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#83 就労継続支援B型、それは多くの人に寄り添う働き方

今回は、にいまーる卒業生の米本さんから、就労継続支援B型についての寄稿をいただきました。

私はある機会に「就労移行支援」という支援方法を知り、それをきっかけとして、にいまーるがおこなう「就労継続支援」を思い出しました。
就労移行支援について詳しくなった私は、「なぜにいまーるでは就労継続支援B型の事業を扱うことにしたのか?」という一つの疑問を持ちました。
そこで、理事長の臼井さんににいまーるで就労継続支援B型の事業を始めた経緯を伺いました。

1. 前提知識

障害があり一般就労が困難な方が、障害福祉サービスを利用しながら就労することを福祉的就労と呼び、「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「地域活動支援センター」の3つの施設種別があります。
「就労継続支援A型事業(以下A型)」と「就労継続支援B型事業(以下B型)」は、障害者総合支援法で定められた就労系障害福祉サービスであり、それらを提供する施設が「就労継続支援A型事業所」「就労継続支援B型事業所」と呼ばれます。

一口メモ
「就労定着支援事業」や冒頭で触れた「就労移行支援事業」も障害者総合支援法で定められた就労系障害福祉サービスに含まれます。

A型とB型では、目的対象者収入の面で違いがあります。
A型は、就労機会の提供と一般企業等で働くためのスキル向上を目的としています。対象者は、一般企業への就労が困難な方で、支援があれば雇用契約に基づき働くことが可能な障害を持つ方です。雇用契約を結ぶこととなるため、最低賃金以上の給料の支給があります。
一方でB型は、就労機会の提供と生産活動の場の提供を目的としています。対象者は、一般企業への就労が困難かつ雇用契約に基づく就労が困難な障害を持つ方です。雇用契約を結ばないため、給料ではなく工賃が支払われ、その相場は数千円〜数万円程度です。

なお、福祉的就労のもう一つの施設種別「地域活動支援センター」は、障害者総合支援法の中でも地域生活支援事業にあたり、障害がある方が自立した生活を送れるように、居場所や生産活動の場を与えることを目的としています。市区町村ごとの事業のため、活動内容や利用条件は各地で異なりますが、就労継続支援との大きな違いとしては、就労ではないため給料や工賃が発生しないという点が挙げられます。

2. にいまーるで就労継続支援B型の事業を始めた経緯

にいまーるが運営する「就労継続支援B型 手楽来家」でおこなっている活動については、過去のコラムをご参照いただけたらと思います。
#3 にいまーるってどんなことをしているの? (前編)
#67 手楽来家が行っている「就労支援」
臼井さんにその活動目的を伺ったところ、以下の理由を教えてくださいました。

まず背景として、一般就労に困難を抱えているろう難聴者向けの支援サービスがほとんどないことで、適切な支援を受けられないまま困っている老難聴者が多くいるという現実がありました。
そのため、2012年に新潟市で「地域活動支援センター 手楽来家」として活動を始めました。ただし前述の通り、地域活動支援センターは市町村の事業であり、サービスの利用は、新潟市在住の方のみに限定されていたため、市外から利用したいという方は断らざるを得ませんでした。

事業規模を拡大し、より多くの人に支援を提供するため、2014年には、地域活動支援センターから就労継続支援B型に転換しました。これにより市外の利用者の受け入れが可能になり、予算の規模も変わりました。

A型ではなくB型を選んだ理由としては、次のような背景がありました。
・ろう難聴者は、就労面だけでなく日常生活面での課題が大きく、A型では対応しきれないことが想定された。
・A型では受け入れる枠が限られてしまう。

3. 多くの人に寄り添う働き方

臼井さんから話を伺い、より多くのろう難聴者を救いたいという気持ちが臼井さんにあったことを感じました。元よりNPOは、社会貢献活動をおこなう団体を指しますが、より広くサポートが可能な形態が就労継続支援B型になるのだと思います。
事実、令和2年3月地点で就労継続支援B型の利用者数は約27万人、就労継続支援A型の利用者数の約4倍にあたります(厚労省データより)。それだけ多くの人を就労継続支援B型は救っていることになります。私も就労移行支援に救われる現状を知る身であり、同様に就労継続支援B型は社会に踏み出すステップの一つになっていることは確実です。
さらに手楽来家では、就労支援に加えて生活支援もおこなっており、様々な目的を持つ利用者が集まるからこその賑わいは、ボランティアやアルバイトとして関わる中で強く感じました。

現代では、多種多様な働き方が認められつつあります。
就労継続支援B型では、工賃向上が今後の課題となっているそうですが、それ以上に就労継続支援B型という働き方が、世間に広く伝わっていくことが、まず解決されるべき点であると思います。

[参考]
https://works.litalico.jp/column/system/041/
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000571840.pdf
https://works.litalico.jp/column/system/002/
https://works.litalico.jp/column/system/020/
https://works.litalico.jp/column/system/021/
https://guide-ss.com/s-wage/
https://works.litalico.jp/column/system/036/


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文:米本江里

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