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【読書レビュー①⑥】尾八原ジュージ「巣」

こんばんは。PisMaです。

今日はまた続きから書いていきますよ。

過去を話すことにした綾子の後に続き、キッチンへ向かう美苗。ダイニングテーブルに向かい合って座り、綾子は「大家族だったのよ」と語り出します。

綾子の実家は田舎からの旧家。
家の中に誰か居るのが当たり前の環境で育ちました。既に家は無くなっていて親戚もバラバラになっています。女性の多い家系で女性が家業を継ぐ慣習があり、お婿さんを入れるのですが…三輪坂は「人形つくりの家だから嫌だ」と、疎まれていました。

彼女の故郷では、人が亡くなると棺の中の副葬品として人形を入れました。亡くなった死人にお供をつけ、生者を誰も連れて行かれないようにするという迷信めいた風習が続いていたようです。
特に母は人形作りの名人で、死人が出たらそこから作り始めるという完全受注制。全て死人と一緒に燃やしてしまうので、現物は残りません。

ある子供が亡くなった際、母が丹精込めて作った人形を届けようという時に母が急死。
では誰が人形を届けるんだとなったときに姉が担当したのですが…その際、姉は急いで作った自分の人形と、母の人形をすり替えてしまったのです。
母の素晴らしい人形は、形見として取っておかないとあまりに惜しいという理由でした。全員に非難されたものの、黙っていようということで話がまとまったのですが…もう時既に遅し。
死人から副葬品を奪った祟りなのか、亡くなった子供の四十九日に家が不審火で焼けてしまいます。家にいた人は誰も助からず、たまたま入院で家の外にいた綾子だけ助かりました。

結婚もまともに出来ない家だったため、新しい土地で新しい家族を作ることが綾子の夢になりました。広い家で賑やかに、みんなのご飯を作って、たくさんの洗濯物を洗う。そういった昔楽しかった日常を取り戻したいと考えている様でした。

そんな話を聞いているうち、ダイニングのすりガラスに子供の頭が見えます。

「わたしのお腹で子供が育たないってわかったときはショックだったな。
子どもの世話もしたかったのになって。子供っていいよねぇ、本当にかわいくて面白いよね。
だからこの家はいいなって思ったの。しいちゃんがいるからね」

美苗が焦って子供のことを問いただすと、綾子はさも当然といった様子で「この家には子供がいるじゃない」と言い放ち、キッチンを出ていきます。
出て行った扉の向こうに、子供はいませんでした。

本日はここまで。
綾子はそもそもこの家に「この世のものではない子供」がいることを分かりながら家を買った可能性が出てきましたね。どうして綾子がここまで死と生にこだわらないのかちょっと気になってくるところですが、間違いなく美苗とは全く価値観が合わないようで今後のすれ違いにドキドキします。
しいちゃんとはどんな子供なのか。美苗が遭遇するときが来て欲しいような、来ないでほしいような。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
ひとのお供を盗っちゃだめだよ。

おやすみなさい。

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