「自分自身で創作した物語に転生したんですけど」第1話

あらすじ

私、漫画家川島松陽は29歳のこの年に長年夢みていた自身の連載漫画がアニメ化されることになった。
そんなある日、アイデア出しのため散歩をしているとひったくりに遭遇し犯人を捕まえるも抵抗されその弾みで車道側に放り出され事故に遭った。
次に目が覚めた時には草原の上だった。
辺りを探索しているとモンスターに遭遇したが何故か既に知っている、というか俺が作ったモンスターじゃないか。
よく見たら全部知っている。もしかして自分の創作した物語に自分が転生してしまったってこと!!!
そのためか少し内容に綻びが出始めてきた。
こうなったら自分で修正し物語を完結させてやるぞ。

本文

待望のアニメ化、4月スタート。

テレビを見ながら色々思い出す。

松陽「ここまで大変だったなぁ、ついにアニメ化まで来たか…」

私の名前は川島松陽 29歳。高校1年生の時に応募した漫画が新人賞を取り注目を浴びる。高校を卒業を機に漫画家になるも中々ヒット作が生まれず25歳で所属していた出版社を解雇。でもそこから諦めず地道にネットに投稿していた。27歳の年にネットでバズりそのままとんとん拍子で書籍化、29歳でアニメ化までたどり着いた。

原作は現在も連載中のため今日も家で作業中。

松陽「う〜ん、このキャラクターは、あぁ〜ダメだ。このシーンと合わせられない。ボツボツ」

キャラクターが描かれてあった紙を避けて新しい紙を用意する。

こんなことザラにあること。

そして別の日も

松陽「う〜ん、ダメだ。思いつかない。散歩でもするか」

いつアイデアが降ってきてもいいようにボールペンとメモ用紙をポケットに入れて家を出た。

公園を歩きながらネタを練る。

松陽「あのシーンに…!」

ベンチに座ってメモを取り、思いついたネタを書きまくる。

松陽「よし、とりあえず何とかなるか。家に戻って原稿書くか」

メモとペンをポケットに入れて帰宅する。

車通りのある歩道を歩いていると

女性「きゃ〜誰か私のカバンが」

声のする方を見てみると女性が倒れてマスクとサングラス、帽子を深く被った人がカバンを持ってこっちに走ってくる。

松陽「うそ、マジで」

突然起こったこの場面。でも止めないと思って犯人に掴みかかる。

松陽「コラ、カバンをはなせ」

?「・・・」

揉めている中で何とか盗まれたカバンを掴む。

そして自分の方にカバンを力強く引き込む相手もまた力を入れて引き込む。

綱引き状態が続き、最大限の力で引き込んだその時。

パァッ

相手がカバンから手を離したからそのままの勢いで車道側へ体を飛んでいった。 

明かに時間がゆっくりに感じる。学校の椅子から落ちた時まさしくあれ。

犯人の顔が見えて帽子からはみ出る髪は銀色。

何最後に思ってるんだろう。目を瞑ろう。

川島松陽はこの世界からいなくなった。

松陽「温かい、気持ちいい風が吹いている。まるで草原の上で寝っ転がっている気分だ。きっとここは天国だな。よかった天国に来れて……」

ドスン

松陽「何か大きな物音がそして体に響く揺れは」

ドスン

あまりにも地響きが聞こえるので目を開けた。

松陽「てっきり青空が広がっていると思ったのだが、何かでっかい影が…」

上を見上げて見ると木のこん棒を持った巨大モンスターが立っていた。

松陽「ギ、ギ、ギガギガス」

ギガギガス「ウオォ〜〜」

松陽「やばい、仲間を呼ばれた。逃げないと」

急いで立ち上がり、森がある方角に逃げ込んだ。

松陽「ギガギガスの特徴は単純だからな目標を見失ったらすぐに諦める。森で隠れていたら間違いなく大丈夫」

ギガギガス「ブオォ〜」

帰っていくギガギガス。

松陽「とりあえず一安心だ。喉乾いたな。確かこの近くに泉があったはず」

そこに向かって歩き、泉を発見。水を飲んで喉を潤した。

松陽「あぁ〜うまい。運動した後の水ほど格別なものはないな。まさか最初に出会うのがギガギガスとは結構やばいねぇ。
……うん?ギガギガス?何で名前がスッと。俺死んだから天国に来てるはずだよな。どうしてギガギガスが、そしてこの森見たことあるような。泉にもすぐ行けたし……」

