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犬山まちづくり自主学校(第3期)第4回「あったらいいなワークショップ」

3月17日(日)犬山まちづくり自主学校(第3期)第4回(最終回)「あったらいいなワークショップ」を開催しました。講師は尾張旭市議会議員で、出産議員ネットワーク事務局長もつとめられ、主権者教育プロデューサーの大島もえさん。もえさんは犬山まちづくり自主学校の第一期からずっと講師として関わっていただいております。


犬山まちづくり自主学校(第3期)の振り返り

講義の前に、まずは今年度のまちづくり自主学校で学んだことの全体の振り返りを進行役から行います。

第1回目「同意」(講師:中谷奈央子さん)では、日常のいろいろモヤモヤする原因には、「同意なく境界線を越えられていた」ということがあるのではないかというお話しでした。人にはそれぞれの「境界線」のあり方があり、知らず知らずにその境界線を乗り越えてしまうと、他者を傷つけることがある。だから「同意」をとって相手の気持ちを確認する必要があるのです。すべての基本にあるのは、「あなたのからだも、こころも、あなたのもの」。気持ちを伝え、確認することが大切になってきます。

 第2回目の「ジェンダーと家族、社会の関係は?」(講師:田村哲樹さん)では、安心安全な場であるはずの家族にも(半ば無意識に)共有している、「男は仕事(優先)、女は家庭(優先)」という社会的な規範があり、こうした「性」(の区別)に関する考え方やイメージに苦しむことがある。こうしたイメージを「ジェンダー」と呼びますが、これは「社会的≒言語的」なものなので、言葉によって作りかえていくことができる。互いに異なる個人をまとめ「家族」であるためには絶えざる「調整」が本来は必要となり、この調整が民主主義と関わっているというお話しでした。

第3回目の「男女共同参画って何?」(講師:田村哲樹さん)では、1999年に制定された「男女共同参画社会基本法」というもののなかで、性別による差別的な取り扱いを受けないということ。性別による固定的な役割分担(ジェンダー)によって、社会における活動の機会が狭まれてはならないこと、こうした社会の形成を促進するための施策を、国や地方公共団体は積極的に実施する責務があること、などを確認しました。そして、男女共同参画というと、女性の問題と考えられがちですが、それよりも、男性が家庭に参画し、家庭のことを家族みんなで「話し合い」「選択する」ことの必要性について学びました。

3回の講座を通じて再確認したことは、たとえ家族や身近な関係であっても、自分と他者とは違い、それぞれの境界線をもっているというということ。だから、面倒なようでも一つ一つ自分の気持ちを伝え、同意をとって、話しあっていくことが大切だということでした。

「あったらいいな」を実現するために前提を整える

でも、これまでのアンケートでも出てきましたが、「お互いの話を聞くスタンスになるにはどうしたらいいのか」と考えてしまうような、そもそもの前提である話しあう土台がないと思えてしまう場面が現実にはたくさんあります。対話が成り立つ前提にはお互い「対等」であることが必要ですが、対等と思えないような関係の場合、声をあげることは難しい。

 今日のワークショップでは、もえさんと一緒に「前提を共有する」ことからはじめて、どうやって思いを伝えて、共感を得ることができるのか、じっくり考えます。

もえさんはわかりやすい例を挙げながら説明してくれました。

 あったらいいなを伝えるのは、大体の場合、今ないこと、困っていることを提言するので、相手は否定されている気持ちになることがある。あなたのことを否定しているのではなく、この事柄について話しているということをまずは伝え、場を整えることからはじめる必要がある。

でも、場を整えるにはエネルギーがいる。そして、整えてから話すのはさらにエネルギーがいる。困っている当事者は、そもそも弱者の側にいるもので、その人が声を上げるのはとても大きなエネルギーがいることです。

そのときに、中立でありたいと思う人は真ん中にいるのではなく、弱者寄りに立ってあげないと、強者の側に傾いているシーソー(格差)はまっすぐにはならないということも頭に入れておく必要があります。

