直井幸太

イラストレーター。

直井幸太

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最近の記事

指示語はまだしも、名詞が分からない!!

えと君「書類」送っといてー。 「???」 書類ってなんだ?今まとめたPDFのことか?それともそのPDFの原本のpsdのことか?いや、指示書も送るのか?なんなんだ?  俺はまとめ終えたPDFを送り、psdはディスクに移して男の机の上に置いた。 しっとりとした冬に雨が降るか降らないかの瀬戸際だった。白いゴミ袋が街灯に反射した。結局PDFもpsdも送れとの指示だったことが後になってわかった。 おれの謝罪を未読無視した男は、社内LINEで陽気に言った。 「俺の机の上に置いてあ

    • 普通について。

       「えと君、世の中ってのはねぇ、意外と普通なんだよ。」  とある番組のロゴ、キービジュアルのデザインを担当して苦節三日、出来上がった作品を見て社員さんが言った言葉だ。どうやら私のデザインがクライアント側の意向と合わず、別のデザイナーの方が作ったものに決定したそうだ。その報告を受けて私は、やっぱりか…。と思ったものの、出来上がった番組のふわふわとした音楽の前でコミカルに動く「普通」のロゴや「普通」の芸能人の宣材写真を見て、どうしようもない無力感に苛まれている。  私のデザイ

      • 日記4

         祖父が死んでから1年が経った。  暑くもないのに日差しがけが強い9月の末に鳥は低く飛んでおり、1年ぶりに着る喪服が少量の汗をしかたがないと言った様子で吸い込んだ。  早朝から支度をして現地に到着、一周忌の法事が幕を開けるかと思われたが、叔父の義父らを載せた車が30分ほど遅れた。申し訳なさそうに謝る叔父に、坊主は、「大丈夫ですよ。午後は何も入っていないので。」と、穏やかに答えた。30分後、「うぃー迷った迷った…」と、反省の色なくニコニコと入ってきた叔父の義父らに、坊主は一

        • 度々起きる、デザイン思考の停止について。

           考えることが出来ない‼︎  くすみがちな九月も下旬に差し掛かろうとしているところではありますが、本日発生した異常事態、「思考停止」についてまとめたいと思います。これは自身がこれから制作の仕事をしていく上で、いや、生活をしていく上で非常に由々しい問題であります。  これを読んでおり、かつ私のことをよくご存知の方であれば、「あァ、いつものやつね…」と思われるかもしれません。そうです、いつもの。なんだけどさ。7時間続いたんだよ。これが、作業中ずっっと。割と休憩挟んだり、ちょっ

        指示語はまだしも、名詞が分からない!!

          お租躬くなんしぇ。

          「このぐらいの季節だったかな?」 「これ地元以外で話したことねぇんだけどさ、おれ小せえ頃、そこで鬼見たことあんだよね。」 友人はへらへらと笑いながら私にそう言った。 「はぁ?なんだそれ?」 と、柄にもなくそっけない返事をしたことが、いやにはっきりと脳裏をよぎった。  10年ほど前、大学2年生の夏休みだったろうか。冷房の効いていないじめりとした部屋で、友人と地元の話をしていたときのことを覚えている。 「鬼なんているわけないから、それ嘘な。」 怪異や幽霊は存在したら面白いな

          お租躬くなんしぇ。

          日記3

          少し前の「悪夢」について。 私は数ヶ月ほど前、「夢」に悩まされていた。というのも、しばしば「悪夢」を見るのだ。  以前は夢を見たとしてもありきたりなものだったり、ぼんやりとしてはっきりと覚えていなかったり...。とにかくあまり気にも留めなかったこの「夢」というものが、最近になって私の日常生活を蝕み始めているのである。  例えば「悪夢」を見た際には、満足に眠れていないのか一日中ぼんやりするし、気分も沈みやすい、更にはじわじわとした頭痛、肩こりや腰痛の悪化、目のかすみな

          日記2

          大志を抱き、 夢を掴まん。 と、するならば、 元来の考えを尊重し、 のらりくらりと現を征こう。 物も言えない世の中を、 語る今宵も明けてしまうが。  遅かった。  既に「気のいい友人」は我々を掌の上で弄んでいたのだ。彼は私の喉笛を裂くも、手足を捥いで踊らせるも自由であった。さっきまで彼が見せていた物腰の柔らかな声やいっとう素直な笑顔は、今や私の脳裏にヒヤリと冷たくへばり付いて取れない。  目を閉じて想起する。  私の邪推が態度に現れ、彼の気を損ねないだろうか。その場の空気に

          日記1

          喪服  祖父の通夜で急遽喪服が必要になった。 なんでも17:00頃までには用意がないとマズいらしい。  と、言っても通夜なんて小さい頃に一度あったぐらいで、喪服の用意などない。悲しむ間も無くおれは電車で二駅ほどの地方都市にある紳士服店へと向かった。祖父の逝去からおよそ2時間ほどのことであった。  紳士服店には様々な礼服が並んでおり、それらの手入れをしている小綺麗な店員は、こちらの沈みきった気分など知る由もなくおれに爽やかに尋ねた。  「いらっしゃいませ!本日はどのようなお洋