日記2

大志を抱き、
夢を掴まん。
と、するならば、
元来の考えを尊重し、
のらりくらりと現を征こう。
物も言えない世の中を、
語る今宵も明けてしまうが。

 遅かった。
 既に「気のいい友人」は我々を掌の上で弄んでいたのだ。彼は私の喉笛を裂くも、手足を捥いで踊らせるも自由であった。さっきまで彼が見せていた物腰の柔らかな声やいっとう素直な笑顔は、今や私の脳裏にヒヤリと冷たくへばり付いて取れない。
 目を閉じて想起する。
 私の邪推が態度に現れ、彼の気を損ねないだろうか。その場の空気に流されて、ドロドロと彼を揶揄してしまわないだろうか。これから気をつけることはできるだろう。しかしこれまでは…、私は今まで唯の一度も彼の気分を害さなかったと言えるだろうか。
 いや、断定などできない。人の腹の中など誰も分かりはしないのだから。いや、とするならばだ、私の思案も全て彼に伝わるとは限らないのではないか…。もし万が一私のこの杞憂が少しでも彼に伝播してしまったとして、彼もまた、今の私のような結論に達するのではないか。屈強な獅子が1匹の矮小な昆虫に気など遣わないように、聡明であり強かな彼だからこそ、今の私のこの漠然とした不安感、恐怖などに逐一突っかかることはしないだろう。きっとそうだ。私の思考など彼にとっては、檻の中をぐるぐると周回し満足している畜生の常同行動に過ぎない。

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