琥珀

何かと生きづらい世の中なので、現実逃避の自己満です。書き終えている物を載せていきます。…

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何かと生きづらい世の中なので、現実逃避の自己満です。書き終えている物を載せていきます。 書き直して再度投稿しました。 よろしくお願いしますm(_ _)m

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空が夕闇に変わる頃【第1章】

始まり 幼い頃から、"変人"というレッテルを貼られる事が多かった。 いつも何処か変な所を見ている。独り言が多い。突然泣き出す。突然笑い出す。 そんなわたしを両親は不安に思い、いわゆる"先生"のところへ連れて行かれたこともある。 それはある程度成長するまで、数回あった。 でも、診断結果は至って正常だ。 医者の質問には的確に答え、読み書き、計算、運動能力だって、そこら辺の子供よりは長けていたと思う。 自分が他の子と違うと気づいてからは、それも無くなった。 あえて"見えな

    • 空が夕闇に変わる頃【第22章】

      喋るコウモリ 出勤したわたしは、更衣室で春香を見るなり後ろから抱きついた。 「わっ!ちょっと・・・イキナリ何!」 「・・・生きて帰ってきたよ、わたし」 「・・・何処から?」 「・・・死の世界?」 「全然意味がわかんないんだけど。てか離れて、着替えが出来ない」 「あい」 「アンタ、この前も変な事言ってたけど大丈夫?」 「うん、解決した」 「法事って嘘でしょ」 「・・・なんで?」 「いや、なんとなく。今ので確信したわ。わかりやす」 「・・・ちょっとね、い

      • 【長編恋愛小説】空が夕闇に変わる頃

        【第1章】 始まり 幼い頃から、"変人"というレッテルを貼られる事が多かった。 いつも何処か変な所を見ている。独り言が多い。突然泣き出す。突然笑い出す。 そんなわたしを両親は不安に思い、いわゆる"先生"のところへ連れて行かれたこともある。 それはある程度成長するまで、数回あった。 でも、診断結果は至って正常だ。 医者の質問には的確に答え、読み書き、計算、運動能力だって、そこら辺の子供よりは長けていたと思う。 自分が他の子と違うと気づいてからは、それも無くなった。 あ

        • 空が夕闇に変わる頃【第21章】

          黎明 午前8時30分 ─。 いつもより早く起きたわたしは清々しい気持ちでカーテンを開けたが、空はどんよりと灰色の雲に覆われていた。 昨日まで晴天が続いていたのに、決意した日に限ってこんな天気とは。まあ、決意といってもランニング程度の話だが。 最近は鬼火の怪我から始まり、泳斗くんや春香の事もあって心身共に疲れていた。だから走る気になれなかった。そうやって自分への言い訳はしっかり成立していたのに、──空舞さんめ。 "あなた、最近走らないわね。怪我も治っているのになぜ?それに

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        空が夕闇に変わる頃【第1章】

          空が夕闇に変わる頃【第20章】

          突撃、お宅訪問? クロエは最後、もう会えないであろう最愛の夫の頬に触れ、言った。 "愛してるわ。永遠に。娘たちの事、お願いね" そして、神々しい光に包まれ天へと昇って行く。夫のダンは泣きながらも笑顔は絶やさず、姿が消える最後の瞬間まで、妻から目を離さなかった。 「うっ・・・ぅう・・・ぐっ・・・」 シュシュッと高速で箱から抜いたティッシュが目の前に差し出された。黒く鋭いクチバシからそれを抜き取り、涙を拭いた。 「その前に鼻水を拭いたら?口に入ってるわよ」 もはや涙なの

          空が夕闇に変わる頃【第20章】

          空が夕闇に変わる頃【第19章】

          わたしの代わり 鏡に映る自分に、わたしは何度も言い聞かせた。大丈夫、お前なら出来る。ちゃんと、伝えられると。 部屋の時計を見ると、さっき確認してから15分も経っていない。家を出るまではあと2時間。わたしはソファーから立ち上がり、洗面所へ向かった。 洗面所の鏡でも、自分に向かって唱える。 大丈夫、お前なら出来る。 そして、メイクポーチからマスカラを取り出しまつ毛に乗せる。これはあくまで気合を入れる為のもので、今日は4回ほど重ね塗りをしている。リビングと洗面所を往復するた

          空が夕闇に変わる頃【第19章】

          空が夕闇に変わる頃【第18章】

          さらけ出す勇気 本日、月曜日、16時15分─。 イタリアン酒場TATSUは定休日。 わたし中条雪音は、自宅の全身ミラーで1人ファッションショーを開催中である。 というのも、ネットショッピングで購入した洋服が先ほど届いたからだ。 白い薄手のニットが1つに、黒いタートルネックのオーバーサイズニット。おまけに黒いニット帽も1つ。 全部着用してみたが、今回はハズレが無いようだ。2回連続で失敗してからネットショッピングは避けていたが、3度目の正直となった。 とくにこのオーバーサイ

          空が夕闇に変わる頃【第18章】

          空が夕闇に変わる頃【第17章】

          変化 「雪音さん、なんでマスクしてるんすか?」 「ん、ちょっと顔がね・・・」 「顔が?あれ、なんか、でこ赤い?」 マスクをずらして醜い顔面を披露すると、一真くんはポカーンと口を開けた。 「どしたんすか、ソレ・・・肌荒れ?」 「いや、火傷」 「火傷!?・・・え、なんで顔に火傷?」 「鬼火にやられた」 「・・・はい?おにび・・・?」 「うん、火の妖怪」 「・・・雪音さん、大丈夫すか?熱とか・・・」 ここで、いつもより遅く春香が出勤してきた。顔を見てすぐわか

