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青春18きっぷでめぐる日本遺産 中京編 JRだけで行ける日本遺産まとめてみました

執筆:日本遺産普及協会編集部 平嶋

皆さん、夏休みはいかがお過ごしでしょうか。どこかに出かけたいけれど、まだ行き先が決まっていない方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、お手頃な価格で日本全国を旅することができる夏の風物詩「青春18きっぷ」を利用して訪れることができる日本遺産をいくつか紹介したいと思います。このきっぷを活用して、ぜひ歴史と文化に触れる旅を楽しんでみてください。

中京編として、名古屋駅を朝8時に出発し、JR線の普通列車のみでその日のうちに往復できる日本遺産を3件リストアップしました。これらの目的地では、日本の歴史や文化に触れながら日帰り旅行を楽しむことができます。さらに、首都圏編と関西編(8月11日公開予定)もございますので、そちらも合わせてお楽しみにお待ちください。


青春18きっぷとは?

青春18きっぷは、JR全線の普通・快速列車が乗り放題になる特別乗車券です。春・夏・冬のシーズンごとに販売され、5回分の乗車が可能です。5日間一人で使うことも、友人や家族と分け合って使用することもできます。価格は12,050円で、1回あたり2,410円と非常にお得です。このきっぷを使えば、日本全国をリーズナブルに旅行でき、学生や旅行好きに特に人気があります。

青春18きっぷの購入方法や使用方法・ルール等については、日本遺産普及協会のインターンメンバーが執筆した別記事をご参照ください。

プラン① 静岡へ”駿州の旅”をしよう

駿州の旅とは?

青春18きっぷを利用すると、日本遺産「日本初『旅ブーム』を起こした弥次さん喜多さん、駿州の旅~滑稽本と浮世絵が描く東海道旅のガイドブック(道中記)~」にアクセスすることができます。

日本初の「旅の大ブーム」の火付け役は、十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』と、歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』でした。滑稽さ、怖いもの見たさ、美味しい名物に引き寄せられ、人々は自由な移動が制限される江戸時代でも物見遊山の旅に出かけました。

かつて多くの人々を旅路へと誘った弥次さん喜多さんの「旅の楽しさ」は、今も駿州で体感できます。富士山を仰ぎ見ながら江戸時代のガイドブック(道中記)を片手に、「東海道五十三次」の真ん中、駿州を巡る旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

東海道五十三次より

浮世絵といまの景色を比べてみよう

浮世絵は江戸時代を中心に流行した日本絵画で、美人画、役者絵、名所絵などが描かれました。葛飾北斎の「冨嶽三十六景」に影響を受け、歌川広重は「東海道五十三次」を描き、大判サイズで木版が作られました。

これは「ガイドブックの原典」とも呼ばれ、パリの印象派やアール・ヌーヴォーの芸術家たちにも影響を与えました。

由比宿の本陣跡にある東海道由比宿交流館では、広重の浮世絵や浮世絵づくりの体験ができます。ここには広重が描いた三保松原の「冨士三十六景」も所蔵されており、現在の景色と見比べて楽しむのがオススメです。

三保の松原

駿州の街へのアクセス方法

【モデルプラン】
08:05 名古屋駅発(JR東海道本線)
※豊橋駅で区間快速浜松行に乗り換え
※浜松駅で普通熱海行に乗り換え
11:04 静岡駅着
※平日ダイヤ想定

名古屋から静岡へは普通列車で約3時間かかります。日帰りで訪れる場合、半日で効率よく回れるように計画を立てておくと良いかもしれません。


プラン② 木のまち飛騨高山へ

どんな日本遺産?

青春18きっぷを利用すると、日本遺産「飛騨匠の技・こころ-木とともに、今に引き継ぐ1300年-」に片道4時間ほどで訪れることができます。

この日本遺産は、「飛騨工制度」という、古代に木工技術者を都へ送ることで税に充てていた全国唯一の制度に基づくものです。飛騨の豊かな自然に育まれた「木を生かす」技術や感性、実直な気質が古代から現代まで受け継がれ、高山の文化の基礎となっています。

市内には中世の社寺建築群や近世・近代の大工一門の作品群、伝統工芸などがあり、現在も様々な場所で飛騨匠の技と心に触れることができます。木と共に生きてきた1300年の高山の歴史を体感してみてはいかがでしょうか。

飛騨工制度と高山

飛騨工制度は、古代日本で飛騨国から年間約100人の木工技術者(飛騨工)を都に派遣する特別な制度です。養老2年(718年)に制定された養老令賦役令に基づき、税の代わりに技術者を提供することが定められました。飛騨では奈良時代以前から14箇寺以上の古代寺院が存在し、高い建築技術があったことがわかります。この制度は、都での木工技術者の需要に応じて、その優れた技術を活用するために設けられました。

飛騨工は古代から名工として文学作品にも描かれ、例えば『万葉集』や『源氏物語』、『今昔物語集』などにその技術力が称賛されています。飛騨工が関わった建造物には、甲賀宮、平城宮、平安宮などの宮殿や、西大寺、石山寺、西隆寺などの寺院が含まれています。高山にある飛騨国分尼寺の金堂は、都で得た建築知識を活用した例であり、全国の国分寺・尼寺の中で唯一前面一間を吹き放しにしています。

飛騨国分寺

伝統的な町並みも魅力!

