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【トレンド】世界はWithコロナの新しい消費者の時代へ:テクノロジーが加速する6つの消費者の変化。小売とメーカーには新たなニーズに寄り添う機会

世界各国の経済、そして消費者の価値観や行動に大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症。今回の記事では、 制限された生活からの緩和で、消費者がどう動き、何を求めていくのかを解き明かします。

世界中で生活への制限が緩和し始め、人々も徐々に再び街に戻ってきました。しかし今の世界は年初とは全く別物に変わっています。新型コロナウイルスの新規症例は依然多発し、第二波の脅威もあります。当面はコロナ禍”以前”と”最中”の「混合シナリオ」の中で生活することになるでしょう。政府も、検疫や生活制限の緩和で経済を活性化しつつ、様々な追加予防措置も実施しています。

以前、ニールセンは市場再生に向けた3つのシナリオを呈示しました(リバウンド、リブート、リインベント)。それぞれのシナリオは、異なる時間軸に基づきます。景気後退の状況が異なるため、企業が再生する条件も異なります。小売環境や消費者の支出も異なります。またこれら全てはロックダウン以前とも大きく異なります。

世界的に失業率が上昇し、経済の見通しも下方修正される現在、消費者は2つのセグメントに分かれてきています。一方は健康で所得も変わらず、外食や娯楽、旅行などの支出が無いため、以前より手元のお金が増えている消費者です。もう一方はコロナ禍で失業、一時休業などの影響を受け、支出削減を余儀なくされている消費者です。

今回ニールセンは、今後消費者の変化が起こる6つの側面を特定しました。テクノロジーによって、この変化は加速し、2つの消費者セグメントは異なる振る舞いをすると考えています。

コロナ禍で今後消費者が変化する6つの側面

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1. 支出

消費者は、その時々の状況に応じて支出を調整します。コロナ禍で所得が減少する人は低所得であることが多く、更に日常生活での節約を模索します。コロナ禍の収束が遅れるほど、節約はシビアになり、更に安い代替品を求めるか、特定の商品の購入を止める等、少しの贅沢さえも出来なくなります。

一方、雇用の面でコロナ禍の影響を殆ど、または全く受けない中高所得者は、欲しい・必要な製品やサービスを買う自由度が高まります。外出の代わりとして、より高価な製品やサービスに買い替える事すらあるでしょう。しかし、いずれは「次は自分かもしれない」と不安になり、高額品への支出は控えるようになるでしょう。

2. 購入する日用品

中国がロックダウンを緩和し始めた時、ニールセンは「ステイホーム経済」が発展している事に気付きました。生活制限が緩和されても、好んで自宅で過ごし、食事をし、娯楽を楽しむ消費者が増えていたのです。他の国々も同じ傾向で、今後数ヶ月間はこの状況が続くと考えられます。日用品(FMCG)業界は、しばらくは好況が続くと考えられますが、売れ筋の製品や価格帯は、今までと変わってくるでしょう。

収入の面でコロナ禍の影響を受けない消費者は、日用品では、贅沢品・ご馳走・プレミアム価格帯の製品に自由にお金を費やすでしょう。お惣菜や食材キットで自炊を補ったり、宅配も使います。一方でコロナ禍で収入に影響を受けた消費者は、飲料やお菓子などのちょっとしたご褒美を購入するものの、徐々に、生活必需品から全カテゴリーまで、安価なブランドやプライベートブランドに変更していくでしょう。最悪の場合、政府の援助を受けることになります。

3. 価格に対する態度

数ヶ月間に及ぶ生活制限の中で、小売環境は根本的に変化しました。買い貯め、在庫切れ、物流の滞り等で、販促プログラムが突然中止されたり、大幅に削減されました。これを受けて、消費者の価格に対する態度と、価値の認識は変化していくでしょう。小売業者や製造業者にとっては、消費者の価値とは何かを理解し、新たなニーズへの対応を検討する、「リセット」の良い機会です。

この新しい小売環境では、カテゴリーによって有効な価格設定は異なります。ステイホームで恩恵を受けた主食品や必需品は更なる売上拡大が難しく、コロナ禍前のような販促の有効性は期待できないでしょう。一方、外出先で消費するスナック、菓子、ソフトドリンクなどのカテゴリーは、生活制限が緩和された後も、家庭内での消費を喚起し、需要を活性化する販促が必要となるでしょう。

