#14ホーチミンの物件探し|ジュース売りのおばさんは情報通
■このマガジンについて
ベトナムにネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。
全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。
■出張に来たすぐの私に彼女は「息抜きしよう」と言った
物件契約がやっとできたのに、4日後に契約解除をした前回のベトナム出張。
モヤモヤしながら日本へ帰国したが、私はいても立ってもいられず......
2週間後にホーチミンに来ていた。
いつものように、タンソンニャット国際空港に到着したとたん、私の恩人でサロンオープンを色々手伝ってくれたNgocさん(ゴック)の元へ直行だ。
当時、私のベトナム語学力は、数字を1-10までなんとか言える程度。
(今もたいして変わらないが?)
そんな私が、ベトナムホーチミン市でネイルサロンを作ろうとしている。
お土産の「東京ばな奈」とカメラバッグを握りしめ、体当たりで向かう私を
彼女はどう感じていたのだろうか......。
猪突猛進の私を見て、「優子は、きっと何かに取り憑かれている」そう思っていたに違いない。
ゴックさんは、2週間ぶりに私を見るなり、こう言った。
優子さん、あなたは本当に熱心ですね。でも、ちょっと顔は疲れているよ。
明日は1区のあるところに遊びに行きましょう。
今は私も生まれた赤ちゃんのことばかり。少しrelaxしたいんです。
ええ!?私の出張予定はびっしりなのに遊びに行くって?
一旦はそう思ったが、「まあ、いいか。ゴックさんがそう言うなら」と私は彼女と遊びに行くことにした。
彼女は、行ってみたい場所があるらしい。
翌日私たちはホーチミン市のど真ん中に位置する1区へと向かった。
ホーチミン市1区とは
ベトナム国内で最も発展した地区がホーチミン市1区です。
ホーチミン旅行者向けのガイドブックに掲載される観光スポットの約8割は1区の情報で、観光名所、レストラン、ファッション...どれを見ても1区が経済の中心だとわかります。
■フランス領土時代につくられたホットな場所
私:どんなところだろう。せっかく行くなら思いっきり楽しみたいな。
ゴック:とても有名なところ。最近hotな場所だよ!
そして、私たちはNguyen Hue通り(グエン・フエ)に到着した。
Nguyen Hue通り(グエン・フエ)とは
銀行、デパート、商店、土産物店などが立ち並ぶエリアで、西山朝の二代目皇帝グエン・フエにちなんで1700年代後半に名付けられたそうです。
2本の通りの間にある歩行者天国には、7mを超えるホーチミン像。その後ろにはホーチミン人民委員会庁舎があり、観光客の記念撮影スポットです。またホーチミン在住の高校生や大学生も卒業シーズンになるとホーチミン像を背景にお祝いの記念写真を撮ります。
高級ブティックが並ぶDong koi通り(ドンコイ)は隣の筋。
しかし、ゴックさんが案内してくれたのは......
「なんでこんなに発展している通りに存在しているの?」と感じてしまうほど古びたアパートだった。
この古いアパートの1階には大型書店FAHASAがあり、アパートの入り口には色々なお店の看板がびっしり。
グエンフエ周辺は電線が地中に埋められていて、とてもスッキリしているはずなのに、このアパートだけどうも様子が違う。
たくさんの店舗が入っている為、電線がこんがらがって、ぐちゃぐちゃ。
火事が起こっても不思議じゃなさそうだ。
ゴック:このアパートはフランス領土時代からあります。
私:貫禄があるね。お店の看板もたくさん!
ゴック:今ベトナム人にとても人気の場所です。さあ、行きましょう!
■42グエンフエアパートを探索
10階建ての42グエンフエアパートにはレストラン、カフェ、洋服、アクセサリー、ショートステイホテルと色々なジャンルのお店がある。
ゴック:私は5階のnaunauに行きたいんです。
私:うんいいよ。何のお店?
ゴック:DIYスタジオです。母の為にプレゼントを作りたいの。
私:へぇー。DIYスタジオかぁ。何を作るのかな(ワクワク)
5階のエレベーターホールを降りたすぐの廊下には、naunauのデコレーションが目の前に広がる。
お店の外からでも、おしゃれな雰囲気が伝わってきた。
naunau D.I.Y studioはアロマオイルを自分で選びハンドソープ、香水、口紅が作れる。
メニューを見ながらさんざん悩み、私たちはハンドソープを作ることにした。
液体ソープに好みのアロマオイルを調合し、仕上げに色粉を入れて撹拌。
最後はボトルに好きなシールを貼ってデコレーションしたら完成!
自分で好きな香りや色を選び作るのはとても楽しかった。
私:へぇー。なかなか面白いお店だねー。
ゴック:はい。そうですね!今DIYが流行しています。
私:そうですか。私の教えているUVレジンのアクセサリーもみんな喜んでるもんね。
ゴック:はい。あなたのレッスンはとても人気です。
DIYは自分で作る体験が楽しい。
私もベトナム人に教えているレッスン(写真の撮り方・UVレジンのアクセサリー)は、ワクワクするような楽しい体験にしたいな。
ゴック:この店の隣はcafeがあります。naunauのオーナーが運営しています。見てみますか?
私:うん。行こう!