ガサッと茂みが揺れ可愛いリスのような動物が現れた。

松陽「なんだリストラだ。でも夜に合わなくて助かった。昼はリスのようなおとなしい性格だけど夜は性格が反対になって体の色が虎柄になり凶暴な性格に変化、人間も襲うから、昼まで良かったよ」

リストラが松陽に近づいて体に登り、そんなリストラを撫でる。

松陽「と言うことはマジか、ここは俺が作った世界だ!!!」

森に松陽の声が響いわたる。

驚いて鳥たちが空に向かって羽ばたいて行く。

事の重大さにようやく気づき驚く。

松陽「今のいつだこれって、ていうか今の自分は一体誰に」

泉に顔を映してみる。

松陽「これは…誰だ?」

自分が作った世界なのだから絶対に知っているはずでも思い出せないからとりあえず村まで歩いて考えることにした。

松陽「確かこの方向に歩いていけば一本の大きな木があるはず、そこで一旦休憩しよう」

無事一本木まで歩き、体を木に預ける。

木陰で涼しく心地の良い風が吹いている。

松陽「確かこの場所は主人公と天使の女の子が出会う場所なんだよなぁ、ここから冒険が始まるんだけどもう流石に出会って何処かにいるはず」

考えている中、いつの間にか目を閉じていた。

すると

?「%’&%$’$!&」

松陽「うん?何か聞こえたよう・・・」

ゴチン

何かが頭の上に落ちてきて気絶した。

?「#%&”&$&」

?「!%”$$%」

松陽「誰かの声が」

目を開け起き上がる赤髪の男と白髪の女の子がこちらを見ている。

スノウ「ぎゃ〜起きあがった」

フレイ「こっち見てるけど」

松陽 ”スノウとフレイがいる。考えたキャラクターが動いてる。感動するなぁ”

スノウ「あなた一体何者?」

松陽 ”何者って、この世界の創造神?でもそんなこと言えない”

沈黙して考えていると

フレイ「この人、記憶喪失じゃ、さっきスノウがぶつかったのって」

スノウ「ウソ!この人記憶がなくなったのって私のせい」

松陽 “ラッキーいい解釈してくれた”

松陽「スノウさんのせいじゃないですよ。それ以前から実は記憶わかってないですから」

スノウ「なら良かったけど、何か手掛かりになるもの持ってないの?」

服やズボンのポケットを調べると

松陽「ズボンのポッケに何かあるな」

出してみるとメモ帳とペンである。

フレイ「紙には何か書いてないのか」

メモ帳を開いて中を確認。

松陽「シュヴァルツ・フォール 男 謎の人物 重要 序こ 終ガ 秘…!」

フレイ「何か思い出したのか」

松陽 ”このメモはついさっき公園でアイデアを出したやつ。しかもキャラクターのデザインはなんとなくぼんやり頭の中で考えて、家に帰ってから描こうと思ったからピンとこなかったのか。今の自分はフォール。しかも俺の考えでは今この二人に出会うのは…”

スノウ「お〜い大丈夫?」

松陽「うん、大丈夫」

松陽  “ここはフォールになりきって”

