慢性腰痛の理学療法
みなさま、お疲れ様です。
お久しぶりです。
このところ私的な研究が大詰めを迎えており、NOTEの更新がおろそかになってしまいました・・・
今日は慢性腰痛に関しての話をしていきたいと思います。
いきなりですが、皆さんは腰痛に悩んだ経験はありますか?
私はあります。
高校生のころから、ギックリ腰や慢性腰痛に悩まされています。
仕事中にぎっくり腰になったことも多々あり、同僚に多大な迷惑をかけたこともあります・・・
理学療法士という仕事柄はどちらかというと腰痛が出現しやすい職でもあると思いますし、同じような境遇になったことがある方も多いのでは?と思います。
腰痛と聞くと、なんとなく
姿勢が悪いからだ。
猫背を治さなきゃ。
と思ってしまいますよね。
私も理学療法士になり、知識をつけるまではそう思っていました。
ここからは、ひとまず今までの考え方は忘れましょう。
そもそも腰が痛くなる原因って何なのでしょう?
原因はたくさんあります。
例えば、圧迫骨折も腰部痛が主訴になりますよね。
しかし、多くの腰痛の場合、原因がはっきりとしないことが多く、これらの腰痛を非特異的腰痛と呼ぶことが多いです。
この非特異的腰痛に悩まされている方は、高齢者のみならず、若い人でも悩まれている方が多いです。
ここまでの話を聞いて、
「いやいや、脊柱管狭窄症とか椎間板ヘルニアとか、診断名付いてて腰痛ある人いるんだから、原因わかっているだろ。」
と思う人もいると思います。
しかし、腰痛の方に付けられていることが多い診断名である、脊柱管狭窄症などの疾患の主症状って腰痛でしたっけ?
これらの疾患の主症状って下肢の放散痛やしびれとかですよね。
非特異的腰痛の場合、ついている診断名が直接腰痛の原因になっているとは限らないことが多いです。
では、非特異的腰痛の原因ってなんだ?と調べてみると・・・
非常にありがたいことに、先人の先生方が研究や勉強の末、腰痛を原因別に区分してくださっています。
詳しく知りたい方は、腰痛 原因 分類 で検索したり、各種勉強会へ参加してみましょう。
その原因の中で、私の経験上
・椎間関節性疼痛
・筋、筋膜性疼痛
が多いように感じます。
今回は椎間関節性疼痛を見ていきましょう。
椎間関節は、上下の椎体を結ぶ関節です。
そこがどうなると痛みを出すのでしょうか?
結果としては、
動き過ぎている椎間関節が痛みを出します。
本来、脊柱は、1つ1つの椎間関節が、バランス良く動くことで、一部の関節にのみ大きな負荷をかけることなく、屈伸・側屈・回旋を高いレベルで行っています。
しかし、長時間の不良姿勢などによって、一部椎間関節の可動域が低下するとその分
代償的に可動性をあげなければならない関節が出てきます。
その関節が、長い期間動かされると関節付近で炎症が発生し
疼痛を出現させます。
なので、腰痛に対して
疼痛出現部位だけを治療していても、あまり効果が出なかったり
その場だけ良くなるだけといった不本意な結果になります。
なので、どのレベルの関節が動きが悪くて、どのレベルの関節が動き過ぎているかを評価しましょう。
私が良くやる評価は以下のものです。
そもそも椎間関節は伸展時の疼痛が出現することが多いため、立位で体幹伸展運動をしてもらいます。
この時、左右差のある疼痛を訴えることが判別のポイントです。
立位での評価でおおよそどのレベルの椎間関節の疼痛かわかったら
以下の評価を行ってみます。
伸展し過ぎると疼痛が出てくる椎間関節があるのならば、その椎間関節を動かないよう固定した状態で、伸展運動をさせてみると、本当にそのレベルの椎間関節の疼痛かどうかが判別できます。
また、臥位での評価をすることで、特定の椎間関節が可動し過ぎる原因を特定します。
側臥位で、椎間関節を触診しながら、股関節屈曲運動を反復します。
一般的に、純粋な股関節のみの屈曲角度は90°前後と言われており、それ以上の屈曲には必ず脊柱の後湾が伴うと言われています。
股関節屈曲90°を超えたときに、動きの大きい椎間関節と動きの小さな椎間関節を触診によって鑑別していきます。
これらの評価はごく一部だと思いますし、評価法も様々な方法があるので、各種勉強会で自分に1番合うもの、部位によって合うものを選択出来る様にしましょう。
私の経験上ですが、基本疼痛の出現部位の上下の関節が拘縮していることが多いです。
そのため、椎間関節性の疼痛の場合は、疼痛部位よりむしろその上下椎間関節の可動性を向上させるようなリラクゼーションやモビライゼーションを重点的に行います。
しかし、上下の関節ももっと上位や下位、股関節等の影響を受けていたりします。
例えば、長時間のデスクワークによる、頚椎伸展・胸椎屈曲位固定などがあります。
