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制度としての選択的夫婦別姓 第2回 提言までの道のり

こんにちは、コンテンツビジネス推進部のAです。
“選択的夫婦別姓”、このキーワードを最近新聞やニュースで目にすることが多いけれど、そもそもどんな制度なのか?
戸籍のことを幅広く扱っている日本加除出版では、本制度を過去に何度か取り上げています。
このことに向き合うためには、一人ひとりが制度としてどのようなものなのかをまず知ることが必要だと思いました。
知っているからこそ、発想も広がるし、自分の考えもまとまる。
いま改めてこの内容の一部をお伝えすることで、知ることの一助となれればこんなに嬉しいことはない。
そんな思いで、時に脱線もしながら書いています。
他にも本テーマで記事を書いています。第一回はこちらからお読みいただけます。

どんなものにも歴史があって、過去に触れてから今あるものにあたる方が理解しやすかったりする。

いきなりだが、少し脱線する。
ぼくには心のクラブがロンドン北部にある。アーセナル。日本にもいたアーセン・ヴェンゲルがかつて指揮していたフットボールクラブである。
本格的に応援し始めたのは2007年。セスク、ファン・ペルシー、サーニャ、フラミニ・・・多くの20歳前後の若手が台頭するアーセナルは
躍動していた(ディアビ、ロシツキー、ウォルコット、挙げればきりがない。その後のラムジー、ウィルシャーまでいい時代だったな)。
テンポのよいダイレクトプレーを多用した華麗なパス回し。綺麗な崩しからの美しいゴール。ぼくは魅了された。
好きになれば、過去まで知りたい。そんな気持ちでアーセナルについて調べていくと、なぜ若手ばかり登用していたかがわかってきた。
アーセナルはエミレーツスタジアムを建設するために借金を抱えており、大物を獲得/確保できなかったのである。
その逆境をチャンスに変えたヴェンゲルを尊敬してやまないが、それでも結果はほぼ毎年4位(その後、4位からも転落。チャンピオンズリーグ圏内をも逃すことになる)。
あの頃の選手たちも賃金の高いクラブや優勝できるクラブへと去っていった。過去を知ると見えてくるものがある。

さて、夫婦別姓の話に戻る。
選択的夫婦別氏制(いわゆる夫婦別姓制)は平成8年(1996年)に「民法の一部を改正する法律案要綱」にて提言がなされているが、この提言までの道のりはさらに5年前に遡る。
戸籍時報特別増刊号通巻654号(2010年4月刊)を参考に、以下に、変遷を見ていく。少し長くなるがご辛抱いただきたい。

平成3年(1991年)1月、法制審議会身分法小委員会で審議が開始
平成4年(1992年)12月、それまでの審議の結果明らかとなった問題点を整理した「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」を
参事官室名で公開

 婚姻及び離婚の制度が、国民の社会生活全体に重大な影響をもたらすものであることを鑑み、身分法小委員会において改正の方向を固める前に、現行制度の問題点について広く関係各界の意見を聴取して,その審議の参考に資するのが適当であるとの判断のため。
 この中間報告に対して、裁判所、弁護士会、法曹団体、大学及び研究者、婦人団体、消費者団体、労働団体など143に上る団体及び個人から幅広い意見が寄せられる。
平成6年(1994年)7月、身分法小委員会は、これらの意見を参考にしつつさらに審議を重ね、「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」をとりまとめ、解説と併せて公表
 この要綱試案は,論点整理を行った中間報告と異なり、具体的な改正案を提示して意見を求めた。
 夫婦の氏については,一つの改正案にまとめることができず,3つの案を提示。
平成7年(1995年)9月、身分法小委員会は最終案である「婚姻制度等の見直し審議に関する中間報告」を公表し、さらに各界の意見を聴く。
平成8年(1996年)1月16日、法制審議会民法部会は「民法の一部を改正する法律案要綱案」を決定
 その内容は,細部を除いて,基本的には上記の中間報告と同一内容
同年2月26日、法制審議会総会において了承され、「民法の一部を改正する法律案要綱」として法務大臣に答申
 国民各層に様々な意見があること等から,いずれも国会に提出するには至らず。平成22年(2010年)も同様。

これだけの検討がなされていることに、まず改めて驚く。広く意見を募り、熟慮されていることがこの過程からも見て取れる。
平成6年7月の要綱試案に気になる記述がある。“一つの改正案にまとめることができず,3つの案を提示。”
ここにこそ、選択的夫婦別氏制(いわゆる選択的夫婦別姓)を理解するヒントがあるように思う。
もちろん、書籍にもこの3つの案のことが書かれている。
A案(夫婦同氏原則型)、B案(夫婦別氏原則型)、C案(呼称上の氏案に近いもの)、次回はこの3案について詳しく見ていきます。

興味がある方は、2010年4月発刊の本書もご購読ください。今回は主にP.20~26を参照しています。

余談

アーセナルのここ数年はとても苦しい。ヴェンゲル監督の退任、後任人事の失敗、主力流出など、負のスパイラルに陥っている。
それでもサポーターとしては応援し続けるしかなく、毎週末一喜一憂する日々が続いていた。
そんな中、夏に富安健洋選手が加入した。本当に補強として適切なのか懐疑的なところもあったが、戦術理解度・空中戦・スピード、試合を見てたちまち虜になった。今ではすっかり彼のファンだ。
彼以外にも多くの若手が台頭してきており、チームも良いハーモニーを奏でつつある。
素晴らしいシーズンになることを期待してやまない。トミー!COYG!!

アーセナルの今についてはこちらの動画で丁寧に詳しく熱く解説がなされています。興味を持った方、あわせて是非ご覧ください。