友だちじゃないあなたと
奥多摩の山の中を男性とふたりで走り、トレイルランニングの練習をしていたときのことです。彼の知り合いにそこで会い、その方が私のことを「お友だち?」と彼に聞きました。
「いえ、仲間です」
ときっぱりと答えたことがずっと心に残っています。
友だちを否定し、仲間と言いきったことに新鮮さを感じました。
友だちのように、お互いを好きであったり、気が合ったり、ただ目的もなく会いたくなったり、一緒にいて楽しいわけではなく、べたべたした生ぬるい関係ではありません。
身体や精神の限界にチャレンジすることも、きつい練習も、1日中身体を動かし続ける過酷なレースも知ってます。
同じ目的を持ち、支えあい、協力しあう仲間。
友だちはお互い夢や、目標が違っても一緒にいることができます。
私たちは友だちではありません。
雨の日も走りました。
合宿のメニューはきつかったです。
奥多摩を彼と走ったのもきつかったです。彼はトレイルランナーで山を走るのは得意で、彼の背中がどんどん遠くなり見えなくなり山の中で不安になってしまいました。
子どもを何もない広い場所に、ぽんと連れ出すと走り出すように、体を動かすことは人間本来の姿を取り戻す1つの方法でもあります。
人間本来の姿を取り戻すと 生きる力が高まります。考える力もないとレースの組み立てができません。
あなたとは、トライアスロンで結びついているだけなので
あなたの職業も肩書も年齢も知りません。
でもあなたは友だちではなく、仲間だということを知ってます。
あなたとは色々なところに行きましたね。
大島トライアスロン、佐渡トライアスロン、宮古島トライアスロン、奥多摩アドベンチャーレース、高尾山トレイル、筑波バイクライド・・・。
「ゴールで会おう」とお互いの健闘を祈り握手をして海に跳び込みます。
泳いでいるときも、自転車を漕いでいるときも、走っているときもひとりです。でも泳いでいるとき、あなたと一緒にしたきつい練習を思い出します。漕いでいるときも、あなたと上った峠を思い出します。走っているときも、あなたの顔が浮かびます。苦しいときに仲間との練習を思います。
友だちじゃないあなたが私にくれたものは
ひとりだけど、ひとりじゃないということ
ゴールで迎えてくれるあなたの笑顔と
完走した者すべてが勝者になれる感動と
生きる力
彼らと一緒にお花見ライドをしました。
東京から埼玉浦和市~上尾市~北本市~吉見町~東松山市まで85km。帰りは電車で輪行(輪行袋という専用の袋に入れて鉄道やバスなどの交通機関を利用すること)でした。
20年来のお付き合いの方、きょうはじめてお会いした方、2度目にお会いした方、スイムの練習会でお会いする方。
彼らの家族構成や、今まで歩んできた道のり、仕事、年齢、よく知りません。知らなくってもトライアスロンという共通項でつながることができます。
楽しいことも、きついことも共有できます。
苦しいだけじゃない。
楽しいだけじゃない。
友だちじゃないあなたと一緒だから。