慢性整形外科疾患の治療方針について2

みなさま、6月もお疲れさまでした。


もう一年の半分が終わってしまいましたね。



1年目のみなさんも徐々に仕事に慣れ、担当患者が増え、1人でリハビリに臨むことが増えてきたのではないでしょうか?

1人でリハビリに臨むのは、慣れるまで時間がかかると思いますし、私自身、1年目の時は、自信をもってリハビリに取り組めなかったことを覚えています。


そんな悩みを少しでも解決できるように記事を書いたりしていきたいのですが、ここ最近、用事が立て込んでおり、TwitterもNOTEも更新できませんでした。


更新頻度のばらつきについては、ご了承ください…





さて、前回は、肩関節周囲炎・拘縮肩・凍結肩の初期評価、評価の解釈、治療の進め方について軽く話しました。
 



今回は、


変形性膝関節症の初期評価、評価の解釈


について話していきます。
 



早速、いきましょう。


 
変形性膝関節症で、外来に通院される方の主症状は疼痛です。


疼痛についての評価は前回の記事を読んでいただければと思います。


 
前回の記事を読んでいただいた方なら薄々気付かれていると思いますが、慢性疾患の場合、疼痛の原因・原因となっている組織を明確にすることが必要です。


 
肩関節の場合は、その原因となる組織やそれに対する評価がかなり多いため、記事では割愛してしまいましたが、膝に関しては、理学療法を受けられる方が相当数いるので、少し解説していきます。
 



変形性膝関節症で疼痛が出ている場合、一体どの組織が疼痛を発しているのでしょうか?
 


 
変形性膝関節症は、慢性的なメカニカルストレスで、半月板や軟骨などの関節構成体を変形・変性させてしまう疾患です。
 


 
では、これらの変性した組織が痛みを出すのでしょうか?



 
正解はNoです。
 
 



半月板や軟骨には、疼痛刺激を受容する神経がほとんどないので、これらの組織が損傷を受けて疼痛を出すことはほぼありません。
 


しかし、ストレスに長期間晒されていたり、
非常に強い外傷で損傷を受けた場合、疼痛刺激を受容する

骨膜

にまで損傷が起きてしまうと炎症が起こり、関節構成体が原因で疼痛を出現させてしまうことがありますので注意を。


炎症由来の疼痛の場合の対応は、以前の記事で触れているので、参考に。




関節構成体の損傷が激しい場合、TKAや骨・軟骨移植術といった手術を行うことになります。
 



ただ、臨床上、外来で通院出来ていて、レントゲンにはそこまで変形は見られないが痛みがあるといった方は多いです。


 
こういった方はどこが痛みを出しているのでしょうか?


痛みは、前記したように、自由神経終末を代表とした、疼痛刺激を受容する神経を有する組織が主に出現させます。


 
膝関節でこの神経が豊富な組織は、
膝蓋下脂肪体(IFP)、関節包、大腿前脂肪体(PFP)などが挙げられます。


 
脂肪体の役割としては、膝蓋骨や大腿四頭筋の滑走を促したり、硬度の高い膝蓋骨と大腿骨の衝突を防ぐクッションのような作用があります。
 

 
本来、柔軟性に富んでいるはずのこれらの組織が、拘縮を起こしてしまうと、ストレスに対して、過敏な状態になります。


 
硬いクッションと柔らかいクッション、どっちが刺激を受けやすいかで考えると分かりやすいですね。
 


硬くなってしまった脂肪体は刺激を受けやすい。
その刺激を疼痛として受容する神経が豊富。



 
この2点から、膝関節で疼痛を受容しやすいのは、脂肪体と考えられるでしょう。
 


ここまでは、整形外科に関わったことのある理学療法士なら、比較的理解している方が多いかなと思います。
 
 
 
では、リハビリは、脂肪体の拘縮を取って終わりにして良いのでしょうか?
 