(上)勝部元気さんツイッター (下)岩城はるみさんブログより
まちづくり自主学校(第二期)第一回WS「課題をみつける」も参照ください

もえさんが気をつけていることは、

・どうして自分がその課題に気がついたのかという「背景」
・自分はどこの立場で言っているのか
・自分にはその課題がどう見えているか
・理想はどこに向かいたいか(ゴールをどこに設定しているのか)

ということを、お互いの前提を整え、対等であるために、前もって整理して伝えることだそうです。

自分視点・自己理解と他者視点・他者理解

次いで参加者の方にはワークシートを使いながら、それぞれが自分の考える「あったらいいな」に向けて、まずは自分が課題と感じることを一つとりあげ、そのための解決策だと思うことと、それに関わる人(ステークホルダー)について分析してもらいます。

 はじめはまったく課題が思いつかないという人も何人かいましたが、他の人から出てくる話を聞いたり、それに対してもえさんが当意即妙に繰り出す経験談を聞いているうちに、だんだんと課題が見えてくるという場面もありました。
出てきたのはこんな課題です。

・家事は「妻という立場の人」がやるものだと思われている。
・こどもがいる女性は、こどもの都合で休むことが前提にされがち。
・男友達と遊んだという話をしたら、「デート」と言われた。
・先生と生徒はそもそも対等ではない。先生がふざけたつもりで何か言ってきて不快な気持ちになっても何も言えない。
・こどもが好きになる相手は異性で、恋愛感情は誰にでも絶対にあると思っている友人がいる。
・こどもの送迎をするのが妻の役割になっている。話し合いをすることで夫が困ると思っているので話し合いをあきらめている。
・男性が家庭のことで困った場合に、気軽に相談できるような場所がない。
・トイレのマークが女性が赤でスカート、男性が青でズボンのことが多い。誰でも入れるトイレが欲しい。
・体育の着替えで男子は教室で着替えるけど、女子は部屋を移動して3クラス合同の部屋を使わないといけない。
・こどもなのに背が高いと大人料金に案内された。逆に背の低い人はこども扱いされてしまうかも。
・長女の就活時に、女の子は就職は結婚までの腰掛けだから楽でいいと知人に言われた。
・育休、時短で仕事を続けるなか2回昇進すると、お母さんなのにバリバリですねと言われた。男性なら言われないはず。
・秘書に男性がついているとバカにした態度をとる人がいる。秘書は女性の仕事だという職業バイアスをいまだにもっている人がいる。

そして、これらの課題に対する解決策だと思うことを複数点挙げてもらい、その解決策の問題点や、関係者を吟味します。
難しくて解決策が見えない課題もありますが、もえさんはこう言います。

「伝えても現状が1mmも変わらないこともあるけれど、言語化することで出発点に立てる。」

課題はそのまま残っていても、理解してもらうことで、同じ方向を向くことはできるのかもしれません。 

課題を一つに絞ってみんなで考える「学校のなかの対等性を保つには?」

 次は全体で一つの課題を吟味する時間です。個別に出してもらった課題のなかから、一つに絞ります。

今回は中学生が複数人参加していたことや、こどもをもつ大人が多かったこともあり、先生と生徒の対等性の問題について取り上げることになりました。

学校のなかの対等性を保つという
コミュニティにおける上下関係にまつわる
あったらいいなを実現するためにできることはどんなこと?

