちろんなのですが、私はそれ以上に、人工内耳を装用している人、つまりユーザー本人が受け止めなければいけないことだと思っています。「ユーザーは経験としてわかっているのではないか」と思われるかもしれませんが、実はユーザーが一番混乱していて、現実を受け止めづらい状況にあるのです。

 それは、『聞こえる時と聞えない時の格差(ギャップ)』を素直に受け止められず、「聞こえる時はもっとよく聞こえているから、聞こえないのは自分の努力不足、集中不足。もっと頑張って聞かなきゃ!」と錯覚してしまうことがあるからです。

 しかし、このギャップは人工内耳の聞こえの特性からきている問題であって、本人が努力したところで解決するわけではありません。そのことをユーザーが受け入れ、自分を「追い込まない」「責めない」ことが大切だと思います。もし、努力するのであれば「環境を整える」工夫をすることに力を注いだ方が良いでしょう。「頑張って聞こう!」という姿勢は、無駄にエネルギーを使ってしまうだけなのです。

 周囲の方々には、そういった背景を知って頂いて、もしユーザーが聞き取れなくても「ちゃんと聞いていないから!」「もっとよく聞いて!」と言わずに、静かな場所でもう一度伝えるなどの工夫をしていただけると嬉しいです。

──後編へ続く

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文:Cさん

編集:横田大輔
Twitter:@chan____dai


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