 
答えはNoです。



 
それは、脂肪体が拘縮する原因から考えてみましょう。
 


 
前記したように、脂肪体はクッションのような作用、形態をしています。

 
クッションは自然と硬くなるか?と言われると

そうは、なりませんよね。
 
 
圧縮ストレスや圧迫ストレス、摩擦ストレスが長時間続くと固くなっていってしまいます。


 
このストレスが膝関節にも起きていると考えて良いでしょう。


 
では、膝蓋下脂肪体に圧縮・圧迫ストレスをかけるメカニズムは何なのでしょう?
 
 

様々な原因がありますが、経験上最も多いのは、大腿直筋の過用が挙げられます。
 


直筋は大腿四頭筋の中でも、膝蓋骨を大腿骨に押し付ける方向への力が強いため、膝蓋骨を介して脂肪体へ圧縮・圧迫ストレスを生んでしまいます。


 

じゃあ、大腿直筋が原因なら、リラクゼーションしとけばいいか。



 
とは、ならないで欲しいです。
 


もちろん、直筋の過用によるものかどうかの評価として、リラクゼーションを促して疼痛がどうなるかは診る価値がありますが、


それだけを治療として採用しているのは、芳しくない状態です。


 


直筋が過用せざるを得ない状況がそこにはあるからです。
 


あくまで一例ですが、

・膝関節伸展制限による屈曲位荷重
・大腿四頭筋広筋群の筋力低下による代償
・股関節前方の支持性低下の代償
 


など、サクッと挙げるだけでも沢山の要因があります。


これは個人差もあるので、なぜ直筋が過用するのかという視点から、この人はどのような要因だろうかと考えられるようになると良いですね。
 


あとは、その要因に対しての治療を行って、疼痛がどう変化するかを判断する、トライアンドエラーを繰り返していくことで、治療の技術を磨いていきましょう。


 
個人的な意見ですが、


脂肪体の拘縮があり、そこが原因で疼痛を出している例の多くは、

膝の伸展制限・広筋群特に内側広筋の筋力低下があります。



膝の伸展制限の原因としては、膝蓋上嚢の拘縮、半膜様筋腱の滑走不全、大腿筋膜張筋の高緊張による腸脛靭帯の伸長性低下などがあります。


そこからまずは

可動域の改善

を目指していきましょう。

これはすべての関節に言えることですが、

関節可動域が改善することで、筋力が改善することがあります。
しかし、逆はありません。



内側広筋が最も働くのは、伸展最終域ですし、上記のことも考えれば、
そもそも伸展最終域まで可動域がなければ、内側広筋の筋力低下に対して治療なんて行えませんよね。

また、膝関節の伸展制限があることにも何らかの理由があります。


伸展していた方が荷重しやすいのに、わざわざ屈曲位で荷重しているのには、必ず訳があります。


例えば、

・脚長差などの器質的な問題

・他関節の伸展筋力の低下など

が挙げられます。


特に多いのは、股関節の機能不全を膝関節で代償している例が多いように感じます。


股関節の伸展制限や、伸展筋力低下によって、股関節で支えるべき荷重を膝関節で支持しようとすると、膝伸展位より屈曲位の方が、より膝関節での荷重応答ができるようになります。


そうなると、


変形性膝関節症で外来のリハビリ受けに来た人だけに、大腿直筋のマッサージだけ行っていいか?


と言われるとそうはなりませんよね。



私は、多くの場合、こういった思考で、患者の評価を行い、動作を確認しています。
 
 

膝関節の問題を抱えている方は、ものすごい数いると思います。

その中で、マッサージしかしない療法士を大量に見かけるのも事実です。


しかし、本当に膝関節の疼痛の原因などを考えるとそれは良いことではありません。


やる気の問題だけでなく、知識不足でもマッサージしかできない療法士になってしまう危険があります。

少なくともこの記事を読んだ方には、そんな療法士にはなってほしくありません。


効率よく知識を増やし、それをどんどん臨床に活かしていってほしいです。



有効に効率良く知識を増やしていくためにも、考え方を整理していけるといいでしょう。


 
今回の話はかなり基礎的な内容が多かったと思います。

ここから更に経験や勉強を積んで、発展させていっていただけると幸いです。


次回は、慢性整形外科疾患の治療方針についての最終話
「腰痛」
について話したいと思います。

更新時期は、7月下旬を予定しています。


よろしくお願いいたします。

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