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#21 【NPO法人にいまーる】 職員インタビュー vol.3|卒業生座談会

NPO法人にいまーるは、
• 聴こえる⼈と聴こえない⼈がお互いに⾼め合える場を作る
• 社会的少数派(マイノリティ)の⽣きづらさを解消する
• 聴覚障害者の社会資源を拡充する(ゆりかごから墓場まで)
を理念に、聴覚障害を持つ人の就労支援や生活支援,社会参加の支援,居場所づくりなどを行う団体であり、ろう者と聴者が一緒に働く職場です。
活動の詳細は過去の記事をご覧ください。

「NPOで働く」と言ってもピンとこない人も多くいるかもしれませんが、現在にいまーるでは多様なキャリア・バックグラウンドを持つ職員が就職してきており、またボランティアやアルバイトなども含めると多くの人が働く場所として集まる場所になってきています。

3回目のインタビューとなる今回は、3月いっぱいで卒業となる3人の学生アルバイトを招き、座談会形式で行いました。

3月も残りわずかとなり、出会いと別れの季節が近づいています。それは、にいまーるも例外ではありません。
今年度にいまーるを卒業する学生スタッフは3名。彼らは4月から新潟を離れ、社会人として仕事を始める予定です。

今回は卒業を間近に控える彼らに座談会形式でお話を伺いました。登場人物のうち、Wさんは難聴者、YさんとOさんは聴者です。

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手話に興味を持ったきっかけ

横田:
はじめに、手話に興味を持ったきっかけ・理由を教えてください。

Wさん:
私は、もともと小学校高学年の時に、難聴学級の先生にちょっと手話を教えてもらっていたんだけど、私はみんなと一緒に口話がいいっていう気持ちがあったから、成長するにつれて手話はあんまり使わなくなりました。だけど、大学に入ってから手話サークルがあることを知って、聞こえない人の考えも知りたいから手話を覚えた方がいいかなと思って、手話の勉強を始めました。
聞こえる人の考えも大事だけど、聞こえない人の考えも同じように大事だから、両方の考え方を大切にするためには手話も覚えた方がいいなって思って。

美穂さん

写真:Wさん(手前) 

横田:
じゃあもう本当に、大学からっていう感じですか?

Wさん:
小学校高学年の時は友達が手話に興味を持ってくれたから、先生が話してるときに、こっそり指文字で内緒話したりとかっていうのはしてたけど、中学校・高校の時は手話は全く使ってなかったです。私にとっての普通は、聞こえる世界が普通だったから、もし聾学校に通ってたら普通に手話を使ってたと思うんだけど、私の場合は、周りが聞こえる人たちだったから、口話でやってました。

Yさん:
私が手話を始めたきっかけは、にいまーるとは別のアルバイトをやっているときに、たまたま手話を使う人がお客さんとして来たことです。私はろう者が手話を使うっていうのが当たり前だと思ってたから、もしまたアルバイトをしているお店にろうのお客さんが来たときは手話をやる方がいいんだろうなって思って、勉強を始めました。

横田:
お二人は、普段なかなか交流することがないろう者との交流やろう文化みたいなものに興味を持って、手話を始めたんですね。
僕が興味を持ったのは、言語としての手話、手話そのものだったので、ろう者とか考え方についてはあまり考えてなかったです。

Oさん:
おれも(横田に)近いかな。どちらかというと、手話そのものに興味があって始めたっていうのはあると思う。
英語とかだと、ただアルファベットが並んでるだけだけど、手話の場合は手の形や指の形に意味があるから、覚えやすいししゃべりやすいっていうのもあって、覚えるべきっていう使命感じゃなくて、覚えたいっていう前向きな気持ちがあったから勉強したかな。

横田:
手話の存在を知った理由は何ですか?

Oさん:
高専に通ってるとき、ある日、ベッドで横になって音楽を聴いてて、音楽の歌詞の深い意味を考えてたら、音楽いいなぁと思って、聞こえない人にも音楽の良さを伝えたいなぁっていう思いから、ちょっとずつ聴覚障害に興味を持ったって感じかな。で、そこから、補聴器とか聴覚障害に興味を持って、試しに手話を始めたらその面白さにはまって、今に至ります。

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写真:Oさん

横田:
僕も含め皆さん、手話の勉強が面白いから今も続けてるんでしょうね。

Oさん:
にいまーるに通うとなると、手話を使わないといけないから、自然と上達するというか、覚えるのは早いよね。言語を使って慣れるというか、手話を使う機会が増えたのは、今も勉強を続けられてる一番の理由かな。

興味から仕事へ

横田:
皆さんが手話の勉強を始めた理由は分かったんですけど、にいまーるでアルバイトをしようと思ったのはなぜですか?僕らの場合、大学の手話サークルに入っているので、にいまーると接点があるってのは分かりますけど、バイトをするとなるとそこから一歩踏み出す必要があるじゃないですか。