松陽「今、記憶が戻りまして」

フレイ「急に!」

松陽「改めて私はシュヴァルツ・フォールです」

フレイ、スノウと握手する。

フォール「二人は知り合いですか」

スノウ「いや、今会ったばかりです」

フォール “出会う場面だ。これは好都合だ。本当は出会ってはいけないけど。ここは書き直しで上手くこの二人を仲間に持っていかなければ”

フレイ「フォールはどうしてここに、記憶がなくなった原因は?」

フォール “記憶がなくなった原因?そもそも記憶なくなってないし”

フォール「そ、そういえば二人のお名前をちゃんと聞いてなかったですね」

フレイ「確かに、改めて俺はテール・フレア。この近くの村生まれ、この村は温泉が名物で冒険者が癒しを求めてやってくる」

スノウ「そして私ははるか上空1万キロ先惑星ブランシュアから参りました。ブラン・スノウと申します。

フレイ「1万キロ!!!」

フォール”ここはとりあえず、一緒に驚いておく”

フレイ「スノウはどうして1万km先からここに?」

スノウ「まぁこれには深い事情があるのよ」

フォール「女神様が無くした純白の指輪を見つけて褒めて貰えるとポワポワ想像していたらその場所が立ち入り禁止エリアで穴が空いてそのまま落ちて来たんだよ」

スノウ「どうして知っているの?」

フォール ”やべぇつい口が滑った。何か言い訳を考えないと”

フォール「いや、今確信しました。僕は君達に会いに来たらしい」

フレイ「どういうことだ」

フォール「さっき記憶が戻った時にある事も思い出したのです。私は予言者です」

スノウ「予言者?」

フォール「ある時散歩をしていると、突然私の脳内にある予言が流れ込んで来たのです」

フォール「マーグン・サラスに向かう途中に一本木がありそこで休息を取っていると天から一番星が降ってきてその一番星を天に帰す旅が始まります。しかしその道中は困難の連続なため、仲間を集めなさい。特徴は赤髪赤爪の男。その男は何かに縛られているのでそれを解放してあげましょう」 

フレイ「天から一番星が降ってくるって」

スノウ「私のことね。一番星だって中々センスのあること言うわね。確かに私が一番輝いているからね」

フレイ「でもスノウのこと詳しく知っていたけどそれも予言?」

フォール “中々鋭いなフレイは、どうしようかなぁ…”

フォール「予言者兼占い師でもある」

スノウ「スゴ!フォール!スゴ!」

フォール「水晶で占ったら大体のことがわかったの。でもわかったのはそれだけであとのことはよくわかってないんだ」

スノウ「じゃあこれから旅を共にする仲間の詳細がわかってないわけね。唯一わかってることは赤髪赤爪の男」

フレイ「多分それ俺のことだわ」

フォール “よしよし良いぞ”

スノウ「確かに特徴は完璧だけど、何かに縛られているのってのはどういうことかしら」

フレイ「一度村に来てくれ、そこでわかる」

フォール “何とか物語が続くように出来たけどこれからどうしようかな?”

仮の仲間になった3人はフレイの住む村マーグン・サラスに向かうのであった。

旅の疲れを癒す村マーグン・サラス。

フォール”ここがマーグン・サラス。至る所から温泉の蒸気が噴き出している。村の中心には象徴の湯畑が聳え立ち、疲れを癒しに訪れた様々な人たちが賑わっている”

スノウ「ほぇ〜いろんなところから煙が」

ポォ〜

スノウ「うわぁビックリした」

フレイ「この村は温泉で生計を立てているからなぁ、外観も派手に演出しているんだよ」

フォール「よく出来てるなぁ〜感心するぜ全く」

フレイ「そんなに喜んでくれるとこっちも鼻が高いぜ。じゃあ行くかオレんちに」

フレイ「ただいま」

フレア「あんた、どこ道草食ってたのよ。この忙しい時に、あらまぁお客さん?」

スノウ「こんにちは」

フレイ「さっき会ったばかりだけど興味深い人達だから連れてきた」

フレア「そうなの、じゃあゆっくりしていってね。フレイあんたはこっちを手伝って」

フォール「じゃあとりあえず二人で周辺でもブラブラしますか」

スノウ「そうね」

一旦フレイとは別れ村の中を探索する。

スノウ「フォールはどこの生まれなの」

フォール「えっ!」

”このキャラの深掘りまだ出来てないからそんなの知らないよ”

