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わたしは森の中の巻

わたしは、森を歩いていた。

時々、足の裏に刺さる棘のようなものに、少々の痛みを感じながら。

棘といえば、下腹部の痛みが、まだ。

鈍痛というのだろうか。

トイレに行きたいような痛みとでもいおうか。

わたしは、彼と一つになれたのだ。

この痛みは、その証拠。

だのに、なぜ、いま、わたしは森にいる?

しかも、裸なのだ。

しかし、気持ちがいいのだ。

なぜか。

寒くもなければ、怖くもなく、ただ、ただ、気持ちがいい。

シーンと鼻を透きとおる針葉樹の香りだろうか。

慢性鼻炎のわたしの鼻が、スースーと通るのだ。

「ああ...」

両手を天に掲げて、伸びをしながら、深呼吸しながら歩くのだ。

鳥のさえずり、獣の鳴き声。木々の擦れる音。

風が。

木の枝にロープ。

古びたリュックサック。

人間の衣類や白いなにか。

どこまでも続く深い森の中へ。

時々、木漏れ日。

おそらくは、もうすぐ日が暮れる。


つづく

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