          空が夕闇に変わる頃【第17章】

          空が夕闇に変わる頃【第16章】

          安心できる人 "鬼火退治"から帰宅した時、時刻は午前2時を回っていた。死んだように眠っていたわたしは、窓を叩く音で起こされた。眩しいと感じたのは、電気がつけっぱなしだったからだ。 のそのそとベッドから立ち上がり、右足を庇いながら窓を開ける。 「・・・酷い顔してるわね」 空舞さんが言うのも無理はない。防火服のおかげで身体は無事だったが、顔全体が赤く腫れ上がっている。 部屋の時計は4時を回ったところ。全然寝れてないじゃん。空舞さんが部屋へ入ってから電気を消し、ベッドへ戻

          空が夕闇に変わる頃【第16章】

          空が夕闇に変わる頃【第15章】

          火傷にご用心 「早坂さん、わたしの事、どう思ってますか?」 「ん?突然どうしたの?」 「前から聞いてみたかったんです」 早坂さんはニコッと微笑んだ。「可愛くてしょうがないわ」 「・・・それだけですか?」 「それだけって?」 「いや、その・・・可愛い以外の感情はないのかなって」 「可愛い以外に何かあるの?」 「え?」 「小さな子供を見ると可愛くてかまいたくなるでしょ?それと同じよ」 「・・・とゆーことは、ただ単に可愛いって感情しかないって事ですか・・・」

          空が夕闇に変わる頃【第15章】

          空が夕闇に変わる頃【第14章】

          だから、それは何? 只今21時45分。 仕事が終わり、春香を誘って近所の居酒屋に飲みに来ている。 なぜこんな時間かというと、今日は結婚式の2次会による貸切りの為、宴会終了に伴い店も営業終了となったからだ。 乾杯後、春香はいつも通り、ジョッキのビールを一気に半分まで減らした。 「疲れた!マジで疲れた!あいつら散らかすだけ散らかしやがって」 「あのはしゃぎようは凄かったね」 「食べ物はこぼしまくるわグラスは割るわ、歌い出すわ!カラオケにでも行ってろっつーの!」 完璧な

          空が夕闇に変わる頃【第14章】

          空が夕闇に変わる頃【第13章】

          救世主 「雪音ちゃん、それ食べたら上がっていいからねー」 「あ、はい。わかりました」 店の時計を確認する。今帰ったら、ちょうど叔母さんがお風呂に入ってる時間だ。ちょうどいい。店の隅のテーブルで賄いのピラフを頬張っていると、目の前にグラスに注がれた水が置かれた。 「働くねぇ、雪音ちゃん」 「木下さん、ありがとうございます」水で口を潤し、食事を再開する。「・・・あの、何でしょうか」 木下さんはテーブルに腰掛け、動かない。 「家に帰りたくないの?」 突如かけられた言

          空が夕闇に変わる頃【第13章】

          空が夕闇に変わる頃【第12章】

          優秀な偵察者 "また来るわ。友達として" あの日、空舞さんは言った。 嬉しかった。これで、最後じゃないんだと。また、会えるんだって。 そう、嬉しかった──・・・「うう〜〜」 先程から、コツコツコツとリズミカルな音が、繰り返し聞こえている。 重い瞼に抗い携帯を見ると、5時58分。勘弁してくれ。 それでも鳴り止まない音。諦めてベッドから起き上がり、カーテンを開ける。そこでやっと、鳴り止んだ。目が開かない為、手探りで窓を開ける。中に入った気配を確認し、窓を閉めて、またベッ

          空が夕闇に変わる頃【第12章】

          空が夕闇に変わる頃【第11章】

          喋る鳥 わたしの目の前には、1羽の黒いカラス。 気のせいでなければ、わたしを見ている。 営業終了後、店を出た直後の事だ。 「春香、アレ、見える?」 「ん?あれって?」 「アレ」わたしはカラスを指差した。つまり地面を。 「は?何?虫でもいるの?」 やっぱり、そうか。 「うん、なんか変な虫いたけど、どっか行っちゃった」 「あんた、大丈夫?仕事中もおかしな事言うし・・・」 「ヤクはやってない」 「あそ、んじゃ、さっさと帰りますか。麦男くんが冷蔵庫で待ってるわ〜」

          空が夕闇に変わる頃【第11章】

          空が夕闇に変わる頃【第10章】

          対峙 失恋を経験した人間が挙って言うのは、時間が解決する。らしい。 恋愛を経験した事のないわたしも、ある意味、それがわかった気がする。 "どう見たって雪音さんの事好きでしょ" 昨日その言葉を聞いてから、わたしの思考回路は完全に停止していた。 何をしていても早坂さんの顔が頭に浮かび、幻覚まで見た。その度に、春香にヤク中と詰られ、一真くんには何度も額に触れられ、家に帰ってからも、ついていないテレビの前で1時間ボーッとしていた。 しかし、一晩寝て頭がリセットされると、嫌でも

          空が夕闇に変わる頃【第10章】

          空が夕闇に変わる頃【第9章】

          好意と疑問 只今20時30分─。 イタリアン酒場TATSUは、本日も大盛況である。 「雪音!2番テーブルに生4つお願い!」 「あいさー!」 「パスタ上がったよ〜」 「俺行きまーす!」 「あっ、雪音!それ終わったら山本さんのチェックよろしく!」 「あいー!」 山本さんとは、店の常連客である。週に1度、仕事終わりに来店し、カウンターでピザとビールを注文するがお決まりだ。メニューには無い山本スペシャルというピザも存在するほど、ピザをこよなく愛するおじさまなのだ。寡黙

          空が夕闇に変わる頃【第9章】