Yさん:
私はアルバイトをやりたいって自分から言いました。
たまたまコロナが広がって自分のアルバイトがなくなったから、にいまーるのボランティアに来てたんです。そこでにいまーるの様子を見て、もっと自分にできることがあるな、ボランティアだけだともったいないなって思いました。ここの環境も好きだし、もっと仲良くなりたいっていうのもあるけど、でも一番はやっぱりもっとサポートできる立場になりたいって思って、アルバイトを始めました。

Oさん:
アルバイトになるといろんな人とのかかわりが増えたよね。ボランティアの場合、いつもおんなじ人としゃべって終わっちゃうから、他の、例えばクロネコとか内職の人ともかかわりが増えるかなって。

Wさん:
もともと部活で忙しかったんですけど、コロナで活動停止になって、私も暇になって、もともと聞こえない人とも話したいって気持ちはあったから、それを臼井さんに言ったら、じゃあここで働いてみたらって言われて、それで始めました。ボランティア経験は一回だけだから、他のアルバイトのみんなとはちょっと状況が違うんですけど。

Oさん:
いきなりバイトになって、緊張というか、知らないことばっかりで不安はなかった?

Wさん:
たぶんだけど、私、利用者さんと同じ聞こえない立場だから、なんだろう、入りやすかったかな。他のアルバイトのみんなはたぶんギャップとか感じるところもいっぱいあると思うんだけど、私の場合は、同じ障害を持ってて、生活の中で困ることとか共通してるから、だから、割とすんなり入れたかなって思う。

横田:
アルバイトをはじめてから、にいまーるの様子を見てどうでしたか?Wさんの共通点があってっていうお話もありましたけど、何か思うことや感じることがあれば教えてください。

Wさん:
似てるといっても、実際は年齢も上だし、育ってきた環境も違うから、昔のろう学校は聴覚障害に対する理解がなくて苦しんだことがいっぱいあったっていう利用者さんのお話を聞いて、取り巻く環境の違いを実感しました。私は聞こえる学校で、難聴学級を置いてもらって、不満というか理解してくれないとかそういうのは全くなかったです。だから、充実した支援を受けながら、まあ苦しいこともあったけど、でも手話使用禁止みたいなこともなかったから、利用者さんのお話を聞いて、時代が変わってるんだなとか、私にとって当たり前だった環境でも、高齢の方は違ったんだなっていう、そこはギャップを感じたことがありました。

Yさん:
第一印象で言うと、個性がぎゅって詰まってる場所だなって思いました。今までって、小学校とか中学とかって、成長しても周りにいる人って大体似たような人だなぁって感じがあったんですけど、にいまーるって今まであんまり会ったことないような人がたくさんいて、今までとは違う人と出会える場所だなと思ったし、だからこそ、みんなが自分をしっかり持って働ける場所なのかなって思ってます

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写真:Yさん

Wさん:
確かに皆さん堂々としてる(笑)。それだけここが働きやすいんでしょうね。

Yさん:
ろう者だけじゃなくって、障害者の場合って、なんて言うんだろう、他の会社のホームページとか見ると、特別枠みたいな、なんか全然違う場所にいるような印象があります。でも、にいまーるだと聴者もろう者も普通に一緒に過ごしてるし、働いてるし、あんまりそういう区分みたいなのも全然感じないです。それは一人一人が一個人として過ごせる場所だからこそ、そういう見方ができるんだろうなと思います。

Oさん:
自分はろうの、特に高齢者の方々がすっごい元気だなと思って、聴の高齢者、例えば自分のおじいちゃんおばあちゃんだとずーっと寝てるだけみたいな、元気がないみたいなイメージなんだけど、ここの高齢の人は、本当に積極的で元気。

Wさん:
活発ですよね。生き生きしてる感じ。

Oさん:
そうそう、自分のおじいちゃんと同い年⁈って思うくらいの方が多いので、ほんとに。っていうのにびっくりした。手話で話す分、動きが多いから元気なのかな?

横田:
にいまーるって「NPO法人」じゃないですか。僕はNPOって聞くと、何をやってるんだろうとか堅苦しいのかなってイメージを持ってたんですけど、実際はイメージと全く違ってびっくりした経験があります。皆さんはいかがですか?

Yさん:
アルバイトとして来てるけど、働いているっていうような気持ちじゃないかな。なんか、遊びに来たみたいな(笑)。遊びに来て、手伝うよみたいなぐらいの(笑)。今までのアルバイトの様子と比べると、にいまーるのアルバイトって、全然仕事に対する気持ちが違うなって思います。

Wさん:
単純に作業をするんじゃなくて、学びながら仕事するみたいな、常に相手が何を考えてるかとか、どうしたら情報が伝わるかとかを考えながら働いてました。でも毛利さんをはじめとするスタッフの皆さんも、利用者さんとのコミュニケーションの取り方がうまいから、それをまねて、学ぶっていうところはある。たしかに、仕事っていうよりは学びに来てるっていう感覚ですね(笑)。

