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短編小説

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#ショートショート

バレンタインその後

突然だが、私は自分の夫をつけている。

それは決して浮気を疑っているからではない。

これは復讐であり、奇襲である。

なぜ復讐であり、奇襲なのか?

それは私が海外出張の話を受けた時に彼は私を応援してくれ、是非行くよう言ってくれた。

それが……それが……

今回の発端である!

私は引き留めて欲しかったのだ。

「君と離れるなんて出来ない。」とか、「君がいないと生きていけない。」とか、「どうし

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短編小説 ヒーローと怪人

控え室

ガチャ

「おはようございま~す」

「おう、お早う」

「いやぁ、昨日飲みすぎちゃって朝起きんのきつかったっす。」

「あんまり飲みすぎんなよ。ヒーローなんだからよ。」

「そうなんすけど、久しぶりの休みだとやっぱ飲んじゃいますって。ヒーローも息抜き、怪人も息抜きってね。山田さんは?」

「ん、あぁ、え~と。人に会ったりしてたな。」

「どしたんすか?歯切れ悪いっすね」

「ん、んなこ

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バレンタイン

蹴りたい背中があった。

こっち向けって。

私を見てって。

そう言うと絶対「見てるじゃん」って言うと思う。

そうじゃないって。

そういう見るではないでしょ。

仲良いとは違うベクトルを理解しろよ。

まぁ無理か…

ならば仕方ない

やってやる

今日でなくては出来ないこと

笑われてもいい、伝説になってやる!

隣のクラスに入る

見つけた

無防備な背中

余裕だ

一気に走る

踏み

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短編小説 「結末」

この人が犯人だなんて。
この人、つまり山田サトさんが人を殺していたなんて分からなかった。
何度も会っていたのに。

高齢の女性である。
孫の敵とはいえ、二人の人間を路上で殺すなんて。
そして目の前に居る人、サトさんに話しかける。

「桜子さんはここにいますね」
玄関でサトさんはセーターの袖を巻りながら、笑顔で答える。
「ばれちゃったのね」
「もうやめにしましょう」
心から訴えた。
「それは出来ない

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