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雑誌の未来に奇跡を起こす。  <その1> nice things.の誌名はこうして決まった

2014年の大晦日、新雑誌のタイトルを部屋にこもり一人探し求めていました。それまでにいろんな人からアイディアを出してもらい、アメリカ在住の何人かの知人にも出してもらってましたがピンとくるものがなく、また気になるものがあっても商標登録がされていたりしました。日本語の雑誌だけれども世界に通じればという考えもあって、英語のタイトルにするというのは決めていたのです。家族が紅白歌合戦をテレビ観戦しているなかで、除夜の鐘が響き渡るころにも、英和辞書の一語一句に目を通して、何度も後戻りしながらタイトルとなる言葉を探してました。
雑誌のタイトルは、概ね「ひびき」が優先されます。特に女性誌はそうです。でも、この雑誌は「ひびき」よりも「意味合い」を大切にしたかったのです。
明けて2015年の元日を迎えてもなお、しっくりくるものが浮かびませんでした。それからは単語だけでなくて熟語も視野に入れて、気になった文章も書き留めていきました。でも、これは、というものがなくて頭を抱えながら何度もメモしていたものを見返してみると、気になった文がありました。
Good life with nice things.

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nice things.=いいもの。
「いいもの」ってなんだろう?
「もの」か、と思いながら「もの」について考えを巡らしていきます。「もの」はあまりにも身近な存在で、それまでじっくりと考えたことはありませんでした。「もの」には有形のものと無形のものがあります。そしてまた、有形と無形、両方を備える場合があります。例えば、おじいちゃんが使っていた椅子、おばあちゃんが使っていた湯呑み、どちらも形ある有形のものです。でもその有形なものに、思い出や記憶、懐かしいものをその人が感じるとするなら無形のものがあるということです。
あらためて「もの」について考えてみると、その奥行きの深さが感じられました。「もの」は生活の道具であり、何かと何かを結びつけるものでもあり、地域や時代を映す文化でもあります。
niceについては、想いを持って作られたもの、大切にしたいもの、丁寧に作られたものに、「それ“いい”よね」っていう共感としての位置付けで解釈しました。長い時間を費やしてようやくnice things.にタイトルを決めて、2015年の2月にnice things.最初の号が発刊になりました。

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ただスタート当初は今のようにnice things.のスタイルが確立していたわけではではありませんでした。その時点では言葉の選びも、企画や特集の打ち出しも従来ある雑誌とたいして変わりはありませんでした。創刊当初、基盤にしていたのは「食」で、数号は食に関わる巻頭特集にしていました。この時は、まだ人に焦点を当てきれていませんでした。しかし、号を重ねるなかでnice things.がタイトルというだけではなく、媒体のコンセプトと伝え方につながっていくことになります。

nice things.編集長 谷合 貢

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