在庫が安定した後は、消費者は買物頻度や来店回数を減らす行動に向かうと考えられます。小売業者にとっては、EDLP・低い値引率・エコノミーパックやボーナスパック等でリピート来店に有効かもしれません。

ロックダウンの時点ではサプライチェーンが混乱し、在庫補充と配送が優先課題となりました。この時、小規模小売店、消費者への直接販売(D-to-C)、専門店が、伝統的な小売業態の隙間を埋め、小売業態は更に細分化しました。今後、どういった店舗が消費者に選ばれるのかが次第に明らかになってくるでしょう。

4. 製品に求める価値

現在、消費者がブランドや製品を選択する際、健康・安全・品質の価値が重要度を増しており、今後もこの傾向は続くと考えられます。重要な製品特徴も同様に変化し、消費者は現在使っているブランドを見直し始めます。

例えば、ニールセンBASESの調査では、消費者はホームケア製品には、オーガニック・自然、サステナビリティより、殺菌、免疫力強化、健康増進といった製品特徴を求めていることが分かりました。一方、食料・飲料では、消費者は、免疫力強化、オーガニック、健康増進効果がある高品質な製品を求めています。

消費者が求める製品特徴を理解することは、顧客ロイヤリティの向上だけでなく、プレミアム価格を可能にします。この準備を進めてきたメーカーは、コロナ禍のピークが去った後では、消費者の長期のロイヤリティを獲得し、生き残っていく可能性が高いでしょう。

また、小売業者も、消費者の新たなニーズに寄り添う製品を優先的に店頭に揃えることが出来ます。今後サプライチェーンが制限される場合は特にこの点は重要です。以前のようなロングテールな品揃えは難しくなるからです。

5. 現地ブランド・現地産の重視

地元ブランド・現地生産品であることは、以前に増して、重要となっており、今後もこの傾向は続くでしょう。その要因として世界的に物流が途絶える中で、入手が比較的可能である(小売業者も安定した供給を求めている)。製品の成分や素材調達の透明性と信頼性ニーズの高まりに有利なことが多い。消費者が自分の地域社会や経済を活性化させるブランドや製品を選びたいと強く願っている、といった事が挙げられます。この傾向は現在の状況が続くほど、より強まっていくでしょう。

更に政府が現地生産を奨励する可能性もあります。手頃な価格の製品供給が確保され、現地ブランドは製品ポートフォリオやインフラを拡大・成長することが出来ます。政府の税制や規制に依りますが、今までの自由貿易の時代から変わって、現地ブランドは新たな補助金や保護を享受することになるかもしれません。これは、店頭の品揃えや生産設備の拡充という面で、全てのプレーヤー、即ち多国籍企業と現地産の強みを活かせる地元企業である、小売業者とメーカーに大きな影響を与えます。

6. ブランドとの繋がり

ロックダウンの間、多くのブランドはマーケティングや広告活動で苦労してきました。2020年初頭のキャンペーンはコロナ渦とは無関係で不適切となり、売上減少でキャンペーン予算は削減されました。

消費者は今、自分が直面する状況への配慮や共感を求めています。本物であること、信頼、共感がブランドに求められており、常に対応しつづけたブランドが消費者とのつながりを強める事が出来ています。

今後ブランドは消費者の媒体視聴やエンゲージメントの変化を理解し、コロナ渦で壊れた関係を再構築することが必要です。この際、デジタルとバーチャルは、マーケターにとって新たな重点分野となるでしょう。ブランドが信頼できること、自分や自分のコミュニティを大切にしていることを理解した消費者は、ブランドとの繋がりを益々大切にするようになるでしょう。

テクノロジーが消費者の変化を加速する

世界中で生活が制限されたことで、テクノロジーは私たちの生活を一変させました。コロナ渦により、デジタルツールの利用が予想以上に加速しています。オンラインショッピングは飛躍的に成長し、電子決済や店内ナビゲーションアプリの利用も増加し、ブランドはインタラクティブやバーチャルな購買体験を通じ、消費者との結びつきを強めています。

テクノロジーは今まで述べてきた消費者の変化に重要な役割を果たし、店舗とオンラインでの消費者の行動を変化させる強力な推進力となるでしょう。

ニールセン・カンパニー合同会社では、消費者調査、ショッパー調査、販売予測、マーケティングROI分析、コンシューマーニューロサイエンス分析、海外市場情報提供などを行っています。
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