頚椎の影響で胸椎の動きが悪くなり、胸椎の動きを代償するために、腰椎がすごく動くようになり、腰痛が出現する。といったメカニズムで腰痛が出現する人が多いです。
特に、最近はリモートワークなどの導入で、デスクワークの時間が伸びたことなどもあり、こういった患者は増えるかもしれませんね。
この場合の治療としては、疼痛出現部位だけでなく、脊柱全体の可動域を改善することや不良姿勢の改善を目指していきましょう。
椎間関節性腰痛の解説は以上です。
筋筋膜性腰痛に関しては、次回にでも記事にします。
最後に、腰痛における話をすると必ず出てくるのが、
心因性の腰痛について
です。
理学療法士の国家試験でもこのような出題があったかと思います。
詳しくは忘れましたが
・非特異的腰痛の治療で最もエビデンスレベルが高いのは、認知行動療法である。
みたいな出題があったと思います。
これが実際の臨床上どうなのかについても少しだけ私的な意見を述べさせていただければと思います。
結果から言うと、エビデンスレベルは確かに高い。
しかし、それだけでは治らない。
というのが、私の意見です。
認知行動療法とは、
物の見方や考え方の修正によって行動の変容を図る療法
ですよね。
これを私が、腰痛患者に対して当てはめて考えると、
「腰が痛い」という点にフォーカスを当てるのではなく、「腰が痛いから長い時間立っていられない」などの腰痛の影響にフォーカスを当て、そこの改善に着目していく。
ようなイメージで解釈しています。
疼痛、特に慢性腰痛のように長い時間疼痛にさらされていると、疼痛の程度が本当は軽減していても、疼痛があるという点の改善まではいかないことが多いのではと考えています。
なので、考え方を
「疼痛をなくすこと」よりも「疼痛が軽減して行動にどう変化があるのか」を治療の基準にし、患者と共有していくことではないかと思います。
確かに、この認知行動療法によって
「腰が痛くて、座っていられない。そのせいで、友達とご飯食べに行ったり
家族と楽しくご飯食べる機会が減った。」
という患者が、
「腰はまだ少し痛いけど、前まで30分も座れなかったのが、今は3時間座れるから、飲み会にも行ける。」
となり、QOLの向上や腰痛の軽減・消失に繋がった例がいました。
結果出ているなら、ごちゃごちゃ機能訓練しないで認知行動療法でいいってこと?
という意見もあると思います。
しかし、前半で様々な先人の方々が研究の末に腰痛の原因を分類したとありました。
やはり、腰痛には機能的な原因があります。
心因性の要素が強い人でも、いきなり心因性腰痛のみが出現することはないと思います。
何か機能的な障害によって腰痛が出現し、その腰痛に長い時間さらされた結果、心因性の要素が出てくると思います。
前記の例でも、認知行動療法のみを行ったわけではなく、椎間関節等の評価・治療を行った上で、腰痛の経過だけを聞くのではなく
行動の経過まで聞くようにし、その回答に対して、
「以前は痛くて30分も座れなかったのに、今は痛みがありながらも2時間は安定して座れているのですね。」
と、行動に対してのフィードバックを行うようにしていました。
その結果、
「少し自信がついたから、今度飲み会に行ってみる。」
となり
「3時間座っていられて、久々に酔っぱらっちゃったよ。」
となりました。
なので、認知行動療法の前に、必ずあるであろう機能低下を治療する技術があっての認知行動療法だと思います。
心因性は要素の1つであって、腰痛のすべてではない
と私は思います。
そもそも、エビデンスレベルが表しているものとは
治療と結果の確実さを表しているだけで、これだけやっていれば治るというものではありません。
今の時代、Google先生が優秀すぎて、一般の方でも医療的なエビデンスを見たり読んだりできる時代です。
わたしの腰痛は心の問題なのでしょうか?と聞いてくる方も少なくありません。
こういった解釈が我々PTや医師などの医学的・医療的知見を持っている人でも難しいため、一般の方が調べて、このエビデンスが出てくるとこの字ずらのみに解釈が引っ張られてしますケースが多いです。
そこに、医学的な知見を持って答えられるかどうかもPTとして信頼される1つの要因だと思います。
世の中のPTの皆様の普段の忙しさも理解していますので
いっぱい勉強はしなくていいと思いますが、目の前の患者を治す・目の前の患者の不安を少しでも解くための勉強は仕事としてしなければと思います。
この記事や、日リハ塾というものの存在が少しでもその勉強の一助となるように、我々も精進してまいります。
次回は、筋筋膜性疼痛についての記事を書きます。
時期は8月中旬までには頑張ります。
よろしくお願いいたします。
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