#16日本での技能実習から帰ってきたベトナム人
■このマガジンについて
ベトナムホーチミン市にネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。
全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。
■やっと前に少し進むが、気持ちは落ち着かない
ベトナムでネイルサロンを作ると決めてから6ヶ月経っていた。
私はやっと42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパートのキープまでこぎつけ、日本に帰国した。
少しは落ち着きたいところだが、日本に帰った後もなんだかんだバタバタしつつ、気持ちはソワソワしている。
ソワソワの原因
・契約まで行って4日後に解約した経験があった。またダメにならないだろうか...。
・念書を書いたとはいえ、他の人に物件を貸してしまわないだろうか...。
この半年の間に8回ベトナムへ来ていた。
さすがにこのペースで出張していたら新鮮味は薄れるものだ。
私は飛行機から降り、淡々とターミナル行きのバスに乗り込んだ。
今は1時間以上待つのがざらなベトナム入国手続だって、どの経路を通り、どこに並べば早く入国できるかも知っている。
「ホーチミンあっつーい!」と送迎バスの中で日本語でキャッキャと騒いでいる女子大生のワクワク声を聞きながら、私はベトナムのsimカードをまるで銃に弾を詰め込むかのような手際の良さで入れ替えた。
■ベトナム人との新しい出会い
空港を出た私は「着いたよ!」のメッセージをNgoc(ゴック)さんに送りながらタクシーに乗り込んだ。
ゴック:優子さん、お疲れ様!
私:xin chao! ホーチミン入りはもう慣れたよ。
ゴック:今回の出張でやっと契約できますね!慎重に行きましょう。
私:そうですね。ゴックさんが一緒だから心配してないよー(^^)
ゴック:実は...今仕事が忙しくて。それに私の赤ちゃんの調子も悪いんです。私はしばらく外に出れないから代わりに部下の友達を紹介します。
これからは彼と色々なことをやってくれませんか?
私:ええ!大丈夫なの!?分かった分かった。
ゴックさんが紹介する人なら全然OKよ。
そりゃそうだ。
ゴックさんは生後7ヶ月の赤ちゃんの子育てと仕事で超忙しい。
「彼女の部下で日本語を話せるMinhさん(ミン)の友達かぁ」
ミンさんはとても真面目で賢い人だから、彼の友達もきっと似たタイプだろう…
そんな事を考えながらタクシーの中から新陳代謝の激しいホーチミンの景色を見ていた。
タクシーを降りると、ミンさんはビルの外まで出て、私を迎えに来てくれていた。
私たちは挨拶もそこそこに中へ入った。
ミン:優子さん。僕の友達のTang(タン)は大学からの友達です。
大学では、一緒に日本語を勉強していました。
私:へー、そうなの。あなたの友達ならきっと真面目で日本語が上手ですね。
ミン:ははは。楽しい人です。彼は日本で働いていましたが、先月ホーチミンに帰ってきたばかりです。日本人と仕事をしたことがありますから、安心してください。
【【【 日本で働いていた経験有り! 】】】
さすがミンさんの友達。
日本で仕事をしていたなら、意思疎通がスムーズに行きそうだ!
私は、ワクワクしながらメッセージを送った。
私:xin chao! タンさん、はじめまして。私は西村優子と申します。
これからよろしくお願いします。
タン:xin chao 優子!僕はタンだよ。よろしくねー!
それでいつ会う?僕はいまからでもいいよー(^^)(^^)(^^)(^^)
フランクな言葉といっぱいの絵文字で返信をくれたタンさん。
本当にあの真面目なミンさんの友達なのか?
めちゃくちゃフレンドリーじゃないか!
この人がタンさん↓
彼は、私のまどろっこしい日本語でも、意味を瞬時に理解する。
そして返答する言葉のチョイスが絶妙だ。
私は、彼と会って数分で仲良くなっていたし「相当頭が良さそうだ」と感じていた。
しかし、優秀な彼が急遽ベトナムに帰国したという。
私:ねぇ、タンくん。どうしてホーチミンに帰ってきたの?
タン:僕は「技能実習生」として2年日本で働きました。でもお母さんは病気になっちゃって。僕は心配だから帰ってきちゃった。
私:へぇ、そうだったんだ。それは心配だね。お母さんの具合は?
タン:うん。今は落ち着いているよ。働いていた会社の部長は、僕に「行かないで!もうちょっと一緒に働いてほしい」って言ってくれたんだけど。
家族に問題があれば、それは仕方ないね。
確かに、ベトナムは今も3世代が1つの家で暮らすのも当たり前。
なにか問題があれば、家族全員で面倒を見るし、それがふつうの国。
日本で働く期間は残っていても「帰らなければ!」と判断したのだろう。
「技能実習生」とは...?
