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【読書レビュー③】米澤穂信「可燃物」

こんばんは。PisMaです。
本日も「可燃物」を読んでいきます。

タイトルは「命の恩」。

人通りの多い舗装された登山道「きすげ回廊」で人間の右腕が見つかったことから始まります。
警察の捜索でその山の至る所から体の部位が発見され、人物が特定されていきます。
野末晴義。人当たりが悪く確かにいろんな人に恨まれるようなことはしていたものの、殺されるまでの恨みを買うほどではない、そんな中年の男性。
私がなんだか怖かったのは、今回殺された被害者野末晴義の親族である野末勝。
警察がやってきても淡々と葬儀の話をしつつ、全てに諦めたかのような態度で警察の要望に協力します。私は最初この勝が晴義を殺したのかな?と思ってました。
そして人間関係が希薄だった晴義の近くで関係があった人物・宮田村昭彦が浮上してきます。

晴義が顎で使っていたような人物、と勝は表現しました。なんでも多大な恩があり、なんでもいうことを聞いたと。最終的に宮田村は逮捕されるのですが、葛警部はこれが冤罪だと見抜く。
推理ほんとに凄いんですけど、この方カフェオレと菓子パンしか食べない。今回もなんかそんなもんしか食べてない。すごく気になる。


真実は、晴義は自殺。
宮田村の過剰なまでの恩返しによる、勝の保険金譲渡目当てでした。自殺だと保険金が降りず、勝は途方に暮れてしまう。絞首の跡がある首を隠すために行ったカモフラージュの犯行。
「勝を頼む」という遺書を読んで。

人に恩を返すために、何十年もの罪を被ることを決めた宮田村。「娘の経歴にも傷がつくだろう」という葛警部の言葉にも「それが私のあの子の払う代償だ」と言葉を返します。
命を救われたからには命をかけて返さねばならない。それは娘も同じ。
宮田村にとって、晴義は自身も後遺症を負いながら娘と自分を助けてくれた存在です。そこに恩を感じるのは当然なんですが…なんとも不器用すぎるというか、解釈が突飛というか。ある種の信仰のようなものを感じました。神のためにどんな奴を殺す狂信者のような。

晴義もたしかに「勝を頼む」と遺書には書いたもののバラバラ死体になるとは思ってなかったんじゃないかねぇとちょっと思いますね。 

本日はこの辺で。
米澤穂信作品はやっぱり面白いですね。
また読めたら続きを。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
命の恩人は神か人か。

おやすみなさい。


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