フォール「実はよく分かっていなんだ。自分がいつどこで生まれたのか」

スノウ「そうなの」

フォール「両親は私が生まれて数日後には亡くなったらしい。そこからは母の友人が私を引き取ってくれてだから正直両親の顔も覚えていなんだ」

スノウ「ごめんなさい、余計な事聞いちゃったわね」

フォール「いや、全然大丈夫だよ」

“何とか誤魔化せたけど、重めな設定を付けてしまったな”

フォール「そろそろフレイのところに戻りますか」

スノウ「そうね」

戻ってフレイを探す。

スノウ「フレイ〜フレイ〜もうお手伝い終わった?」

大浴場を覗いてみると

フレイ「ハァ〜こんな湯を沸かすだけの人生じゃなくて冒険がしたいなぁ」

水の入った浴槽に手を付けて唱える。

フレイ「モデパラ」

ただの水から湯気が出てお湯になった。

フレイ「これで全部かなっ!い、いつから見てた?」

スノウ「えっと手を付けて水を見事にお湯に変えているところ」

フレイ「うわ〜最悪だ」

フレイの部屋に移動する。

スノウ「ギャハハハ、まさか36度から42度の適温を放出する能力ですって、面白すぎてお腹痛くなってきた」

フレイ「笑うないよ、これでも結構便利な能力なんだぜ」

スノウ「ごめん、ごめん。でもその能力じゃ冒険者になるには厳し過ぎない」

フレイ「それなんだよなぁ〜〜〜ハァ〜〜〜そのせいで母ちゃんには全然認めてもらえなくて今に至るわけ」

フォール「まぁそんなに気を落とさなくても」

フレイ「そうだような、だってフォールの予言には俺が仲間になるってつまり一緒に冒険に出るってことだろ」

スノウ「確かに!でもその予言本当に当たってるの〜」

フォール「いや〜間違いないと思うけど…ハハハ」
“仲間になるのは間違いないけど言えないだろこの場では今後の展開を考えて”

フレイ「もうちょっと自信を持ってくれよ」

フォール「そういえばフレイ、君の右手に描かれているその竜は」

フレイ「あぁこれねぇ、生まれてすぐに母ちゃんが俺のことを守ってくれますようにって願いを込めて入れてくれた竜の紋章。実は父ちゃんが俺が生まれてくる前に事故で亡くなってその時に父ちゃんの手にも竜の紋章があったらしいんだけどね」

スノウ「お父さんの意思も継いでいるのね」

フレイ「まぁそんな大袈裟な事じゃないけど、そんなことは今はどうでも良くて何とか母ちゃんを納得させないと一緒に旅をすることが出来ないじゃないか、そこでだ。二人とも耳かして」

スノウ・フォール『ムリだなぁこりゃ〜』

今日は温泉に浸かり泊めてもらうことにした。

そして次の日。

フレア「3人ともおはよう」

フレイ「母ちゃん、俺冒険をしてくるよ」

フレア「な〜にバカなことを言ってるんだい」

フォール「本当です。彼を誘ったのです」

フレア「フレイのどこを見て〜」

スノウ「実は彼に会う前にスノフーユに二人とも氷漬けにされて身動きが取れなくなった時にフレイの能力で溶かしてもらって」

フォール「硬いぞ言い方」

フレア「そんなウソバレバレ。フレイいつまでもそんなこと言ってないで早くお湯沸かしな」

フレイ「ち、ちくしょう!!!」

スノウ「あ、ちょっとフレイ」

フレア「ありがとうね、付き合ってくれて」

フォール「いえ、そうゆうわけでは」

フレア「全く誰に似たんだろうかね」

フレアが遠くを見つめる。

『$&%(‘%&$&』

スノウ「外が騒がしいわね」

村の外から誰かが何か言いながら走ってこちらの方に向かってくる。

何事だとみんな家の中から出てきて外を確認する。

フォール「…これか!」

スノウ「これかって何?」

フォール “ヤベ、つい口から”