▶︎最終ゴール「人々が対等になること」
だけど、それは果てしない目標なので、まずはステージ1の目標として、学校のなかの対等性を進める具体的な方法論をみんなで考えてみます。

▶︎Stage1
前提:対等であるためには、相手を尊重する必要がある

 これを(1)自分視点と(2)他者視点に分解します。

 (1)生徒側
・そもそも先生は「先生」と呼ばせるくらい、上の立場にいる。
・そもそも生徒側はタメ口を使える立場にもなく、怒られる。
・先生は生徒に親しみをこめたつもりで、ノリでいじりやふざけたことを言ってくることがあるけど、生徒はそれに傷ついても言い返せない。
・尊重が土台にあるか。相手を大事に思ってその言葉を紡いだかということを先生に突きつけたい。
・生徒も所詮他人だということを先生はわかっていない。一回それをピシッといってみることが必要かも。

 (2)学校視点
生徒の一人一人を尊重した教育を一番の理念に掲げてすでにやっている。生徒からあがってきた課題を先生たちは聞いて対処しているから十分尊重している、といった答弁があった。  
(→でも、あがってこない課題はどうして見て見ぬふりをしてるの?どうしておかしな校則や状態を先生が自ら気づいて変えていこうとはしないの? という疑問の声も)

 Stage1だとまだまだぼんやりしているので、さらに具体的な案としてStage2を考えます。

▶︎Stage2
提案:先生、生徒、保護者の三者会議をやってみる。
(先生と生徒だけだとなかなか対等になることは難しいので、そこに保護者が加わってみるともう少し対等になれる?)

これも(1)自分視点と(2)他者視点に分解します。

(1)生徒・・・何か先生が気に入らないことを言うと成績を落とされるかもしれないから言えない。
保護者・・・保護者は対等でいられる関係だけど、先生には遠慮があるし、相手を気遣うからこそ、先生にドキッとしたときもブレーキかけていえなかったりする。

(2)学校視点・・・三者面談はもうすでにやっているよ。自由に話せる場は作っているつもり。投書箱もある。

 さあ、両者の立場は平行線のまま。これを交わらせるためにはどうすればいいんだろう? それを考えるために必要なプロセスとして、もえさんはいくつかの要素を提案します。

 1)相手側の土俵に立つ。どうして先生は生徒を尊重し、対等な立場でいると思っていられるんだろう?
2)相手(学校側)が、もうやってるよというのではなくて、困ってるよと気づいてもらい、そうだね、そうなるといいとなって思ってもらうためにはどうすればいいんだろう。
3)対等じゃないことによって誰がどう困っているのかを伝える。
4)困っている人の存在を知ったときに、相手(先生)はそうだねと言ってくれる人なのか。
5)先生にどうやって気づきを与えるか。相手(先生)は何を大事に仕事(先生)をやっていて、何を言えば届く人か。その人にとっての理想の社会はこうだから、その対話の場が必要だと思えるかを考える。

「 こうしたことを分解して考えて、それを先生にかみくだいて伝えてみるのはどうだろう。口頭で伝えると誤解もあるし、他の人には伝わりにくくなるから、書いて渡した方がいい」ともえさんは話します。

 それに対し、参加者からこんなコメントもありました。

「営業の仕事と似ている。営業では、課題に気づいてもらって自分たちに仕事をもらえるかというのをずっと提案している。「購買の心理8段階」や、相手がこのサービスは必要だなと思わせる「AIDMAの法則」でも、興味をもってもらって、いろんなステップを経て、比較して、相手が本当にこういうものが必要だなと納得した上で、購入に至るというプロセスがある。

たとえば犬山市が遅れているのであれば、他の自治体や学校はやってるんだなと、進んでいる自治体に視察に行ってもらったりとか事例を紹介したりとか、その上でいかに納得させて、その次の満足に持っていくことができるか。学校側も納得しないと、対等という立場は作られないのでは。」

 ※AIDMAの法則:消費者の購買行動を段階別にわけたマーケティング用語。Attention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)

あったらいいなを伝え、共感してもらって、実現するための手順は、結局のところ、学校も社会も同じなのかもしれません。
 「こういう風に分解して考えるスキルを手にいれると一生使えるかも」ともえさん。

 といったところで、3時間はあっという間に過ぎてしまいタイムアップ。
あったらいいなワークショップはここで一旦終了となりました。
あとは残った人たちでさらに課題を吟味します。

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