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嫌わなければ、生きてはゆけぬだろうか。(いちとせしをりさんの話もする)

「『戦争』をいっちばん最初にはじめた人間がいなければ、いまこんなことにならずに済んだのに」と、至極当たり前という顔で小学生に言われた。

歴史の教科書と睨めっこしながら宿題を進める、家庭教師先の小学生の女の子。
鎌倉幕府に入ったあたりで、いよいよ『〜の乱』が多すぎて頭がこんがらがってきたらしい。

「なんでこんなにセンソウするのーーー!」
と怒るので
なんというかもう、せやねぇ、って感じ。
戦争っていうか戦乱?と思いながら。

「日本が初めてセンソウしたのは元との戦いでしょ?なんかそういうのとかさ、最初のやつがなかったら、始まらなかったら、ひとつもないままでいられたのにさーー!」
って言うので、考えてみた。

たぶんだけど、日本の歴史の教科書的には
お米を作るようになって、そのあたりから村ができ出して、そうこうしてたら村同士の争いが起こって、、
そんなこんなでだんだん武器が強くなって
戦う専門の武士なんかも登場したりして
そうやって気が付いたらこんなことになってしまっていたんだろうねぇ、と。

「そんなことしなきゃいいのに!」
って言うので
「んーー、じゃあたとえば、明日から一回も誰とも喧嘩しなかったらこの世からいつか全部争いがなくなるよ、って言われたらあなたはもう二度と喧嘩しないでいられる?」
って聞いたら、即答で
「えーむり。」とな。


わたしたちの記憶よりはるか昔、当たり前のように争いがはじまっていて
それに乗じるように、それを大きく膨らませることに長いこと尽力して
今でこそ日本は戦争をしない国として在るけれど、それはすごく稀有な状況で、
『戦争』と名のつくものをしないだけで、いくらでも日常的にひとは他人と争うし、傷つけるし、排除しようと躍起になっている。

これは、人間の本能というしかないのだろうか。

いっちばん最初にセンソウを始めたひとが、特別悪いんだとは思えなかった。
むしろ、そんなひとは実は存在しないのだろうなとすら、思った。

少しずつこじれて、少しずつ攻撃的になって、殺してしまいたいという気持ちがどこかで生まれて、そして実行された。
人類の文明や技術が発達して、たくさんの場所を訪れることができるようになって、たくさんの人々と出会って
殺したい相手の頭数が、増えたのだ。

「いちとせしをり」という敵のブーム

いま、Twitterやnoteでいちとせしをりさんの過去の投稿、発言内容が露見して、これでもかというくらい批判されている。
わたしは以前からいちとせさんのエッセイを、つまみ食い程度ではあるが、バズったものくらいは、読んでいた。
ネイルや口紅を買うのに、震えるほど勇気が必要で、それに人生が変わってしまうくらいの幸福体験を得られる人がいるのだな、と
幸福であるのならそれは素敵だ、と
そう思って文章を読んだ。

わたしは女性としてうまれて、
女性として迷うことなく生きていて、
それでもこの邪魔っけな胸がない身体はどんな気分なんだろうと憧れるし
男女の性差のないファッションも好きだし
引越しに便利な筋肉がある身体を体験してみたいし
それと同時にこのやわらかい肉体を愛していて、顔を華やかにすることを楽しんでいて、アクセサリーの似合う、体毛の濃くない身体っていいなと思いながら、ネイルアートにハマっている。

LGBTのひとの感情はわからない。
というかひとなので個人差も大きいと思う。
でもきっと、おそらくだけど葛藤したでしょう、自分が男性なのか女性なのか葛藤したでしょう。
わたしは女性として、わたしの男性的な好みや思想をプラスαのおまけアイデンティティとして楽しんで扱っているわけだけど(女性のくせに男性的なショートヘアにして、ジャニーズみたーいと言ってもらう遊びとかね)
でも彼ら彼女たちには、きっとそれが難しい。
女性になりたいひとの男性的な個性は
「ほんとうにわたしは女性になりたいの?」という迷いに繋がるだろうし、「なんだお前、やっぱり男なんじゃん」って、きっと言われてしまう。