店内に入ると、ここちの良い開放感に包まれていた。
平日の午前中は、PCを持ち込んで仕事している人もいれば、友達とおしゃべりに夢中なグループと様々。
このアパートには多種多様なお店があり、各店のこだわりが詰まっている。
廊下をデコレーションしたり、壁に絵を描いたり。
照明器具もそれぞれにこだわりを感じられて、アパートを回るだけで面白い。
ベトナムの色々なものを見てきたつもりだったけど、まだまだだったワ。
紅茶専門店では若い女の子がお友達とおしゃべりを楽しんだり、ノマドワークしていたりと優雅な印象を受けた。
各店舗、テラスがあったり無かったり。
また、バルコニーの広さもまちまちだ。
カウンター、横一列に座り屋外を眺めるタイプのバルコニー↓
広めの面積があり、テーブルでおしゃべり出来るバルコニー↓
このアパートは住居用に作られた建物。
日本のアパートでは、隣の部屋のバルコニー面積に差があることはとてもめずらしいよね。
地震が日本に比べほとんど起きない国だから自由度が高いのかな?
(2004〜2018年間の地震数:ベトナム8回・日本4993回)
ジュース売りのおばさんは情報通
ふと時計を見ると2時間経っていた。
ゴック:どうですか?このアパート気に入りましたか?
私:うん!とっても面白いね!
ゴック:このアパートから小さく始めたお店が、だんだん有名になって、路面にお店を出すまでに成長したアパレルブランドもあります。
私:へぇ!すごいねー。
ゴック:このアパートは、サクセスストーリーをたくさん持っています。
ゴックさんの「サクセスストーリーが生まれるアパート」というフレーズにピーン!と来た私。
【 私もここでスタートを切りたい! 】
私:日本↔ベトナムの遠隔経営だけど、ここでやってみたい!アパートの一室を借りるにはどうしたらいいの?
ゴック:このアパートについて不動産屋は情報を持っていませんね。
このアパートは住むために作られています。ですから、みんなは各部屋の所有者と直接契約していると思います。
私:そうか。なるほど。じゃあもう一度、最上階から一部屋ずつ見に行ってみよう。何か情報があるかもしれない!
そうして、私たちは9階から全部の部屋を見て回った。
鉄扉が閉まっている部屋。中に誰もいなさそうな部屋。「電気代を払ってください」という張り紙が貼られた部屋。
空いていそうな雰囲気がある部屋はいくつかあるんだけれど...。
どの部屋にも連絡先が書いていない。
2階まで降りてきて「もう無いかもしれない。」と諦めかけた頃......
私たちは、所有者の電話番号が書いている張り紙を発見し早速電話をかけてみた。
ゴック:いきなりの連絡失礼します。グエンフエアパートの2階の部屋をお借りしたいのですが。
所有者:ああ。あれは売りたいんだ。1000万円でどうだい?
20平米ほどの広さしかない一室が1000万円。
私たちは金額を聞き「そりゃ無理だ!」と思った。
しかし、しぶとい私は、そんな事で諦めきれない。
私:ゴックさん、私はどうしてもここからスタートしたいんです。
どうにかして空き部屋を借りる方法はないかな。
ゴック:うーん。そうですね。とりあえずアパート入り口にいたジュースを売っているおばさんに聞いてみましょうか。
私:え?ジュースのおばさん。そんな人いたっけ?おばさんに聞いても意味あるの?(記憶にも残っていない)
ゴック:まあまあ優子さん、ここは私に任せて。
そして、ゴックさんはアパートの入り口でジュースを売っているおばさんに声をかけた。
ゴック:おばさん、このアパートでお店を出店したいんだけど空いている物件を知っていますか?
おばさん:うん。9階にちょうどいい物件があるよ。所有者に電話してあげる。
ゴック:おばさん、ありがとう!
でえええぇ?そんな簡単に見つかるの?
ついさっき、このアパート全部を回って何の情報も得られなかったのに!?
ジュース売りのおばさんは、すぐに所有者に電話をしてくれ、私たちは翌日に部屋を見れる事になった。
聞いても知らないだろうと思っていたジュース売りのおばさんが物件情報を知っているとは......
ジュース売りのおばさん恐るべし!
ベトナム人同士のネットワーク網の強さ
ベトナム人と交流する中で知ったことですが、ベトナム人は何かあればひとまず知人に相談することが多いです。困り事、宣伝などもまず知人に話をして「誰かいい人がいたら紹介してね」と知人ネットワークを利用しています。だから、一見情報を知らなさそうな物売りのおばさんが実はめちゃくちゃ情報通だったりします。
ゴックさんに「息抜きに行こう」と言われ、半ばしぶしぶ来た42グエンフエアパート。
彼女のおかげで濃い一日を過ごせた。
42グエンフエアパートでインプットしたこと
・1階に大型書店があり、文房具もたくさんある
・9階まで色々な店舗があり、どれもイケてる
・ベトナムのカルチャーを見て知ることができる
・ベトナム人の若い子だけでなく、観光客も多く訪れている
・このアパートからサクセスストーリーがたくさん生まれている
・お店もあるが、住人もたくさんいる
・住居用のアパートなので、賃貸は直接契約が必要(不動産情報無し)
・アパートの入り口でジュースを売っているおばさんは情報通
モヤモヤしていた気持ちもこのアパートに来たことでリフレッシュできたし、自分から「ここでお店を作りたい!」と思える物件に出会えた。
ゴックさんは私に必要なものを分かっていてここに連れてきたのではないかと未だに思っている。
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