ガラスの海を渡る舟【読書感想】
nicoです。課題本の読書感想第2弾。
今回は、大好きな寺地はるなさんの
「ガラスの海を渡る舟」です。
お時間少々で読み切りますので、お付き合いください。
ガラスの海を渡る舟
寺地はるな著
【感想】
妹の羽衣子は、兄である道の非凡な才能と、普通のことが普通にできることだけで褒められるという嫉妬を抱えながら生きてきた。
兄弟というのは、不思議なもので
子ども時代に兄弟やいとこといった年齢が近い人と比較されながら育った経験があると思う。
羽衣子は、自分を
月並みな人間だった
しかし、まだまだ自分の中には見いだせていない感性が隠れていて
見つけ出せていないだと。言っています。
私は、どちらかといえば、月並みな人間になりたかった。
割と、何をしてもとろかったせいもあると思う。
学校という集団は、できる子、できない子、普通の子くらいの分類で成り立っていて、私も兄弟や周囲と比較されながら育ったからだ。
でも、本来の性格が違うため、自分は自分で生きていたい。
そんな風にもしかしたら、いつもいつも感じていたのかもしれない。
羽衣子のようにガラス職人としての芸術的な分野に、秀でた才能はなくというか環境でしょうね。周囲にそのような方もいませんでしたし、字がうまいことや、学校の成績が良いことの方が周囲からへの好感度は高めでした。
だからといって、周囲の期待にこたえるために、何かをしたことはないな。と振り返ってみて感じました。
ただ、上手になりたい。
知らないことを知った方が、より良い生活ができるに違いない。
好奇心というよりは、昔から自分の好きなことをするために早く自立したいと考えていたようです。それはそれで、随分味気ない感じもしますね。
しかし、そんな羽衣子にも、考えを変える出来事が起きます。
それは、やはり兄の存在なんですよね。
羽衣子が付き合っていた彼に、兄が「あなたは間違ったことを言った。羽衣子は、どこにでもいるような子ではありません。訂正してください。」と言った出来事がきっかけで、兄と妹の関係に変化が出てきたと思いました。
自分への思い込みはありませんか?
自己肯定感が高いとか低いとかいう言葉を最近よく目にします。
子どもの頃は、「○○になりたい」という○○が、たとえ遠き存在でも、周囲は暖かく見守ってくれます。
しかし、進路選択の話が出てくる年齢になってくると、自分の可能性と現実を天秤にかけ、見定めていかなければなりません。
羽衣子は、ガラス職人という道自体を否定されるような環境ではありませんでしたが、やはり芸術家としての非凡さを見定めつつも、やはり諦めきれない見出し切れていない自分を探し続けます。
そんな時に、一番の嫉妬の原因である兄に「どこにでもいるような子ではない」と言われたら、どんなにか心強いか。
私自身も、「nicoさんのことが好きだよ」「nicoさんのこんなところが好きだよ」と人に言われる機会が少なくはありません。
本当は、もっともっと自分自身にそう声をかけ続けたら良いのに。と最近になってよく考えます。
後半になるにつれ、
道と羽衣子との会話から、自分との感情のもちかた、言葉の使い方の違いを互いに認識しあい、互いの良さを感じ取っているように感じました。
一番の嫉妬の相手は、嫉妬という感情だけではない「愛」もあったからなのだと思います。
兄弟のやりとりからだけではなく、道が好意を抱く「葉山さん」の言葉も印象的でした。「わたしたちは、晴れの日は「天気が良い」、雨が降れば「天気が悪い」と言うけれども、それは人間の勝手なんですよね。わたしたちたち人間は自分の都合に合わせて物事の善し悪しを決めているのですよね。という住職の話を聞いたときに、「自分の身勝手さを指摘されたかのように思いました」と彼女は言うのです。
私は、日常で「nicoさん、どう思う?」と聞かれることが多くあります。
相手が欲しい言葉を言うことを躊躇してしまうことがあります。
大抵のことは、今そこにいない人について、どう思うと聞かれるからです。
私は、他人の話をするときは慎重にすることにしています。
なぜなら、それが清き1票になりがちだからです。
著者の作品の中に「声の在りか」という本があります。
自分の気持ちを押し殺して、過ごす主人公の毎日のように、
この本でも、生きづらさをもってして、どのようにしていけば良いかということについて書かれているように思いました。
生きづらさは、誰にでもあって「try&error」の繰り返しのような気がします。変えるきっかけを自分自身が与えることは可能で、羽衣子のように何かを見つけたいと感じていれば、自分へのプレゼントのような出来事や会話が巡ってくるような気がしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
会話の一つ一つが印象的で、じんわりと心に染みる作品でした。
これで良いの?こっちの方が良いよ?
日々一番会話しているのは、自分自身です。
どうか、そんな自分と仲良くなれるような本になりますように。
nico
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