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つわりの予防・対策【①原因編】

こんにちは、管理栄養士のにちです。
この記事ではつわりはなぜ起こるのか?を実体験と栄養学の観点・調べたことを交えつつ解説しています。

  • つわりがなぜ起こるのか知りたい

  • つわりの原因を知って対策をしていきたい

  • 妊娠悪阻など重症化のリスクを軽減出来たら嬉しい・・

そんな方には参考になるかもしれません。


多くの妊婦が悪阻を経験するが実態は・・

妊娠したら悪阻で寝込んだ。吐き気で仕事に行けない。匂いに敏感になった。嗜好が変わった。とにかく眠い。食べ続けていないと調子が悪くなる。

症状やその重さは違えど、ほとんどの妊婦さんが悪阻を経験すると言われています。しかし完全な原因の特定はできていないそうです。(母体や赤ちゃんに影響を与えるような研究は難しかったりしますよね・・)

つわりの原因

上記の事は前提にありますが、あきらめるのはまだ早い!
現時点で報告されているデータ・個人的な体験からつわりの原因となり得るケースをまとめていきます。

①ホルモンの影響

妊娠すると月経が止まる・胸が大きくなる・眠くなるなどなどホルモンに変化があるんだろうなあと体感として感じられるケースが多いですよね。

hCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)

変化するホルモンの1つとして、妊娠すると胎盤からhCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。妊娠の維持などに関わっているホルモンで、薬局で買える妊娠検査薬の測定にも使われています。

そしてこのhCGホルモンの値が高い妊婦は、悪阻の症状が強く現れる傾向があるとのこと。悪阻の重い・軽いはhCGの分泌量の差が大きいかもしれません。

hCGの分泌は妊娠5週頃から急激に増え続け、妊娠10週あたりでピークを迎えます。その後は減り続け20週あたりにはほぼ落ち着くと言われています。悪阻の症状もこのhCGの分泌量の変化通りに増減していくケースが多いようです。

エストロゲン

妊娠するとエストロゲンという女性ホルモンも上昇していきます。
特にhCGホルモン(ヒト絨毛ゴナドトロピン)の値が高い妊婦は、このエストロゲンの値も高く、つわり症状が重い傾向にあるそうです。

エストロゲンは妊娠していなくても、月経周期や閉経時期に合わせて変動するホルモンで、PMS・更年期(頭痛・吐き気・精神的不調・食欲の変化)などの不快な症状に関係していると言われています。
(ちなみに産後はエストロゲンが急激に減少(変動)するので、産後うつの原因にも。)

私自身、妊娠前にブライダルチェックもかねてホルモン検査を何度かしていたのですが、エストロゲンが高いかもと言われたことがありました。月経前に疲れやすくなる、頭痛がするという経験があり、つわり中もホルモン変動があったんだろうなあなんて思ったり。

プロゲステロン

妊娠すると妊娠を維持するプロゲステロン(黄体ホルモン)も上昇します。すると腸の動きが悪くなり、便秘やガスだまりなどの症状が現れ、吐き気などの悪阻症状を強める可能性も。

セロトニン

脳の興奮を抑えるような作用があり、一般的に幸せホルモンとも呼ばれるセロトニン。妊娠をすると増えるエストロゲンは、この脳内セロトニンの分泌を促進します。(※本当はホルモンではなく神経伝達物質ですが、エストロゲンと関連があるのでまとめてこちらに記載しています)

幸せ物質が増えるならいいじゃーん!と思いますが、セロトニンが過剰になりすぎると、吐き気や頭痛などの不調や嗅覚が敏感になる症状が現れてしまいます。

特に食べ物の中のアンモニアの香りに敏感に反応してしまう場合が多いとか。例としてアンモニア臭を感じやすい炊き立てのご飯の香り・出汁の香りが辛いと感じるケースやアンモニアの少ない果物やじゃがいも(ポテト)を好むようになったという話も珍しくないそうです。