フォール「そんなことより、走ってくる人の後ろを見てください」

スノウ「後ろ?・・・うん?土煙に隠れて何か大きなシルエットが…!」

フレア「ファイヤードラゴン」

ファイヤードラゴン「ギュュュュギャーーーー」

フォール「ファイヤードラゴンってこの時期子育ての最中だったような」

スノウ「あれを見て前に走っている男2人、卵持ってるわ」

フォール「それが原因、卵はドラゴンが眠っている時か餌を求めていなくなった時にしか取ってはいけないんだ。でもあの様子じゃ」

ドラゴンに追われている二人の男

兄貴「ヤバイ、ヤバイ。どうしてこんなことにぃぃ」

子分「兄貴、俺たちどうなるんですかね」

兄貴「そんなことぉぉぉ、後で考えろろろ」

ファイヤードラゴン「ギュュュュギャーーーー」

ドン

『ひえぇぇ〜〜〜』

フレイの部屋

フレイ「はぁ〜またダメたった。どうすればいいやら…うん?そういえばさっきから外から声が…ファ、ファイヤードラゴンだ」

スノウ「あの二人もしかしてこっちの方に向かって来てない?」

窓から顔出したフレイ。

フレイ「みんな早く逃げろ!!!」

村にいる人たちは逃げていった。

フォール ”どうして部屋に?飛び出してきてみんな逃げろにしてたはずなのに。ちょっとずつ自分というバグが生まれたせいで内容が変更されていっている”

フレイ「卵持ってるから追いかけられてるんだ。早く卵を捨てないと」

子分「兄貴、卵、卵を早く」

兄貴「クソ、レアアイテムだったのに、ほらよ」

卵が宙に投げられフレイ達の前に落ちた。

ドォーン

スノウ「バカ〜なんで私達の目の前に飛ばしてんのよ」

フォール「でもドラゴンが止まったよ」

フレイ店の外に出てくる。

フレイ「いや、様子がおかしくないか」

ドラゴンは上体を逸らして鼻から息を吸い込んでいる。

フォール「ちょっと、あの体勢は間違いなく炎の・・・」

フレイ「ブレスだ!」

フォール ”OK!言わせたぞ。これでフレイが行動を起こせば”

フォール「どうする、ここままだと」

フレイ「俺が守ってやるよ、安心しな」

フレア「フレイ、馬鹿なこと、アンタも早く逃げるわよ」

フレイ「前に言ってたもんな冒険者になるならファイヤードラゴンの炎ぐらいへっちゃらじゃないとダメだって」

フレア「それはアンタに諦めて欲しくてだから」

フレイ「諦めきれなかった、だから今証明してみせる。ごめん心配かけさせてでも大丈夫だよ。フォール、スノウ、母ちゃんを守ってあげて」

フレア「このまま見過ごせるわけないでしょ」

近寄るフレイを止める。

フォール「ここはフレイに任せましょう」

フレア「どうしてそんなこと言えるの、あの子にブレスを受けられるほどの力なんて持っていない」

フォール「フレイならきっと大丈夫ですよ、いや絶対に大丈夫。何故なら私達の仲間になるわけですから」

フレイ「任せとけ。そして一緒に冒険に行こう」

フォール ”とりあえずフレイの覚悟を確認、だがちとドラゴンの距離が近すぎる。本当はフレイのところまでぐらいブレスなのだがこのままだと間違いなく後ろの店は吹き飛んでしまう。これでは後々面倒なことに…なんとかするにしてもスノウの能力ではどうにも出来ないし、そういえば自分は何の能力って一体”

