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留学生を日本社会へー日本語教師が社会に挑戦する熱い思い

東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
複数の大学で、日本語教育、キャリア支援、日本人のアカデミックライティングなども担当しています。

なぜ起業など考えたのか。noteからの提案を見て、考えてみました。
「そんなキャラじゃない」のに、なぜ今、なぜ起業?
同業の方のために、あるいは、協働の可能性も思い、記してみたいと思います。

きっかけはコロナでした。
2020年から3年間、コロナの間、勤める大学は、すべてオンラインでした。この間、世間で言われていた「課題地獄」は、実は教員にも地獄だったのです。教材を作り直し、LMSにアップ、課題をアップ、LMSに提出された課題を回収して、採点・添削、書き込んだフィードバックをアップ…。
あ、あのクラス、次の教材アップしたかな?フィードバックが間に合わないと試験ができない、など、従来の仕事量の3〜5倍。学生たちが苦しんでいるのもわかっていましたが、毎回課題を提出してもらわないことには確認が取れない、フルオンデマンドクラスに至っては、その学生がクラスに存在するのかどうかすら定かではないという具合でした。
ベッドの中でも、夢うつつで、教材、課題添削のことを考えていて、不眠になりました。これが鬱の入口か、と感じました。

けれども、ゴミ捨てとスーパーへ行く以外は、家で過ごす時間でした。
迫り来る仕事の合間にインスタを眺め、インスタライブを見ていました。食べることを愛する私は、海外在住の日本人が料理やお菓子を作るのを眺め、一緒に作り、さらには、有料のオンラインレッスンにも参加しました。タブレット1台で世界中に美味しいもの情報を届ける彼女たちは魅力的で、それはそれは楽しかったのです。
おや?これ、私にもできるんじゃない?日本食がブームになるという意外な展開も目の当たりにしたし。私のプロパーは日本語教育だから、世界中にいる日本語を学ぶ人に、日本の家庭で普通に食べるものを作って見せて、語彙や表現をつけて発信したら楽しいのでは?
これがそもそもの発端です。

結局のところ、レシピできっちりとした分量を出すのも面倒、自宅キッチンがお寒いという理由で断念。ならば、現に大学の授業には、10カ国ほどの学生が自分の国からオンラインに入っているのだし、大学ではカバーしきれないような日本語クラスをやっちゃう?と思い立つのに時間はかかりませんでした。気がつけば、オンラインで、世界中の人を対象に授業ができる環境が整っていたのです。疫病がイノベーションを促すというのは真理だなあと実感。

大昔、学部生の頃に、専門を生かした仕事がしたいと志した日本語教育でした。私は自分が日本人の枠から相当はみ出ている自覚があります。育った家庭の教育、部活をしてこなかった、人が自分をどう見ているか気にしない…組織の中で働く自信がありませんでした。個性的とは、日本ではネガティブな評価です。日本社会がもっと多様であれば。留学生は、若者は、国の将来にとって人財、宝なのです。留学生の就職活動を支援するうちに、優秀な留学生を日本社会に送り出すことが、私の悲願となりました。

現実は、優秀な人材が、必ずしも日本語を駆使できるとはいえません。日本は、まだまだ日本語で働く社会です。けれども、留学生の大多数は、十分に話せないのです。問われたことに答えることはできますが、その程度ではお話にならない。十分なコミュニケーションによって人間関係を構築できること、社会について、自分について語れる必要があります。ところが、ここで最大の課題は、留学生自身に、話せないという自覚がないことことです。

話せない原因は、入試制度、日本語検定試験、大学が留学生の就職に熱心ではない、留学生の意識の問題など、もうそこここにあります。これらを解決するなど、とうてい無理。それでも、微々たる抵抗を試みてみようか。今後の日本のために。大袈裟に思えるでしょうが、年を取ってくると、そんな気持ちになるのですよ。

そんなわけで、課題解決に向けて起業を目指すことにしました。

私も、自分が大学に入学して以来、大学から出たことがないので、世の中の仕組みに疎く、関心もなかったため、持続可能な、つまりお金が回る仕組みが作れない。途方に暮れるような問題に取り組む必要に迫られています。授業にベストを尽くすだけだった日本語教師の人生は、意外な方向へ転がり始めたのでした。
でもまあ、ちょっと頑張ってみましょうかね。




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