Oさん:
普段の無意識にやる作業でもいろいろ考えながらやるから、どういう方法が一番いいのかなとか考えながら作業するようになったと思う。

Wさん:
そういうことに意識を向けるようになったのも、スタッフの皆さんが...。

横田:
忖度を感じる(笑)。

Wさん:
本当に、まじで(笑)。
お世辞とかそういうんじゃなくて、本当に刺激をもらえる。コミュニケーションの取り方は毛利さん、私が始めた頃は毛利さんが生活支援に入ってたから、利用者さんとのかかわり方では、毛利さんがすごく刺激になったのはあります。

Yさん:
まねして習得したいけど、絶対無理だなって思うくらいにスタッフの皆さんの支援のやり方はすごいと思います。でも、逆に私が当たり前にやってることでも、スタッフの方に褒めていただけることもあって、だから、ただ一緒に働いているってだけじゃなくて、アルバイトの頑張りをちゃんと見てくれるスタッフがいっぱいいるんだなって思います。

読んでくれている方々へ

横田:
最後にまとめとして、後輩へのメッセージやこれまでの思い出など、ご自由に語っていただければと思います。

Yさん:
私はもともと昔から、他の人に頼るのがすっごい苦手だったんですよ。だから、自分でできることは自分でやろうみたいな気持ちがあるので、他の人に質問したりするのがすっごい苦手でした。でもここに入って、利用者の皆さんも分からないことはきちんと質問して、自分の仕事はしっかりやる様子をたくさん見ました。分からないことを聞ける環境っていうのがちゃんとある場所なので、誰でも誰にでも質問しやすいのかなって、私としては思います。だから分からないことがあっても誰かに聞いて仕事を成功させる、その経験がゆくゆく自分から行動するっていうことにつながるので、全然怖がる必要はないんじゃないかなって思います。それができる場所だと思います。
聞いて答えてくれる人がいるって当たり前じゃなくて、しかも聞いてくれてもそれにしっかり答えてくれる人って全員じゃないと思います。だからこそ、聞けば答えてもらえるっていう安心感が、また次の仕事の成功につながるっていうのを経験してきて、私は変わることができたのかなと思います。にいまーるは優しい人が多いですね。

Wさん:
優しいし、利用者さんとか職員さん関係なく、みんなが自分らしく活動してると思う。みんな自分の中に考えがあって、自分を持ってる感じがあるから、私も顔色をうかがうとかじゃなくて、私も私で行動してもいいんだって思うことができました。あとは意見を出しやすいところだから、自分も組織に関わっていける、関わりやすいところだなっていうのは感じます。ただのバイトだから関われないとか、場所によってはそういうところもあるかもしれないけど、にいまーるはアルバイトの意見も大事にしてくれるから、自分なりに疑問に思ったことがあれば意見を出していって、にいまーるという組織の一員として、取り組みに参加できるから、自分から考えて意見することができるようになりました

横田:
アルバイトって基本的には上から与えられた仕事をやるだけですもんね。

Yさん:
自分が思ったことをちゃんと認めてもらって、使ってもらえるのって、すごいなと思います。アルバイトでもそんなことできるんだって。普段使っているものが、自分で作ったものだって分かるとモチベーションも上がるし、直接目で見て分かるのはアルバイトとして関わっていて嬉しいなって思います。
実際、利用者さんも、イベントの時に各々に担当があって、嫌だとかいろいろ言うけど、結局しっかり最後までやりきることができるのは、利用者さんもスタッフもみんなが仕事をもらえて成果を褒めてもらえるから、頑張れるんじゃないかな

Wさん:
ちゃんと認められてるんだとか、役割があるんだって、それがモチベーションにつながるんだと思う。

横田:
そうですよね。僕らだけじゃないですね。みんながそうです。

Oさん:
自分は後輩に向けてみたいな感じで行こうかな。
自分は一応高校くらいから、手話を自分で勉強はじめて、今アルバイトで4年か3年かやってきましたけど、自分で考えて、自分で行動を起こすのがやっぱ大事だなと思いました。で、誰かに言われてやるんじゃなくて、自分で行動を起こす方法を学べたかなと思います。それくらい大事な、ありがたい経験をさせていただきました。で、後輩...(笑)。

横田:
みんな、Oさんの言葉をにやにやしながら待ってますよ(笑)。

Oさん:
まあ、遠慮せずに、積極的に、自分から動いてくださいってことは言いたいかな(笑)。

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今回は、4月に卒業する3名の学生アルバイトのインタビューを座談会形式でお送りしました。

僕にとって、Oさん、Yさん、Wさんは、手話サークルでもにいまーるでもお世話になっている大先輩です。丸3年のかかわりですが、今回のインタビューで今まで話したことがない内容について、お聞きすることができて、僕自身非常に楽しかったです。

この記事を読んで、にいまーるで働く学生アルバイトの雰囲気を知ってもらい、にいまーるに興味を持っていただけたら幸いです。


インタビュアー/ライター:横田大輔
twitter:@chan____dai

編集:吉井大基
Twitter:@dyoshy_
Facebook:@daikiyoshii4321


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