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【単発レビュー】加門七海「祝山」

こんばんは、PisMaです。
今日は長編小説レビューの予定でしたが、今日購入した小説が面白かったので割り込みで一本ご紹介。

加門七海「祝山」。
多摩美出身の作者が書くホラー小説とのことでワクワクでございます。
SNSで存在を知り、薄暗く不気味な鳥居の表紙が印象的。全然祝う雰囲気じゃないのが大好きです。ではいってみましょう。



地獄の釜が開くお盆。


夏は怪談の季節。


そんな冒頭から始まる本著は、ホラー作家の鹿角(かづの)に昔の知り合い・矢口から「肝試しに行ってきたが、怖いから相談に乗って欲しい」という旨でメールが届くところから始まります。

霊感があり、幽霊の存在を信じている鹿角。
故に肝試しには否定的です。しかし現在執筆中のホラー小説の取材も兼ね、鹿角は矢口を含めた四人の話を聞くことに。そこから矢口を始め、肝試しにいった連中から話に関わった鹿角まで奇妙な怪現象に見舞われることになります。

「祝山」という山にまつわる怪現象。

最初は「心霊スポットになっている製材所の廃墟に行った」という話が発端ですが、だんだんと心霊スポットに行った三人の様子がおかしくなっていきます。明るく陽気な人格だった矢口は激しく太り、短気になって別人のようになってしまいます。他の1人は狂ったように山の写真を撮りに行き、もう1人は山で刺された虫刺されが酷く悪化して腕が使い物にならなくなる始末。廃墟に行った者で無事なのは若尾のみでした。

そして次第に、廃墟の裏にあった山にフォーカスが当たっていきます。
祝山はその目出度い名前や、周りにある建造物の名称との関係から神域の山だったのでは、と鹿角は考えていました。
しかし実際に廃墟に行った一人であり、並々ならぬ違和感と恐怖を覚えていた女性…若尾は「あの山は神域の感じがしない」と意を唱えます。
「例えるなら墓地に近い」、と。
後に鹿角はあの山には違った読み方と、ある言い伝えがあることを友人から伝えられます。

それは「位牌山」という読み方。
そして「あの山のものは、木一本草一つとして持ち出してはいけない」ということ。

山に不吉な名前が付いていると、縁起を考えて別の読み方を当てる時があるのだそうです。

位牌山。
製材所。
面白半分で心霊スポットに行く輩。

鹿角はここで「誰かが位牌山の木を持ち出しているのでは」という思考に行きつきます。関係者を問い詰めると確かに木切れを持ち出してきていたことが発覚します。
鹿角は心霊スポットに行った者たちに木切れを持ち運ばせ、山へ向かうことに。

「きちんと木を山に返せ」と急かす鹿角をよそに原因が分かって怖さが薄れたのか、知り合いの連中の一人が木切れを神社に放り投げます。

そこで完全に「終わった」と愛想が尽き、もう知らないとばかりにそそくさと東京に帰る鹿角一行。
そこで矢口は電車に乗り遅れ、そこから矢口は行方不明となりました。

大まかな話の流れとしてはこんな感じになっています。

友人の一人を失った鹿角や、肝試しのせいで山の怪異によって人格が破壊された者。要約では省いてしまいましたが、肝試しに行った一人は亡くなっています。肝試しにはやはり行くもんじゃないな、という気持ちが強まりました。

なかなか読みやすい書き口な印象で、主人公・鹿角も用心深く懐疑的で、かつお人好しな性格が人らしくで楽しく読めました。
そして、私の好みな怪異の原因をぼかさずにしっかり探ってくれるタイプのお話。とくに民俗学的な要素の絡むお話は興味深いのでとても良かったです。また同じ作家さんの作品も見れたら良いなと思います📗

長くなりました、今回はここまで。
今日はどうしても一気に本が読みたくて読んでしまいましたが、良い気分転換になりました。
明日は巣のレビューに戻りますので、どうぞ宜しくお願いします。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
しずかに隠される忌み名。

おやすみなさい。

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