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【読書レビュー⑧幕間】尾八原ジュージ「巣」

こんにちは。PisMaです。
今日も「巣」の続きから…と行きたいのですが、描写が抜けていたので幕間を補足してから続きに参ります。前作はこちらから。


「井戸の家」からところ変わって
「サンパルト境町1004号室」。

黒木省吾(くろきしょうご)は、仕事の一巻としてこの1004号室に通っています。雇い主である志朗貞明(しろうさだあき)の自宅兼事務所がここで、知人に紹介され黒木はボディガードと雑用係を担っています。

志朗の仕事は、「よみご」と呼ばれる志朗の生まれ育った土地特有の霊能者。

「よみご」は皆盲目で、凶事ばかり取り扱うが故に厄介な客を追い払うときのためにガタイの良い黒木はボディガードとして採用されたのでした。

その日も出勤すると志朗に「ちょっと雑用を頼んでも良いか」と声をかけられます。どんな内容か、と聞く前に、ダンボールの束があることに気づきます。

「引っ越すから、ここ」

突然の引越しに狼狽える黒木がどこに、と聞くと
「真下。904号室」との回答。

「よみご」の志朗さんとボディガードの黒木さん。不可解な引越しの意図はなんでしょうか。


904号室に降りてきたものの、内装も間取りも一緒で家具の配置も変わらない。
新居らしからぬ新居に黒木は不思議に思いつつ、部屋の中を歩き回る志朗を見ていました。
「ちゃんと元の通りに置いてもらってるね」と言いながら舌打ちをして歩く志朗に「なんすか?それ。おまじないすか?」と声をかけたのはサンパルト境町の管理人・二階堂草介(にかいどうそうすけ)。
細身のスーツにアシンメトリーの髪型が似合う若い男で、904号室の入居手続きで部屋までやってきていました。
志郎は「全然目が見えないから、こうやってやると音の反響でどこに物があるか分かるの」と教えてくれます。「コウモリがやるやつじゃないっすか!」と声を上げる二階堂。

「おまじない的なのはこれからやるから」

ひととおりエコーロケーションを終えると、志郎は巻物を取り出します。

豪華な金糸に彩られた外装の巻物を広げ、何も書いていない白紙の上を指で読み取るような仕草を見せます。
この動作から彼らは「よみご」と呼ばれるのですが、黒木には一体なにを読んでなにを見ているのか見当もつきません。

少しすると志朗は手を止め、くるくると巻物を戻します。深呼吸をしたのち「一階下るとちょっと違うねぇ」と感想を漏らします。
「これからまたちょっとずつやっていきましょう。あと二階堂くんちょっといい?」と言うと、二階堂をソファに座らせ、志朗は隣に立ちます。

「動くな」

低い声。

「動くな。動かない。そのまま。動くな」

志郎がぶつぶつと繰り返す。すると二階堂の肩ががくんと下がり、志郎は二階堂の肩から何かをつまみとる手つきをする。つまんだものを床に放り、また肩から何かをつまむ。
2回3回と繰り返すと「はい、終わり」と二階堂の肩を叩いた。

この一連の流れが「よみご」の通常業務。
体にまとわりつく悪意が凝り固まった良くないもの等を、巻物で探ったあとに良くないものに「動くな」と声で牽制。それをつまんで取る。
そうすることで、「よみご」は憑かれたひとの良くないものを剥がすことができるのでした。

「おお!軽い!」と喜ぶ二階堂。「俺も大概憑かれる方なんで助かります」とお礼を言った後、二階堂は慌ただしく管理人の業務に戻っていきました。

このマンションには志朗のような霊能者が必要で、わざわざ志郎に住んでもらっているようです。このマンションも今後一体どう繋がってくるのか楽しみですね。

今回はここまで。また次から「井戸の家」の描写になりますが、どうぞ志朗さんと黒木さん、二階堂さんの事を頭の片隅に置いておいて下さいね。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
動くな。動かない。

それではご機嫌よう。



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