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#47 新しいエンターテイメントの在り方

8月6日・7日に「全ての人に音楽を!」というテーマのもと、音楽・ダンス・お笑いに手話をつけて、全ての人にエンターテイメントを届ける夏フェスが開催されました。「香水」という曲で有名な瑛人さんなど、数多くアーティストが出演されていました。今回は、フェスの様子や僕が感じたことをご紹介します。

フェスは、各アーティストが順番に 30 分ほどのパフォーマンスを披露していく形式で行われました。パフォーマンスの合間には、司会進行 MC の時間も設けられており、落ち着いて楽しめるフェスとなっていました。MC の語りでは、楽しませるような話だけではなく、手話に興味を持ってもらえるよう簡単な手話(例:拍手、MC のサインネーム、ありがとうなど)に触れる機会もありました。

フェスに参加するアーティストのほとんどが、今回初めて見る方々でした。しかし、そんな僕でもフェスを心から楽しむことができた理由があります。

一つ目は、ステージ上のスクリーンに歌詞が表示されていたことです。初めて聴く曲だとメロディは楽しめるけど歌詞が聞き取れず、なかなか楽しめないということがあります。今回は、パフォーマンス中でも、歌詞が表示されていたので、歌詞を見ながら一緒に歌って楽しむことが出来ました(もちろん心の中で)。

二つ目の理由は、手話通訳がついていたことです。司会進行中だけでなくパフォーマンス中であっても、サポートダンサーや HAND SIGN というグループがダンスを織り混ぜた手話通訳を行っていました。表現者としての流石の技術とでも言うのでしょうか。表情がとても豊かで、彼らの手話通訳は、通訳というよりはむしろそれ自体がパフォーマンスとして完成していると感じられるほどでした。ここの歌詞はこのように表現するのかと感心する場面もあり、手話の勉強という点でも楽しむ v ことができました。(ただ、アーティストを見たり、歌詞を見たり、手話通訳を見たりで目がとても大変…)

こういった理由から手話フェスを楽しむことができた一方で、少し残念な点もみえました。

一つ目は会場が極端に暗かったことです。移動する際にも手すりに掴まって移動しないと転んでしまうんじゃないかと思うほどの暗さでした。今回のフェスは難聴者やろう者に向けてエンターテイメントを提供する場としているのであれば、手話が使われることを想定した明るさにして欲しいと思いました。

二つ目は、アーティストが、曲と曲の合間にアドリブで話す所には手話がついていなかったことです。アーティストのパフォーマンスが終わり、司会進行の MC が入るところでは手話通訳が付きますが、どうしてもアドリブの所になってしまうと手話通訳が付きません。アドリブの所まで手話通訳が付いていれば文句なしでした。

今回のフェスは、テーマの通り全ての人にエンターテイメントを提供できたフェスとなったのではないかと思います。今までろう者が話についていけず置いていかれてしまい、空気感に差が生じてしまう状況を目の当たりにしたことがありますが、このような状況が少しでも変わり、全ての人とエンターテイメントを共有していける世の中になっていけたらと思います。今回のフェスは vol.1 ということで、今後も開催される可能性がありますので、皆様も機会があればぜひ足を運んで下さい。

余談ですが、個人的には普段のアーティストのライブに比べて一体感を得られたと思います。初めての曲でも歌詞と手話をみながらノリノリになれたのが最高でした。大好きなアーティストで終始ハイテンションで参加するライブも楽しいですが、こういったライブの楽しみ方もあるのだと気づくことができました。

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文・大野悟志

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