誰にでもあるアンバランスなのに
心と身体が一致しなかったひとの心は、アンバランスになることを許してはもらえない。

今回のいちとせさんの過去のツイートを見て、「あらまぁお口のお悪いこと」とは確かに思った。不快になるひともそりゃあいる。でも、本当に傷ついたひとだけが、それを主張すべきだと思った。
「そんなの女性蔑視だ!!」って叫ばれている女性に属しているわたしは、おそらく、彼女に蔑視されてなどいない。
されていたとて、傷つきもしない。
彼女が攻撃的な発言をすることで守っていたのは、ただ彼女自身で、わたしやその他女性を心から犯しめてやりたいという気持ちはたぶんない。
あれらに対して怒っていいのは、実際に口汚く罵られた‘ばばあ’や、おっぱい揉ませろとか言われて(不快に思ったのかすら知らんけどその相手の)女性だけで、その人らは法的措置でもなんでも取れば良くて、外野が口を出すことはなにひとつない。
わたしたちが、彼女の葛藤に巻き込まれて、傷を負う必要は、はなからどこにもない。

わたし、自分のことそこそこ穏やかでひとを肯定するタイプの人間だと思ってるけど
思ったことはあるもん。
おデブで汗臭いおじさんと電車で密着したくないなーとか思ったことあるもん。
男性軽視と言われればごもっとも、その通りです。
化粧くさいおばばも得意でないよ。不快だと思うよ。
それくらい誰でも思ってしまうもんやないん?悲しいけど、全人類すべてを愛し許すことはできんから、戦争は始まったし、なくらないんよ。

彼女の過去のツイートは、きっと『男性』や『女性』というものと人一倍葛藤して、嫌になって、ちょっと口汚いこと言い過ぎただけの話なんじゃないの。
Twitterって、(まぁ鍵かけない以上多少考えて書けよとは思うけど)ちょっとヤケになって言い過ぎただけで、彼女が口紅を買えて嬉しかったという気持ちまで否定しなければならないような
彼女が何者であるかということに結論を出さなければならない!と他者に決定されるような
そんなシビアなツールなんすか。

たかがSNSで口悪いやつが、犯罪者予備軍だなんて、短絡的で浅はかすぎやしないか。


文章がポエミーできもい、なら、読まんでええやん。
自分の気持ちと折り合いをつける為の行いは別に、誰かのためにやってるんじゃないし。
彼女の悩みや葛藤に矛盾があって、それが何。幻の憧れの「女の子」に敵意や悪意があって、それが何。彼女は教科書でもなければ、善人でもない。
勝手に信じて、勝手に裏切られて、勝手に悪魔だと罵るその人が、いま誰かの人生を対人戦争にしようとしている。


ここまで書いたけど、いちとせしをりを擁護するつもりも、LGBT問題に深入りするつもりもなく
今回のことがそもそも火種になっていることが違和感すぎたので、ちょっと文章を書いた。
いつか売れっ子になったら、こんなこと言うやつなのかと、残念だ、と罵られるのかなわたしも。
なんの売れっ子になるテイなのかな。笑


エッセイストになりたいという夢、素敵だと思う。
美しい文章で人気になったいちとせさんのだから、もう美しい世界から抜け出せなかったんだろうか。
非道で、苛立ってて、そういう気持ちも嘘でなくていいのに、とわたしは思う。
それで誰かを殴るかどうかが問題で、彼女の葛藤に名もなきわたしたちが殴られる必要もまるでなくて、そして、もしもそれでも傷ついてしまったときは悲しいと伝えたら、きちんと謝ってくれるひとのような気がした。
やさしくて、きれいで、かわいくいたかったんだろうな。


生きてることで誰かを救えなくても、それは罪ではないよね。
優しくなりたいっていう気持ちと、ぶっ殺してやりたいって気持ちと、両方持ってて
それとうまく折り合いつけて、なるべく悲しくならない道筋で人間お互い生きていけたら。
どうしてもうまくいかないことがあるから、「ごめんね」っていう言葉を持って、生きているので。


誰も悪くはないのよ。
嫌いにならなくても、大丈夫なんだと、思うの。


#戦争 #争い #小学生 #いじめ
#SNS #いちとせしをり #LGBT
#エッセイ

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