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Be a Dream Digger

                             鶴田知佳子

街を歩いていると不思議な英語にであう。今年、見違えるようにきれいに生まれ変わった宮下公園、MIYASHITA PARKとローマ字と英語で表記されている。1階から3階まではおしゃれなお店が並び、いちばん上の4階部分は公園のイメージを残しつつ、屋根付の運動スペースとしてボルダリングとビーチバレーの出来る場所が設置されている。渋谷には良く行くものの新しくなって4ヶ月経っても行く機会が無かったのだが近くの銀行に用事があった帰り公園の4階に上がってみつけたのがこの表示。Be a Dream Digger。ビーチバレーのイベントをやっていたときだったが、「夢を掘る人になろう」、と日本語に訳して不思議な感じがした。夢って、地中に埋まっているのを掘り出すというもの?Do you dig it? と相槌に使う言い回しがあることも承知していたが、この文脈にはあわない。

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その後、実はビーチバレーの技の一つに関係していることやアップルのポッドキャスト にもDig Your Dreamと言う番組があることを知った。生き物である言葉の審判をするのは難しい。とくにいまは流行りすたれが速い。そのリスクを負いながらも、言葉に関する自分の感性に従って、心地の悪さを感じるとこのように共有したいという思いにかられる。

日本語の造語技術


また、日本語は外国語をカタカナ語に音で取り込み進化する。前回の「日本語の外来語加工技術」で挙げた「合コン」は、合同コンパの略だが、コンパはさらに「仲間」を意味するドイツ語「Kompanie」、もしくは「会社、会合、交際、交友」を意味する英語「company」に由来し、明治時代に学生の隠語として使われ始めた。 はじめは「コンパニー」と呼ばれていたが、のちに略されるようになった。日本語の造語技術が複合的に発揮されるのは発音をカタカナ表記にしてさらに短縮、それを日本語と組み合わせたことにある。それを元の外国語に戻すことはこの逆を辿ったとしても、もとのようにはならない

街を歩いていて見かける一見外国語風だが実はそうではない看板が奇異に思える原因がここにあると気づいた。コロナ渦にあって運動不足にならないように朝晩の散歩が習慣化した私が散歩中にみかけた英語の看板としてはたとえばBig Mouthというバー、 

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Hair Terraceという美容院、

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Earth Supportという訪問介護のお店。この訪問入浴もするという店はEARTH SUPPORT アースサポートと、英語とカタカナが並んでいるのだが、英語をみれば英語で解釈したくなる私は地球を支持するって?と思ってしまう。

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だが、二つ並ぶ表記をみて気づいた。「アース」と「サポート」はカタカナ語になった段階で日本語なのだ。「アース」のように広い心で「サポート」する、守る、との意味をもたせたのではないか。別の例をだすと「ビジネスチャンス」と同じ分類になることばなのではないか。

カタカナ語が二つ組み合わさって英訳されたのをみて解釈を試みわからなかった私。ここには「発想」「音訳」「合体」をするところから生じる食い違いも相まっている。これは英語しか理解しない日本語のわからない外国人が理解できるとは思えない。あらためて日本語の造語技術の複合技に複雑な気持ちをおぼえた。

                         (2020年12月30日)

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