普段アンモニアの香りなんて全く意識していないし、分からないですが・・・実際に妊娠したらやたら匂いに敏感になった。果物しか食べられなかったなんて方もいたりするのではないでしょうか。私も匂い悪阻が初期の頃にありキッチンに近づけませんでした。

甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンは骨や身体の新陳代謝を調節するホルモンですが、妊娠を維持する・胎児の成長にも大きく関わっています。

この甲状腺ホルモンの増加が悪阻に関係している可能性もあるそうです。
妊娠時に増加するhCGホルモン(ヒト絨毛ゴナドトロピン)は、甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを増加させる作用を持っています。このため妊娠初期には健康な方でも一時的に甲状腺機能が亢進⇒古い骨の破壊代謝が活発になる⇒血液中のカルシウム値が上昇(悪阻症状に関連)⇒悪阻症状が強く現れるのではないかと推測できるとのこと。


ホルモンの変動と不調については解明されていないところも多いようですが、私たちの日常的な不調・妊娠中の不調に大きく関わっていそうですよね・・・

他にも別の項目で後述しますが、血糖値調節に関わるホルモンなども悪阻と関連している可能性があるそうです。

②体内のミネラルバランスが乱れる

生きていくためには、マグネシウム・カルシウム、亜鉛・鉄などのミネラルと総称される栄養素が必須です。ミネラルは体内でそれぞれ役割を持っていて不足や過剰などバランスが崩れるとあらゆる不調に繋がってしまいます。

妊娠するとホルモン変動の影響や血液量の増加・胎児にもミネラルを含む栄養を送らなければいけないことなどから、ミネラルのバランスが崩れやすくなります。そして結果的に悪阻などの不調を引き起こす恐れがあると言われています。

具体的には下記の傾向があります。

妊娠すると・・・

  • 血液中のマグネシウム値が低下

    • ⇒疲労感・食欲不振・嘔吐・むくみ・頭痛・足がつる・血糖コントロール不良などの原因に。

  • 高カルシウム血症になりやすい

    • ⇒腸の運動が弱まる。胃液・膵液の分泌が増える。=吐き気や食欲不振・嘔吐・便秘・ガス貯まりなどの原因に。

  • 血液中のカリウム値が低下

    • ⇒腸の運動が弱まるため、低カルシウムと同様の症状に。他にも血液の浸透圧のバランスが崩れ、足がつる・動悸などの原因にも。

  • 血中ナトリウム値が低下

    • ⇒嘔吐や食欲不振の症状などで不足する場合あり。=体の中の浸透圧のバランスが崩れ、吐き気・嘔吐の原因に。低ナトリウム状態で真水をがぶ飲みすると余計に浸透圧が下がるため悪阻の悪化に影響する可能性も。

  • 塩素の不足(塩に含まれる)

    • ⇒塩素は体内で糖の分解に関わる酵素をサポート。不足すると糖(でんぷん)をうまく消化できない=ガスだまり・吐き気・食欲不振の原因に

補足|マグネシウムとカルシウムの関係

マグネシウムとカルシウムは体内では張り合い、お互いの効果を打ち消し合うように存在しており、カルシウム量が多すぎるとマグネシウムが不足する仕組みになっています。
日々の食事では意識しないと、カルシウムの摂取量に対して、マグネシウムの摂取量が不足しやすい傾向にあると言われています。
※妊娠中はカルシウムを多量摂取していなくても、生理的にカルシウム値が高い状態になるため、結果的に血中のマグネシウムが不足しやすくなると考えられています。