スノウ「フォール、フォールってば!!!」

フォール「おうわぁ」

驚いた拍子にメモ用紙とペンを落とす。

スノウ「何ボサっとしてるのよ、早くここから立ち去るわよ」

落ちたメモ用紙とペンをじっと見つめる。

フォール「能力…これしかないだろ」

メモ用紙とペンを拾い上げる。

フォール「間に合わない2人ともオレの側に早く急げ」

ドラゴン「ブオォォォォォーーーー」

フレイ「キタ」

手を前に出して構える。

フォール「よし、逃げなかったな。こっちは任せておけ」

ペンを掴んでメモ用紙に高速で書き込む

スノウ「もうダメだ〜〜〜いや〜〜〜」

フレア「フレイーーーーー」

フォール「生まれろ、新たなる創造物」

炎のブレスは一瞬で私たちのいる場所まで到達し、大爆発した。

爆煙が立ち込めている。

スノウ「うぅっ…ハッ、私生きてるのよね」

フォール「あぁ、このガブリエルの盾によってな」

目の前にはとてつもなく立派な盾が立っていた。

スノウ「大きくて美しい盾…見惚れちゃうわ」

フレア「そんなことより、フレイは」

急いでフレイがいた場所に駆け寄る。

土煙が立ち込める中、一つのシルエットが見えた。

フレイ「ゴホォン、ゴホォン。風が舞ったせいで土が口の中に」

フレア「フレイ…よかった、本当に良かった」

フレイに抱きついて泣いている。

フレイ「みんな見てるよ、恥ずかしい。  ごめんなさい心配かけて」

その2人の様子をフォールとスノウは静かに見ている。

フォール ”ふぅ〜何とかなったなぁ。それにしても賭けだった。自分の能力を発見出来なかったら終わってた。それにしても我ながらチート級の能力を手に入れてしまった。こりゃ色々書き直さなとダメだな”

スノウ「フォールあんたとんでもない能力隠してたのね。だったら最初からあんなドラゴン一捻り出来たんじゃないの」

フォール「それじゃ、ダメじゃないか主役が廃れる」

フレイは親指を立てこちらに向けた。

スノウ「それもそうね」

2人もそれに応答した。

ファイヤードラゴン「ギュュュュギャーーーー」

ブレスが失敗したことでこちらに突進してきた。

フレイ「ウソ、またピンチなんですけど」

スノウがドラゴンの目の前に現れ手をかざす。

スノウ「怒りを鎮めよファイヤードラゴン。あなたの衝動を抑制します。そして速やかに卵を持って自分の巣へ立ち去りなさい」

ファイヤードラゴン「プウォ〜ン」

帰っていくファイヤードラゴン。

スノウ「みんなもう大丈夫安心して」

フォール「おぉ〜これがスノウの能力」

静まっていた村が歓喜と歓声に変わった。

フレイ「いや〜照れちゃうな大したことなかったけど…あれ」

村人たちはみんなスノウに集まった。

スノウ「えっへん、私凄いですから」

フレイ「ガ〜ン、みんなスノウの方に」

フォール「まぁいいじゃないですか、被害も出なかったし」

フレイ「それもそうだな、家が守れたし」

スノウを見ながら安堵する。

スノウ「もう全然、まぁ私ぐらいになればこんなのちょちょいのちょぃ…!」
“ただならぬ気配を感じる、それはそれは嫌な者ね”

?「これはこれは背中がガラ空きですぞ」

スノウ「アンタ何者?」

?「私は魔王の忠実な家来であります。グリルと申します」

スノウ「どうしてアンタが今ここにいるわけ」

グリル「簡潔に申し上げますと、我々は忌まわしき封印から解放され復活したのです」

スノウ「!!!」

グリル「しかしながら我らが王は今も眠っておられる。そこで我らはこの星に潜伏し魔王の力の源を回収するのです。そして熟成されたこの力を持って今度こそあなたの星を支配して見せる。話は以上でございます」

