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『新潟市西区のむかしばなし』第9話「ゆき団子」

【第9話】ゆき団子

《行動範囲》寺尾 寺尾朝日通 小針

日をおうごとに風も冷たくなり 僕たちは冬支度にとりかかる

龍からもらったサカナは干物 ウサギは干し肉にした

ウサギの毛皮は編布あんぎんに合わせて あったかい服にした

イネは僕たちがひと冬のりきるのにじゅうぶんなだけの お米になった

山には竹や笹がたくさんはえていたので いくらかわけてもらい 竹で米びつや水のみをつくり 笹でかごをつくった

笹の葉っぱは 団子をくるんだり お皿にしたり 何にでもつかえる

ふたりの姫様は 土をこねて可愛らしい土器をつくった

道をつくるときに余った草がわんさかとあるので 火だねには苦労しない

さぁて もうすぐ冬が来る

雪が

ふる

僕たちはのんびりとうちの中で過ごす

うちの外は 雪か雨

たまに くもり

雪がふって 雨がふって 雪がふって 雨がふって

雪がふって 雪がふって 雪がふぶいて うちの外に

雪がつもった

みんなで外に出て

まずは 雪をふむ

雪にもいろいろあるから まずは足でふんでみて たしかめてみるんだ

どんな雪なのだろう

さらさら しゃりしゃり べちゃべちゃ きゅっきゅ 

手でも おなじことをする

さらさら しゃりしゃり べちゃべちゃ きゅっきゅ

音もきく

雪は冷たいけど 音がとっても可愛いんだ

可愛いから 食ってみたくなって おもわず食う

そのまま食って つぎに まぁるい団子にして食う

雪の団子が これまた可愛くて 可愛いものだから いっぱいつくる

小さいの 大きいの いろんな大きさの 雪の団子

雪の団子を ふたつ重ねると ますます可愛くなるんだ

ふたつ重ねて そこに へんな顔をかく

へんな顔が可愛すぎて

みんなで笑う

笑いながら

丘のほうまで走って行きたいのだけれど

足がずぼずぼと雪にうもれてうまくいかない

走るのをあきらめて

ずぼっ ずぼっ と みんなまぬけに歩く

きゃははと笑う

雪化粧をした ながいながい丘

ながいながい丘が真っ白な雪化粧をして 僕たちを出迎えてくれるのだけど

綺麗だよ と 声をかけるよりも まず すべりたくなる

すべる道をつくる

道をつくるのは大変だ でも みんなすべりたいから夢中でつくる

雪をふみかためる

丘の

下から上へ

いっぽんのすべる道を あっという間に完成させる

ドキドキしながら すべる

このドキドキがたまらない

なんで僕たちはドキドキが楽しくてたまらないのだろう

そんなことはどーでもいい

楽しいから

すべるんだ

楽しいから すべって 楽しいから 笑って

楽しいから すべって 楽しいから 笑って

すべって 笑って すべって 笑って

楽しい を

笑って

笑いつくすんだ!

笑いつくしたあとは

いさぎよくうちへ帰る

うちに帰って あたたまる を 楽しむ

火をかこんで かじかんだゆびさきに気がついて はっとしたあとに ゆびさきがじんわりと溶けるようにあたたかくなってゆくのを 楽しむ

ウサギの干し肉を火であぶって みんなでつまむ

竹の水のみに入れた雪どけ水を こくこくと飲む

竹のにおい 雪と土のにおい うちのにおい 火のにおい

冬にしかない 冬のにおいをかぎながら ほっこりしながら こくこくと飲む

どぶろく を

くいっと呑む

からだをあたためるには これがいちばん 顔が真っ赤にほてりだす ぽーっとなる そのうちだんだんねむくなる

ねむくなったら くーくー寝る

好きなだけ 寝る

あきるまで 寝る

あきるまで寝ていいのが 冬

冬になると 僕たちは ほとんどうちの中にいるし 太陽はほとんど顔を出さなくなる

昼も夜も なんだかよくわからなくなる

不思議な気持ちになる

不思議な気持ちになった僕たちは

寝るのにもあきちゃって

いつのまにか

不思議な ことに なる

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