カルシウムを多く含む食品:乳製品・魚・大豆食品など
マグネシウムを多く含む食品:全粒穀物・ナッツ・海藻・大豆食品など

③血糖値変動

妊娠初期は空腹時の血糖値やインスリンという血糖値を調節するホルモンが、妊娠前よりも低下するケースが多いというデータがあります。

低血糖(血糖値が低い状態)になりやすく、吐き気、嘔吐、眠気、頭痛、動悸、めまい、眠気、不安感、イライラなどつわりの症状を感じる人が多いそうです。

低血糖になるケース

妊娠時は通常よりも低血糖になりやすいと言えますが、低血糖症状は妊娠時・非妊娠時、問わず下記の様な場合により起こりやすくなります。

1.空腹時

食べ物をエネルギーに変えて人間は生きていますが、そのエネルギーが不足した状態。お腹が空いて力がでない〜状態。

(※誰もが空腹時に低血糖になるわけではありません。空腹時は筋肉などを食事の代わりに分解してエネルギーに変える→低血糖になることを防ぐ機能が人間にはありますが、筋肉量が少ない女性は低血糖になりやすい

私も実際に妊娠初期の頃に長い時間食べずに過ごしていたら、ものすごい吐き気に襲われ…その時に自宅にあった血糖値測定器で血糖値を測ると、かなり血糖値が低かったです。

2.血糖値が大きく変動するような食事をしている

砂糖や白米・小麦粉などの血糖値を上げやすい精製糖質を摂る

血糖値が急激に上がる(高血糖状態)

血糖値を下げるホルモンが過剰に分泌される

結果的に、血糖値が下がりすぎてしまう

という血糖値がジェットコースターのように変動する血糖値スパイクが原因のケースもあります。

またこれはつわりの時だけの食事内容に限りません。
妊娠前から血糖値を大きく乱す食事を続けている場合、すでに血糖値をコントロールするホルモンが正常に働かなくなっている+すぐにはその機能は戻らない・低血糖になりやすい体質になってしまっている可能性が高いと考えられています。

砂糖やお菓子をよく食べる、白米・小麦粉などの精製された糖質中心、3食の食事量の差が大きいなどの食生活を日常的にしていた場合、血糖値変動による悪阻の症状が重くなってしまうかもしれません。

3.マグネシウム不足

※マグネシウムの不足について詳しくは上記の②体内のミネラルバランスが乱れるをご確認ください。

マグネシウムが不足すると血糖調節ホルモンであるインスリンがうまく働かなくなり、血糖値が上昇。その後、急降下。血糖値の変動による悪阻症状が現れる原因に。

4.ビタミンB6不足

ビタミンB6は血糖値を調節するインスリンの働きをサポートする役割を持っています。不足すればもちろん血糖値が不安定になってしまいます。

しかし妊娠すると増加するエストロゲンの代謝にもビタミンB6が使用されます。
エストロゲンの分泌が多い妊婦ほどビタミンB6が不足⇒ビタミンB6不足により血糖値の調節が不安定になる原因に。
※エストロゲンについて詳しくは①ホルモンの影響をご参照ください。

血糖コントロールがうまくいきにくい体質の場合、妊娠糖尿病になるリスクも高いと考えられているため、妊娠前からの身体作りやマグネシウムやビタミンB6などの栄養補給も大切ですね。

④ストレス

仕事や人間関係、妊娠出産への不安など人によってストレスを感じる事は異なると思いますが、ストレスは悪阻にも関係しているかもしれないそう。

ストレスが強いと、対抗しようとして身体のあらゆる栄養を必要以上に消費してしまいます。例として、悪阻を軽減する可能性があると考えられているマグネシウムを尿中に排出してしまうことも。

周りでも強いストレスを感じた後に悪阻が重くなる…重い仕事の後に吐き気が強くなる…夫と喧嘩した日は悪阻が重かった…という声を聞いていたので、やはりストレスと悪阻には関連があるかもしれません。お母さん、赤ちゃんのためにもストレスは少しでも減らしたいところですよね。。

ちなみに私も仕事に行くと悪阻が悪化していたので思い切って仕事を休職しました。それからは余計なストレスもなく、安定したかなあと。

⑤運動

意外かもしれませんが、軽い運動をすると悪阻が重くなる人が多い傾向にあるそうです。理由としては、散歩・ストレッチなどの軽い運動をすると、悪阻の軽減に効果を示す可能性がある『マグネシウム』が筋肉に取り込まれてしまい、血液中のマグネシウムが減少してしまうため(体内のミネラルバランスが乱れるため)と考えられています。

