夜のマックフルーリー
まだ私が小学生だったとき。
父と母と三人で地元のカルチャーセンターであったコンサートを見に行った。妹と弟は家でお留守番だったと思う。
夜、コンサートが終わった後に小腹が空いたからカルチャーセンターの近くにあるマクドナルドに寄った。
私はそこで初めてマックフルーリーを食べた。
味はオレオだったと思う。
すごく、すごく美味しかった。
夜にマックなんて行ったことがなかったし、それも父と母と三人で、妹と弟には秘密で、とても楽しかった。
父と母を独り占めして、しかも初めてマックフルーリーを買ってもらえて、幸せだった。
いつもは食べないものを、夜に。
いつもは妹と弟がいるけれど、今日は一人で。
いつもは両親を独り占めできないけれど、今夜は私だけが。
食べたことがないものを、初めて。
特別な気分で、特別な味だった。
きっと両親は教育のためにと私をコンサートに連れて行ったのだと思うけれど、私にはもうマックフルーリーを三人で食べたという記憶しかない。
それから今まで私はマックフルーリーを食べていない。
マックには行くけれど、それはなぜか食べていない。
私にもし子どもが生まれたら、両親と同じように夜にマックフルーリーを食べに連れて行くのだろうか。
あの頃の私と同じように、私の子どももその味を心にぎゅっと染み渡らせて嬉しく思ったりするのだろうか。
ちょろい女子大生の川添理来です。