制度としての選択的夫婦別姓 第3回 どの案によるか
夫婦別姓を検討していく上で、その途中段階『要綱試案』の中で3つの案が提示されたことを前回お伝えした。
A案(夫婦同氏原則型)、B案(夫婦別氏原則型)、C案(呼称上の氏案に近いもの)、今回はこれについて、見ていく。
回りくどい表現もあるが、キーワードは原則と義務。
現行制度では、夫婦は婚姻に際して夫婦の氏の定め(婚姻前のどちらかの氏を選択)をすることが原則となっている。
現行制度と比較して、どんなことを義務とする、もしくはしないのかに注目しながら見てもらいたい。
なお、わかりやすいように佐藤さんと田中さんの氏を例に説明も加える(★参照)。
さて、どの案が皆さんの考えていた夫婦別姓のイメージに近いだろうか?
そして、どれをベースに平成8年の法律案要綱は作られたのだろうか?
自己の呼称として戸籍上に定める氏とは別に婚姻前の氏を使うC案は、少し分かりづらいように感じる。例えば、戸籍上の氏は佐藤だが、呼称は田中。考えただけでもややこしい。
例えば、様々な手続で戸籍上の氏を記載しなければならない場合と呼称の記載をする場合が混在するなど、混乱や問題が起こることも想像できる。
結果として、平成8年(1996年)の「民法の一部を改正する法律案要綱」では、
とした。
夫婦の氏については、同氏原則(A案)/別氏原則(B案)のいずれも採らず、同氏/別氏を対等なものとしていずれかを選択する案を採った。佐藤/田中どちらかを結婚後の同一の氏とするも良し、結婚前の佐藤&田中の氏をそのまま別々に称するも良し。
「同氏/別氏をあなたたち夫婦ごとの考えに沿って自由に選択できます」、としたのである。
別氏と一言にいっても、その裏で法制度としてどの立場をとるかというのには様々な検討がなされている。
その中で、この平成8年の法律案要綱の氏の選択においては、特に原則は設けずに、自由に話し合いができる状態になっている。
各々の夫婦の事情に合わせてそれぞれが決めていける制度だと感じた。
次回は、婚姻後の夫婦の氏の転換を認めるべきかについて見ていきます。