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すだれ(にほんごどうぞ!#5)

皆さんの部屋にはカーテンがありますか。そのカーテンの素材は何ですか。
一般的には布でしょう。また、日本語で「ブラインド」と呼んでいるタイプのカーテンなら、細くて薄い金属や木の板をつないだものもありますが、この「ブラインド」タイプの伝統的なものが日本の「すだれ」です。金属や木の板ではなく、元々は竹を細く切ったものをつないで作られていたそうです。が、それより細くて軽い「葦(あし)」という植物も使われているそうです。

日本に住んでいた時、夏になると私はこの「すだれ」を窓の外側にかけて使っていました。私の実家では玄関の前に「すだれ」をかけて夏の強い直射日光を防いでいました。朝や夕方に少し気温が下がり、この「すだれ」を通して外から風が入ってくるとほんのすこし涼しく感じたものでした。

よしず

「すだれ」よりもう少し大きくて、直接、家の外に置いて、屋根にたてかけて使うものは「よしず」と呼ばれます。「すだれ」も「よしず」も結構大きく長いものなのでホームセンターで買っても持って帰るのが難しいです。そのため、夏が近づくと、「すだれ」や「よしず」の専門販売のトラックが「すーだーれー、よーしーずー」と独特の長い発音で呼びかけて、お知らせをしながら近所まで売りに来ていました。夏が近づいて来たなと感じさせる日常風景の一つでした。

この「よしず」や「すだれ」のそばに「朝顔(あさがお)」や「苦瓜(にがうり)」の植木鉢を置いて、暑さに負けずどんどん成長するそれらの植物を眺めているといかにも日本の夏という光景を楽しめます。

また「すだれ」を見ているみなさんは巻き寿司を作るときに使う「まきす」も連想するかもしれません。確かに、あの「まきす」は「すだれ」を10分の一ぐらいに小さくしたものと言えそうです。「巻きす」は「巻いて」寿司を作り、「すだれ」は「巻いて」長さを調整するものです。

秋が近づくと、「すだれ」も「よしず」もその役目を終えるので、クルクルと巻いて片づけます。買ったばかりの時には薄いベージュ色だったのが、太陽の光に晒(さら)されてすっかり茶色に変わり、少し欠けたり折れたりしているところもあります。心の中で「おつかれさまでした。また次の夏に」と呟いて玄関の横の物置き(ものおき)に入れるのですが、やはり自然の素材で作られているので、使える期間は長くても2-3年といったところでした。他人の目に触れやすいものでもあるので、ぼろぼろの「すだれ」を使うわけにはいかず、2-3年に一度は買い替える「夏の消耗品」と言えるものだと思います。

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