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クセ心 VS 歌心

あんときみたいに、俺の人間性を誤解されたままで終わらせたくなく、俺はMPCXを使って作曲活動を続けている。

MPCXを使って、ビート販売をしてお金を稼ぎつつ、You TubeやTikTokでこんなコンプレックスだらけの俺でもイケイケに生きていけるぞという作詞作曲をして人間アピールし、知名度が上がったらその生き様というか、スマホ依存解消法やトラウマ解消法など生活に役立つ知識を動画で皆に拡散し、マイナスなレッテルを理不尽に貼られた方にもロマンを抱ける兆しになりたいという夢がある。

だが、どうもお金に恵まれない。俺は借金をしている。音楽への臨場感のこだわりが強く、MPCXと他に機材の費用が欲しいがために、ある副業を始めたがそれが罠だった。収益は一切なく、努力すればするほどロイヤリティとスタッフ外注費が引かれるだけだった。

その穴埋めをするために、俺は期間工で働くことになった。


そこで、かつてアルバイトで働いていたラーメン屋を思い出す。


当時、俺は緘黙フラグが立ちながらもボイストレーニングでオリジナル曲を作って投稿し、俺と同じ境遇の人を救いたいという思いがあった。

声楽教室にも通っていて、良い先生に巡り会え、レッスンで厳しいこと教えられながらも時々褒められることもあった。特に歌のコンディションは繊細で、舌根を下げ、口蓋を上に引き上げたまま喋るといいというアドバイスももらった。約5年くらい通い、レッスン料が払えそうにない時期に、ラーメン屋でのアルバイトをすることにした。

そこには年下ながら俺より器用で仕事ができる麺職人がいた。俺はホールスタッフで接客をすることになったが、お客様と長く話すにつれ、喉仏を上げることをキープしづらくなった。口蓋に意識しすぎると麺職人から声が小さいとか口蓋と接客なにが関係ある?とか罵倒されるようになり、緊張で口蓋は完全に下がりきって喋る時に顎に常に力が入るほど自律神経が歪んでしまった。正しいフォームに戻そうとするも、形状記憶合金のように"緊張のクセ"が出来てしまい、声楽教室は挫折した。

そんな麺職人の彼だが、プライベートでは極度のゲーマーで、彼と遊んだ時に人をキャラクター扱いする態度や言動がしばしばあった。それでも、人は理由なしに不可解な態度や言動をとることはできないと自分に言い聞かせ、我慢していた。だがある日、俺の好きなミュージシャンまで馬鹿にするような発言をし、さすがに怒ったが、既に彼らにはコミュニティが出来上がっているみたいで、人それぞれ価値観が違うと、俺の歌心を何一つ受け取りはしなかった。

彼にも苦労はあるだろうが、ゲーム実況が盛んな競争やエゴに執着するご時世の権力にすがりついて、俺を見下している風にも見てとれ、頭に彼の残像が残って毎日頭痛が続いた。

再び彼の家に行ったが既に空き家になっており、俺は彼を見失い、激しい頭痛に襲われるようになった。

その頃、テレビのニュースを見ると、自殺したいじめられていた子が残した手紙に記された夢、舞台関係者への誹謗中傷事件などが目に焼き付いた。
俺は彼らの痛みがきっと分かる気がした。
一生懸命アウェイで導いてくれている(導いてくれていただろう)人を"無防備"として見るなと言いたい。

俺は約2年間試行錯誤し頭痛から開放した。
残像の描写を、まず無料動画編集アプリで彼そっくりのマネキンを作成し、破壊光線のエフェクトでボコボコにし、泣きっ面を臨場感を意識して表現すると、高揚感に満ち溢れ、見事に昇華していった。自律神経も回復した。初戦人間の根本は弱肉強食の野生動物か。

だが、今生まれ変わった俺なら今生きている彼や彼らのコミュニティに気づきを与えたいと思う。

多分ラーメン屋よりもハードルが高い期間工。

俺はその仕事も人間関係のトラブルも乗り越えつつ、帰宅後わずかな時間の中MPCXで作曲を始めている。

ああ、今日はMPCXでSDカードの楽曲データが全て消えてしまった。

"歌心"が届く日はいつか来ると信じている。







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