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#15乱雑な部屋に希望を感じた|ホーチミンの古アパート
■このマガジンについて
ベトナムにネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。
全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。
■グエン・フエ通りにある古アパート
ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。
このアパートに行き、ここの魅力にハマった私は「ここでネイルサロンをスタートさせたい!」と私の恩人でサロンオープンを色々手伝ってくれているNgocさん(ゴック)と一部屋ずつ空き部屋を探し回るが見つからず、途方に暮れた…。
諦めかけていた私達だったが、目の前にいたジュース売りのおばさんに声をかけたのがきっかけで、私達は空き物件を見せてもらえることになった!
ゴック:優子さん、あなたは本当に諦めない人ね(笑)
私:ははは。でも空いている部屋がやっぱりあったよ!諦めなくてよかった。
2人:ワクワク......
グエン・フエ通りは、一方通行の道路に挟まれた大きな歩行者天国があり、ホーチミン市博物館からサイゴン川まで800mほど続いている。
私たちがいるアパートはグエン・フエ通りを400mほど行ったあたりだ。
アパートの入り口は大型書店の左側。
私たちは、情報通のジュース売りのおばさんに挨拶をし、中に入った。
(政府からの通達により、現在、看板はすべて撤去されました)
私:xin chao Chi!(こんにちは姉さん) 昨日は本当にありがとう!
ジュース売りのおばさん:chao! Không có gì.(どういたしまして)
私:ゴックさん、おばさんにお金とかのお礼はしなくていいの?
ゴック:はい。小さなプレゼントだけで大丈夫です。彼女はお金がほしくて教えてくれたんじゃありません。ベトナム人は親切な人も多いですよ。
私:そうなんだ。ありがたいね。
ゴック:是非毎回、おばさんからジュースを買ってください。彼女はその方が喜びますよ。
私:そうか。そうだよね。私は毎回このおばさんからジュースを買うよ!
昨日は、空いている部屋がないか1フロアずつ階段で回った。
「今日は目的が決まっているのでエレベータで向かおう」
私が、エレベーター前に立っていると......
ゴックさんは気まずそうな顔で私にこう言った。
ゴック:優子さん、実は...。
私:ん?何。どうしたの?
ゴック:とても言いにくいんですが...。
エレベータに乗りたいなら3,000VND(約15円) 払わなければなりません。
私:えぇ?エレベータにお金いるの?初めてきいたんだけど。
ゴック:はい。このアパートのルールです。私も初めてです...。
周りを見ると、エレベータ前にはちゃんとお金を回収する人がいて、みんなお金を払っていた。
アパートのエレベータ料金の後日談
古いエレベータが壊れてしまったとき、一人の住人が全額お金を負担したそう。それで、みんなでフォローしあおうとお金を徴収しだしたそうだ。
でもこれが案外儲かっちゃって...。
いまだにこのアパートのエレベータは3000VNDをみんな払っているんだって...。(住人以外はお金が必要。店舗スタッフはエレベーターの年パスを利用している)
■乱雑な部屋に希望を感じる
エレベータを降り、私たちはジュース売りのおばさんに教えてもらった部屋へ向かった。
右側の一番奥がジュース売りのおばさんが紹介してくれた物件だ。
私:これ、左側は人が住んでるよね。右はどんなだろうね。
ゴック:はい。住んでいますね。さぁ行きましょう。見たらわかるよ!