高山の上町と下町は、古い町並みが残る城下町の中心で、上町には駄菓子屋や伝統工芸店、名物の「みだらしだんご」の店が並び、観光客で賑わっています。ぜひ食も満喫しましょう!

高山のみだらしだんご

ちなみに、高山では「みたらし」ではなく「みだらし」と濁るのが特徴です。味も独特で、全国的に見られる甘いタレのだんごとは異なり、飛騨の「みだらし」は甘くないしょうゆダレをつけて香ばしく焼き上げるスタイルとなっています。

一方、下町は市民生活関連の店舗が残る貴重なエリアで、菓子屋や餅屋、骨董屋など、昔ながらの町並みを楽しめます。

高山の町並み

飛騨高山へのアクセス方法

【モデルプラン】
―往路―
08:45 名古屋駅発(JR東海道本線)
※岐阜駅でJR高山本線・美濃太田行に乗り換え
※美濃太田駅でJR高山本線・高山行に乗り換え
12:34 高山駅着

―復路―
18:54 高山駅発(JR高山本線・美濃太田行)
※美濃太田駅でJR高山本線・岐阜行に乗り換え
※岐阜駅でJR東海道本線・豊橋行に乗り換え
22:26 名古屋駅着
※平日ダイヤ想定

高山本線の美濃太田以北は列車本数が少ないので、時間に十分注意しましょう。また、青春18きっぷでは特急「ひだ」を利用できないため、別途乗車券と特急券が必要です。


プラン③ 鉄道のまち敦賀へ

敦賀と鉄道の関係とは?

青春18きっぷを利用すると、日本遺産「海を越えた鉄道~世界へつながる 鉄路のキセキ~」のある敦賀を訪れることができます。

この日本遺産は、約100年前に運行されていた欧亜国際連絡列車に由来します。なんと当時、一枚の切符で東京からベルリンまで旅行することができました。これは、シベリア鉄道の発着地であるウラジオストクと敦賀を結ぶ鉄道連絡船によって、鉄道が海を越えて欧州と繋がっていたからです。

そして、琵琶湖から長浜を経由して敦賀に至るルートは、歴史的に大きな影響を与えました。例えば、歌人与謝野晶子がパリへ旅立ち、探検家アムンゼンが日本を発つ際に利用されたほか、日本初参加のストックホルムオリンピックでは金栗四三ら選手団が本ルートを使いました。第二次世界大戦中においても、杉原千畝が発給した「命のビザ」を持つユダヤ人難民が敦賀に上陸し、地元の人々は銭湯を無料開放し、果物を無償提供するなどして温かく迎えました。

国際交流の架け橋となった敦賀を、ぜひこの夏訪れてみてください。

海のまち・敦賀

鉄道資料館で敦賀の歴史を学ぼう

「欧亜国際連絡列車」の発着駅として重要な役割を果たした敦賀港駅舎を再現した敦賀鉄道資料館は、1999年に「つるがきらめきみなと博21」の開催に合わせて開設されました。ここでは、敦賀の鉄道の歴史や列車模型などが展示されています。

敦賀鉄道資料館

旧北陸本線の跡地を巡ろう

明治29年(1892)に開業した旧北陸線の敦賀-福井間では、木ノ芽峠を越える敦賀-今庄間に13基のトンネルが掘られ、そのうち11基が現存しています。これらのトンネルは現在、生活道路として利用され、当時の鉄道旅の雰囲気を感じながら通行することができます。

敦賀市内にある旧北陸線樫曲トンネル

敦賀へのアクセス方法

【モデルプラン】
―往路―
08:00 名古屋駅発(JR東海道本線)
※大垣駅でJR東海道本線・米原行に乗り換え
※米原駅でJR北陸本線・敦賀行に乗り換え
10:17 敦賀駅着

―復路―
17:49 敦賀駅発(JR北陸本線・播州赤穂行)
※米原駅でJR東海道本線・豊橋行に乗り換え
20:11 名古屋駅着
※平日ダイヤ想定

この路線は列車の本数が多いため、計画を立てやすいかもしれません。ただし、青春18きっぷでは特急「しらさぎ」を利用できないため、別途乗車券と特急券が必要です。


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