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制度としての選択的夫婦別姓 第1回 まえがき

こんにちは、コンテンツビジネス推進部のAです。
“選択的夫婦別姓”、このキーワードを最近新聞やニュースで目にすることが多いけれど、そもそもどんな制度なのか?
戸籍のことを幅広く扱っている日本加除出版では、本制度を過去に何度か取り上げています。
このことに向き合うためには、一人ひとりが制度としてどのようなものなのかをまず知ることが必要だと思いました。
知っているからこそ、発想も広がるし、自分の考えもまとまる。
いま改めてこの内容の一部をお伝えすることで、知ることの一助となれればこんなに嬉しいことはない。
そんな思いで、時に脱線もしながら書いています。
今後、複数回に渡って本テーマで記事を書く予定です。

ぼくは、2021年1月に縁あって日本加除出版に入社した。
右も左もわからない中で、日本加除出版は戸籍に関係している会社だという認識はあったので、巷で話題になっている夫婦別姓に関わることは何かできないかと考え、先輩社員に聞いてみた。
ただ、返ってきたのは「制度としての検討は過去になされているよ。」という意外な答えだった。
「えっ!?」
賛成か反対かが世間では議論されている中で、制度を決めるのはてっきりこれからだと思っていた。
そして、同時に思った。これは、ぼくだけでなく、世間でもあまり知られていないことなのではないか。
「夫婦別姓」と検索すると、法務省のホームページに行き当たる。これを見ると、以下の検討経過が書かれている。

1 法務省においては,平成3年から法制審議会民法部会(身分法小委員会)において,婚姻制度等の見直し審議を行い,平成8年2月に,法制審議会が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申しました。同要綱においては,選択的夫婦別氏制度の導入が提言されています。この答申を受け,法務省においては,平成8年及び平成22年にそれぞれ改正法案を準備しましたが,国民各層に様々な意見があること等から,いずれも国会に提出するには至りませんでした(平成22年に準備した改正法案の概要等については,平成22年2月24日開催第16回法務省政策会議配布資料[PDF]をご参照ください。)
2 夫婦の氏に関する問題については,これまでも政府が策定した男女共同参画基本計画に盛り込まれてきましたが,令和2年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画(新たなウィンドウが開き,内閣府男女共同参画局のホームページへリンクします。)においても,夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し,国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら,司法の判断も踏まえ,更なる検討を進めることとされています。

選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について 検討経過等より抜粋

そういえば、人気ドラマのお正月スペシャルでも、新垣結衣さん演じる主人公の台詞に選択的夫婦別姓が認められるのを待って結婚しようとしていたという主旨のものがあったっけ。
それにしても、「平成8年(1996年)」・・・なんと四半世紀前に法制審議会で答申され、これを受けて法務省で改正法案の準備(国会提出には至らず)がなされていたとは。
多くの人が知らないところで、検討とはなされているものだ。そういった検討の積み重ねの上で、ぼくたちは普通に暮らしている。
ただ、知ろうとしないと決まる直前まで知れないことが多いのも、また事実・・・。

ドラマのふたりは現行制度で結婚することを決心するが、この結婚を了承してくれると思っていなかったという主旨の発言と共に主人公のパートナーがほっと胸をなでおろすシーンは印象に残っている。
数年前に研究職カップルの友達が、結婚してどちらかの氏に統一された時に片方の研究成果が紐づかなくなってしまうことを本気で悩んでいたことも思い出した。
人はそれぞれ異なる問題を抱えており、各々に思いがけないことがハードルになりうる。
ぼく自身、何事も選べる範囲は多い方がいいと感じている。選択が自由にできる中で、当事者が自分たちに合った最適なものを選ぶことができればいい。
そのためにも、まずは今話題になっている『選択的夫婦別氏制度』について、過去になされたという検討内容がどのようなものであったのか、今一度振り返る必要があると思った。

日本加除出版でも、平成22年(2010年)4月のタイミングで制度面についてまとめた書籍を発刊している。
『戸籍時報特別増刊号(通巻654号)選択的夫婦別氏制の論点について』

次回からはこの中身に触れ、盛んに議論されている“夫婦別姓”の制度についてお伝えしていきます。

興味がある方は、2010年4月発刊の本書もご購読ください。

余談

ちなみに、制度名が『選択的夫婦別氏(べつうじ)制度』ということも、このことを調べている中で初めて知った。
(いわゆる選択的夫婦別姓制度という注釈もついている)
他の書籍でも別氏という用語がメインで使われている。見慣れない用語かもしれませんが、悪しからず。

2021年11月16日に本記事の一部を修正しております。