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「日本の英語」を考える時の留意点

                            松井ゆかり

すでに終了してしまっているが、弊会メンバー(ロッシェル・カップ、アン・クレシーニ)がClubhouseで興味深い部屋を開催するというメールを受け取り参加した。

事の発端はこのツイート、

これに対し賛否両論のコメントが数多く寄せられたため、弊会のメンバーでもある二人が議論の場をClubhouseでも設けようという事になった。

個人的にはこのツイートへの反応は単に言葉の問題だけではなく、日本に住む外国人の権利、彼らへの情報提供のあり方、人種問題・偏見、移民・外国人就労者政策、役所の縦割り行政、ワクチン接種に関連する混乱等すべてを含むものだと思っていたので、様々な立場の人の意見が聞けて興味深く、弊会の活動にも関係する部分が多かったので記載しておきたい。

TwitterとClubhouse両方のコメントを纏めると

肯定的な人の意見:


• 外国人もコミュニティーの一員である、必要な情報が容易に得られるようにすべきである、特に命に関わる災害やパンデミック等に係る情報伝達は重要
• 英語が母国語でない在日外国人の方がむしろ多いので、多言語対応の前に、やさしい日本語での案内という選択肢がある。
• 出身国が異なれば文化も違う、また障がい者等の事を考慮すると文章だけでなく、音声、映像、ピクトグラム等の利用も大切
• 日本人でも行政の言葉は判りにくい。難しい単語、長い説明が多い。日本語に堪能な外国人でもこのような文章を理解できる習熟度に達するには長い期間を要する。
• どの国にでも国粋主義者や人種差別者は一定数いるので気にしすぎない方が良い
• 行政はその制度上、柔軟に動けと言われても限界がある、全てを行政に期待するのではなく、ボランティア組織やコミュニティーでの助け合いも視野に入れ、必要な情報が必要な人に届くという最終目標を達成すると良い
• 生まれてから日本以外に住んだ事がない人は、力になりたいと思っても、外国人が何に困るのか想像できない場合もある。建設的な形で声をあげてもらえれば出来ることはしたい

否定的な人の意見:


• 外国人でも日本に(特に)居住しているのであれば日本語を読めるように勉強すべき
• 多言語対応を行っている地域でも、特定の言語を使用する人口比により対応言語が決定されるため、外国に居住する日本人が居住国の行政から日本語で案内を受け取れる例は少ない、外国に住む以上皆自分なりに正確な情報を得ようと努力するは当たり前
• 英語だけが外国語ではない
• 多言語対応と言ってもコスト、記載スペース等を考慮すると限界がある
• 自分でGoogle翻訳を使ったり、知り合いに聞けばよい
• (ワクチン接種に関する情報は)今まで前例がなく、日本人の間でも情報が混乱しているのだから仕方がない、自治体も混乱しているのだから
• ワクチンを打ってもらえる対象になっているのに感謝しないのか?嫌なら自国に帰れ!

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「日本の英語を考える」、「外国人へのコミュニケーション」を語る時の前提

このような複雑な議論は文字数制限のあるツイッターには向いていなかったなと個人的には思う。
最初のツイートは前述のリンクの通り「東京都中央区から来たワクチンの知らせは完全に日本語です。日本語読めない人ならどうするでしょうか?」である。日ごろから日本の英語の間違い等について積極的に発信し、多くのフォロワーがいる彼女を知る人は多く、白人の米国人女性の発言というイメージ・固定観念が先行し、批判的なコメントにつながったケースも多いと考える。また外国人の間でも多種多様な意見がある

彼女は、外国人は日本語を学ぶ必要はないとか、すべて英語で表記せよとは一切書いていない。むしろ本人はその逆で非常に流暢な日本語を操り、英訳など全く必要としないのであるが、訴えたかったのは、「日本語堪能な外国人でも100%理解は難しいのに、そのレベルに達しておらず日本に居住する外国人にももう少し配慮ができないか?」という点であった。

この議論を聞いて、私たちが「日本の英語を考える」とか「外国人へのコミュニケーション」を語る時、少なくとも以下のどこの話をしているのか明確にしないと話がかみ合わない。異なった前提で話し合ってもさらに混乱する。(黄色は弊会の意見)

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弊会の活動は上記の薄いブルーだけを目指していると誤解される事が多いが決してそうではない。少なくとも上記の枠組みを念頭に、最適な対応は何かを模索しているのである。

                         (2021年6月27日)               

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