悪阻症状がある場合はなるべく安静にしている方が良いかもしれません。(補足ですが軽い運動ではなく激しい運動をすると、逆に筋肉中のマグネシウムが血中に移動するため、悪阻が落ち着くかもと推測されているそうです。妊娠中に激しい運動できるのかという所ですが・・・)

⑥自律神経

自律神経は意思とは関係なく働く神経のこと。『交感神経』と『副交感神経』が交互に働いて身体の機能(血圧・心拍・筋肉・発汗など)を調節しています。

交感神経:興奮や緊張モード
副交感神経:リラックスモード

血糖値の変動やストレスなど様々な刺激により自律神経は常に変動していますが、悪阻の症状が重い方ほど『副交感神経』が優位になっているそうです。
湯船に浸かってゆっくりする。温かいお茶でホッと一息するなどで、副交感神経(リラックス)モードになると悪阻の症状が重くなるケースもあるそうです。

私も副交感神経が優位だったのか、妊娠初期には異常に眠くなることがありました。あとお風呂に入って身体を温めると吐き気が増すので、お風呂が一番つらかったです・・・・・・・・・・

⑦味覚の変化

個人差が大きいため原因は解明できていない部分が多いようですが、妊娠したら好きなものが変わった…。食べられるものが日によって変わったという方も多いのではないでしょうか。私も嗜好が毎日変わり、大好きだった和食が大嫌いになるという(笑)悪阻の症状がありました。

きっとここまで解説してきたホルモンや血糖値、ストレスなど複雑に絡み合って嗜好が変化してしまうのかなあとなんとなく思いますが、、嗜好に変化があった場合は食べることができる食品を探していくしかなさそうですね。。

つわりの原因と対策|まとめ

私はつわりの原因について調べてみて「思ったより原因となるかもしれない要素が多く分かっているんだな。」と感じました。ただ耐えるだけしか方法がないと思い込んでいたので、研究して下さっている先生方には本当に感謝です。

まだ妊娠前の方はこれらの原因を知り、予め対策を練る。絶賛悪阻中の方は、重症化を防ぐヒントとしてつわりの原因を知って頂くと良いかもしれません。

①ホルモンの影響
⇒変化するホルモンの性質を知っておく。
妊娠前にブライダルチェックや、自覚症状がある場合は医師に相談をする。妊娠中でも気になることがあれば医師に確認する。

②ミネラルバランスの乱れ
⇒妊娠すると血中で減少するマグネシウム(大豆、穀物類、海藻、ナッツなど)・カリウム食品(果物、野菜、芋類など)を意識的に摂取する。妊娠前から補っておく。
逆に上昇しがちなカルシウム食品(乳製品など)の過剰摂取には注意する。
妊娠初期は極端な塩分制限には注意する。

③血糖値変動
⇒低血糖になるような状況を作らない!=空腹時間を避ける。血糖値が急激に上がる食品や食べ方に注意する。
マグネシウムやビタミンB6などの不足に注意する。

ストレス
⇒ストレス解消法を見つける。思い切ってストレス源から離れる。

運動
⇒悪阻症状がある場合、軽い運動は控えてみる。

⑥自律神経
⇒自律神経が乱れるストレスなどの刺激を避ける。悪阻症状が重い場合は、入浴など副交感神経が優位になる刺激を避ける。

⑦味覚の変化
⇒食べられるものを見つけていく。


さらに具体的なつわりの緩和方法・私がしてよかったこと、使用して良かったアイテムについてはまた次の記事にまとめておきたいと思います。

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※投稿内容はあくまでも参考程度にお願いします。栄養学に関する研究データをまとめたものであり、診断や治療を行うものではございません。必ず医師の指示に従ってください。


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