ゴックさんは私の手を取り、部屋をノックした。
すると部屋の中から「どうぞ、入ってください」と声が聞こえ、ドアが開いたと共に、私は大きく息を吸った。
私は部屋を見た瞬間、動きがストップしてしまった。
なぜなら、お店なのかと思っていたら、完全に住まいだったからだ。
家主:この家は、父のものなんだけど、今は私たち若夫婦が住んでいるの。
ゴック:かわいい赤ちゃんですね。私も今6ヶ月の子供がいます。
家主:この家も子供がいる生活にはちょっと狭くって。この場所を借りてくれる人をさがしていたの。
なるほど。
確かに、赤ちゃんを育てるにはもう少し物を整理するスペースがほしいだろう。
収納する場所が無いために、赤ちゃんの遊具もお洋服も高く積まれている。
ホーチミン市のど真ん中に住まなくてもいいなら、ここを賃貸してもっと静かで広い場所に移り住んだほうが絶対いい。
最初は目の前の光景に固まってしまった私だったが、よくよく部屋を見回すと、お店にするにはとても良い部屋だった。
丁度いい部屋の広さ、そして3m以上ある高い天井。
壁、床、扉、トイレと全部改装する必要はあるが、ネイルの席は5席は配置できる。
それに、考えもしていなかったテラスだってある。
真下は大きなグエン・フエ通りだから、窓からの景色が開放的で
障害物が無いため、とても明るい。
私は日本からベトナムのお店を遠隔経営するのが大前提。
死角がない部屋の作りだから、角にカメラを設置すれば、お店が見渡せる。
【【【 なんて、素敵な部屋なんだ 】】】
それに、当時ホーチミンで一番高かったビテクスコビルが一望できる場所なんてそうそう見つからないよ。
ビテクスコ・フィナンシャルタワーとは
ベトナム・ホーチミン市の1区にある超高層ビル。
高さ265.5mの地上68階・地下3階で2010年に完成した。賃貸オフィスや会議場・商業施設・展望台・ヘリポートなどが置かれている。
2019年より高さ461.3mのランドマーク81が最高層記録を塗り替えた。
■さてさて、家賃は?
家主が紹介してくれたのは、お隣に住んでいるChau(チャウさん)
英語を話せるうえに、7階で広島焼きのレストランのマネージャーをしていた。
私/ゴック:はじめまして。チャウさん。
チャウ:はじめまして。この物件はわたしが仕切るからよろしく。
それで、どうする?ここ借りたいの?
私:全力でうなずく。
チャウ:ここの家賃は16,000,000VND(約80,000円)だよ。
私:よっしゃー予算内!!キタ―!!
共に一つの目標に向かって進んでいくと、目を合わせるだけで理解しあえるものだ。
私は、ゴックさんの目を見て「私ここにする!」と無言で訴えた。
ゴック:オーナーの優子はこの場所がとても気に入りました。
すぐにでも契約したいんです。
家主:まあ。嬉しいです。でもこの物件は私だけでは判断できません。
ひとまず夫と父に相談してみますね。
ゴック:では、キープということで、約束事を紙に書いてもいいですか?
ベトナムでネイルサロンを作ると決めてから半年経っていた。
見てきた物件は20を越える。
家主の家に挨拶に行くほど気に入ったのに諦めた事もあった。
契約し、4日後に解約したことだってある。
私たちが今まで経験した色々な経験と失敗を知識に変えて、今度は念書を交わすことにした。
しかし、ベッドをテーブル代わりにし、念書を書くことになるとは...
なかなか感慨深い。
念書に書いたこと
・キープ代として5,000,000VND(約25,000円)
・キープの約束を破ったら2倍の金額を保証
・私、ゴック、家主の娘、それぞれ直筆サイン
「今度こそ決まってください!」
そう願いを込めて私はいつもより丁寧にサインした。
ところでお隣に住んでいる、お好み焼き屋マネージャーのチャウさん。
仕切るって言ってたけどサインは書いてない。
なんのためにいたの?とゴックさんに聞くも「よくわかりません」だって。
なんだそれ(笑
まあ、もしかしたらご近所さんになるかもしれないし、仲良くしておこう。
今回インプットしたこと
・42グエン・フエ アパートのエレベータに乗るには3000vnd必要。
・店舗もあるが、ガチの住居のほうが多い。
・物件を見るのに、お隣さんも立ち会いに来ることがある(謎)
・口約束は☓。必ず紙に念書を書こう。
・不動産屋を通し20軒見たが、自分の足で回った物件が一番魅力的だった。
うまく行かない時は、やり方をガラリと変えるのも一つの方法だ。
さてさて、これからどうなることやら。
本当の家主(お父さん)とは来月に会う約束をしたが、私のベトナム出張は今日で終わり。
帰国後は撮影の仕事が詰まっているし、ベトナムの事業もまた一歩前に進んだ。
なかなかハードになってきたぞ!
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