スノウ「ちょっと待ちなさい、あなた達はいつからこの星にいるのよ。熟成って何のことよ」

振り返ると奴の忌まわしき気配はなくなってフレイが立っていた。

スノウ「ねぇ、今さっき私の後ろに誰かいなかった?」

フレイ「いや、誰もいなかったけど、一人でボ〜と突っ立っていたから」

スノウ「それならいいんだけど」

フォール “あれは魔王幹部のグリル、とりあえず次の目的には順調に進めそうだ。こっからだな大変な旅になるのは”

村はいつもの状態に戻った。

フレイの部屋

スノウ「明日にもこの村を出るわよ」

フレイ「急にどうしたんだ」

スノウ「魔王の手先がどうやらこの星に潜伏したらしいの」

フレイ「本当なのか」

スノウ「えぇ、間違いなく」

フレイ「そして今日起きた不可解なドラゴン」

フォール「さっきの2人に聞いたんだ、そしたらしっかり手順通りに卵を手に入れたとさ」

スノウ「操られていたで間違いないわね。一刻も早く女神様に連絡を取らなくては」

フレイ「どうやって」

スノウ「女神像」

フレイ「女神像?知らないそれはどこに」

ガラガラ

フレア「それなら冒険者が必ず訪れる始まりの町、アシオン。そこにいけばあるわ」

フレイ「母ちゃん!」

フレア「二人にお礼を言おうと思ったら聞こえてきたんだよ」

フレイ「何で知ってるんだよ」

フレア「あんたより、無駄に長く生きてないのよ」

フレイ「母ちゃん俺、一緒に行きた」

フレア「行きなさい、あなたを必要としている人がいる以上止めるわけにはいかないでしょ、スノウちゃん、フォールさん、フレイのことよろしくお願いします」

フレイ「母ちゃん…よ〜し早速アシオンに向けて出発するか」

フレア「ちょっと待ちなさい、あんたにやってほしいことがあるのよ」

フレイ「やってほしいこと?」

風呂場
「こ、この量の石は…」

そこには大量に積まれた石

フレア「あんたがいなくなったら誰がお湯を沸かすのよ。だからこの魔力石にフレイの能力を閉じ込め、使いたい時に割ればあっという間にお湯が沸くってわけ」

スノウ「こんな便利なものがあるなんて」

フレイ「わかったけど、何個?」

フレア「6000個」

フレイ「6000個!!!」

フレア「いつ帰ってくるかわからないし、魔力石の効果って1日しか持たないしね、いいからやる」

フレイ「わかったよ、どりゃあーーーー」

フォール ”5000個にしてたはずなのに…”

30分後

フレイ「ゼハ、ゼハ、終わったぞ」

フレア「はい、お疲れ様」

スノウ「フレイ凄いわね、あっという間に片付けちゃってさ、かなり魔力を消費したんじゃない」

フォール「今日は休んで明日出発にするか」

フレア「何言ってる、フォール。俺は全然問題ないよ、早速行こうぜ」

フォール「でも、かなり消費したと思うけど」

スノウ「本人が問題ないって言ってるし、早速アシオンに出発するわよ」

三人『おぉ〜〜〜』

村の入り口
フレイ「じゃあ、行ってくるよ」

フレア「あんまり二人に迷惑かけるんじゃないよ」

フレイ「分かってるよ」

笑顔で旅立ったフレイ達を見送るフレア

フレア「フレイ、あんまり無茶しないでよ…」

フォール ”ハァ〜何とかフレアを手順通り連れ出すことは出来た。多少強引なところもあったけど、まぁ楽しく行きますか”

一同は始まりの町アシオンに向けて旅立ったのである。


第2話

第3話


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