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大会出場の夢を叶えるために考えたこと


就労支援での仕事


去年の春、フェンシングの練習を始めたころ、彼は「今は支援で働いているけど、一般就職したいと思っています。」と、とても元気に話していた。

新年最初の練習。
彼の様子は違っていた。
「燃え尽き症候群になってはいけないですよね」「僕は燃え尽き症候群ですか」と、浮かない顔で何度も質問してきた。
どうしてそう思うのか聞いてみると、「出世がないんです。僕は決まった作業しかできない。」と。
さらに、決められたこと以外や違う環境にいくと、パニックになるので自分は一般就職ができない。一般就職だと出世もあるけど、就労支援を受けている僕の仕事は出世はないと。
仕事をしている中で、仲間ともいろいろあったようで指導員さんに注意されたとも話していた。

仕事や支援の仲間との話を聞いたあと、練習を開始した。

私は、彼のお母さんと年末に話したことが気になっていた。
昨年暮れに、クラブのクリスマス会で食事をしていた時に、彼がお母さんに試合用のユニフォームが欲しいと言っていた。
私はお母さんから、彼には聞こえないところで「試合用のユニフォームは必要ですか」と聞かれ、「練習の時にも履いている人もいるし、試合の時は絶対必要です」と答えた。
さらに、お母さんから「この子、来年試合出れますか」と質問され、私は「このまま練習すれば」と、答えた。
フェンシングの大会は初心者でも誰でも大会は参加できる。
彼は、ルールに沿って試合もできているので、そこは問題ないと思った。
ただ、障害や精神的な部分、いつもと違う環境で試合ができるのか。
健常者と一緒の大会参加で問題ないのかという不安が、拭えなかった。

札幌の大会に出たい

フェンシングを始めたころ、お母さんは「試合なんていいんです。みんなのお邪魔にならずに体を動かすことができれば」と、話していた。
環境に慣れる、フェンシングという競技に慣れるということを優先してきたので、練習時間も短縮し、指導も同じコーチがつく形をとっていた。
徐々に練習時間も長くなり、マンツーマンの練習が集団練習に参加できるようになった。
わが子が競技をしていたら、上手になっていく姿を見ていたら、試合に出場させたい、練習の成果を発揮させたいと思うだろう。
私も一緒の気持ちである。

小学生の選手達と2月の大会について話をしていた時、彼が言った。
「みんな大会が近いんですね。僕も札幌の大会に出たいです」
(北海道フェンシング協会主催の大会に出場したい)
本人から、今年はみんなと一緒の大会にでるのが目標。
言い換えると、それは健常者の大会に出場するということ。
そのために、体を動かします。ストレッチします。
目標を決めたら、練習にも張り合いがでますよね、やる気でてきました、と。

大会出場への思い

彼の大会参加について、私も以前とは考えが変わってきていた。
今までは、知的障害があることで健常者と一緒の大会に出場するのは、難しいのではと思っていた。
練習を重ね、障害者スポーツについて調べてきた。
知的障害や自閉症があることは、健常者の大会に出られない要因になるのか。
垣根をなくすのであれば、同じ大会に参加してもいいのではないかと。
ただ、その考えを誰とも共有できずにいた。
お母さんに大会に出られますかと質問されたときに、もう少し練習したらでれるかもと答えた自分がいた。
答えたあとで、本当にそれが正しい答えだったのか、お母さんや彼に期待を持たせるだけになったらどうしようかとも思った。

ただ、答えは彼自身が持っていた。
みんなと同じ大会に出場することを目標にして、今できることを頑張ると宣言してくれた。
彼がそう目標設定したなら、出る準備をしていくしかない。
私たちにできることは、出る出ないをジャッジすることではなく、出場できるように応援・支援していくことだ。
出るために協会との調整が必要なのか、特に問題はないのか。
どんな状況になったらパニックになるのか、彼の頭の中が混乱しないようにあらゆる設定をして、練習に盛り込んでいけばいいのではないか。
大会参加することで、彼も自信になるだろう。
仕事の悩みの一つでも解決につながるかもしれない。
彼をいつも心配し、応援しているご両親の不安の一つが解消されるかもしれない。

彼が大会に出ることがかなえたい夢になった。

#かなえたい夢

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