日本で培われた技術等を開発途上国へ移転し、人材育成を支援することを目的とする日本政府が創設した国際的な人材育成の事業です。
研修期間と合わせて最長3年の期間において、技能実習生が研修により習得した技術等を、雇用関係の下、より実践的かつ実務的に習熟する事で、2年間就労することができます。
ホーチミンに帰国して、無職になっちゃった(キャハ!)と陽気に話すタンくん。
彼はメンタルも強いと見える。
私:私はホーチミンにネイルサロンを作りたいの。物件はいいところが見つかったけれど契約はまだ。
タン:そうですか。これから準備がたくさんあるね。
私:今後も日本から遠隔経営するつもりです。だから、ベトナムにはずっといません。今、一緒にお店を作ってくれる人を探しています。私を手伝ってくれませんか?
タンくん:うん、いいよ!僕は今無職だから、なんでもできる。キャハ!
チャラいなこいつ......。
でも、起業ビギナーの私には彼のような「なんとかなるさ」と軽いノリで乗り切っちゃうタイプのサポーターが必要だと思った。
■人との縁を大事にし、義理堅いベトナム人を知る
タンくんはお店作りの為のビジネスパートナー。
でも、他愛のない話ができる飲み友達でもあった。
彼とのやりとりで出てくる「hihi」という言葉。日本で言う「www」的な感じでつかうベトナムのネットスラング。
仲の良いベトナム人に使う言葉だと聞き、私は嬉しがりのように「hihi」を使っていた。
タンくんは、いろんなレストランを教えてくれた。
その中で、ヤギ肉の焼き肉が印象的だったので紹介したい。
やぎ肉の焼き肉は初めてたべた。
肉がやわらかくて美味しい。
ベトナムでは店前の歩道で飲食ができる。
店内の席が空いていても、歩道にプラスチックテーブルと椅子を並べてワイワイ食べる。
ちょっとしたバーベキュー感を味わえ、開放的だ。
黒いポロシャツの男性がMinhさん(ミン)
その隣の女性はViViさん(ハイビー)
ゴック:私の恩人でサロンオープンを色々手伝ってくれている女性
ミン:ゴックの部下でハイビーの彼氏。タンを私に紹介
ハイビー:ゴックの部下でもうすぐ今の仕事を辞める(ミンと入れ替わる)
タン:ミンの友達。ゴックの代わりにサロンオープンを手伝ってもらう
私:ミンさんと、ハイビーさんは社内恋愛なんだね。
タン:うん、もともと付き合ってたんだ。ハイビ―が仕事を辞めるから後任に彼氏のミンを紹介したよ。
私:へえ、そうなんだ。自分の後任に彼氏を紹介するとは...。
タン:ベトナム人は、人との縁を大事にするよ。紹介する人は、自分が信用出来る人だけ。そのやり方なら問題も起こりにくいからね。
なるほど...。そういう考えもあるのか。
確かに、ゴックさんも部下(ミンさん)の友達を自分の後任にと私に紹介してくれた。
私:ハイビーさんは今の仕事はどうして辞めるの?
ハイビー:今の仕事は嫌いじゃないんです。でももっといい条件の仕事を見つけたから、辞めることにしました。
私:へぇー、なるほど。それは給料の条件がいいから?仕事の内容?
ハイビー:両方ですが、給料は今よりもっといいです。今の仕事の給料も悪くないし、ゴックさんにお世話になりましたから彼氏を紹介しました。
日本なら、自分が辞める会社の後任に、彼氏を紹介するのは考えにくい事だけど......。
話を聞くと「そうなのか」と納得した。
今回インプットしたこと
・ベトナム人にとって家族についての事柄はプライオリティが高い。
・日本で働いた経験のあるベトナム人との会話は安定感を感じる。
・べトナム人は、人との縁を大事にしている。
・ベトナム人は自分がやめる会社だけど、恩を感じてるから義理を通したいとき、信用出来る人を紹介する。
・仕事の内容や給料に不満が無くても、もっといい会社があれば移りたいという向上心を持っている。
・ヤギ肉の焼き肉はうめえ!
いままで日本でしか働いて来なかったけれど、きっかけがあって、今はベトナムにいる。
ベトナム人と交流すると、考え方の違いや、文化の違いを毎回発見するし、こういった交流をする経験って、自分にとってかけがえのないものだと感じた。
もっとほしい!
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