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ヒストリー6 〜ディエスの反抗期!俺はもっと強くなれる〜

ネグロ山。

《ディエス視点》

ジンオウ達がいる家族亭から少し離れた場所に、ディエスのお気に入りの場所がある。
そこは、〝長老の木〟という大木で何百年も前から、そこで生きて、ネグロ山を見守ってきた。

ディエス『長老、また登らせてもらうよ。』

ディエスは〝長老の木〟に話しかけると、木の上を登って行く。しばらく登って行くと、太い枝がある。
子供なら2、3人は座れそうな立派な枝だ。
その枝に腰かけるディエス。

そこから見える景色はアンジュー地方を
一望できる。下に目をやれば、町の灯が
ポツポツと見え上を見渡せば、月と幾千の星が
川のように流れている。
ときどき、星のカケラが川から溢れ落ちた。

ディエス『ちょっと寒いな・・』

夜の山の寒さが、ディエスの肌を刺激する。

ディエス『・・・』

ボーっとするディエス。
空気の流れが変わって、人の気配がした。

?『やっぱ、ここにいたか。』

ディエス『・・ノン。』

ノン『ディエスの事だから、ここだと思ったよ。』

ディエス『ノンの事だから、追いかけて来て
くれると思った。』

ノン『ったく、甘えただな、ディエスは。』

ノンはディエスの横に座った。

ディエス『なぁ、ノン。』

ノン『ん?』

ディエス『月を創った神様って、なんで月を創ろうとしたのかな?』

ノン『なんだよ、いきなり。』

ディエス『真剣に聞いてんの。』

ノンは、ディエスの方に向けていた視線をそらして、月と星に視線を向けた。

ノン『それを言ったら、星だって神様はいるし、太陽、雲、大地にだって、水にだって神様はいるからな。それぞれが、なんか大切な役割持って創られたんじゃねーの?それで、俺たちも生きていけてるし。』

ディエス『なんかさ、もしかして神様同士で、喧嘩してたりして。』

ノン『喧嘩?』

ディエス『だってさ、思わねぇ?太陽と月と星が、一緒にでてるとこ見た事ない。朝と昼は太陽で、夜だけ、月と星なんだよな。』

ノン『うーん、考えた事もなかったわ笑それが役割な気もするけど。』

ディエス『だから、月と星は、いつも太陽に追いやられるんだよ。太陽が眠ってる時しか、あのふたつは輝けないんだ。』

ディエスの目は、純粋に月と星が創った川を見ている。

ディエス『・・なんか、今の俺みたいだなぁって、思ってさ笑』

ノン『なんでだよ!誰もディエスの事追いやってないだろ?ってか、太陽が、月と星を追いやってるかもよくわからねぇけど。』

ディエス『わかってる。みんな好きだしみんなも俺の事好きって事も知ってるしさ。』

少しの沈黙。

ノン『・・そんなに任務行きてーの?』

ディエス『そりゃ行きてーよ、なんか俺だけ役に立ってないみたいじゃん。』

ノン『最低限の〝色彩〟さえ完璧に覚えたら、ジンオウも、ディエスに任務を与えるって。もうすぐ習得できそうだろ?』

ディエス『ノン・・、1年前にも同じ事言ってたよ。』

ノン『そ、そうだっけ。』

ディエス『もういいよ。誰も悪くないし、自分に才能ないから、こんな事になってんだよ。』

また、少しの沈黙。

ノン『人を殺めるって、けっこう大変だぞ?』

ディエス『大変でもいい。自分の生きてる意味がそこにあるんだったら、辛い事だって耐えれるよ。』

ノン『・・殺されるかも、しれない。』

ディエス『みんな、それを乗り切ってきたじゃん。それは、みんな強いからだ。諦めなかったからだ。弱虫じゃなかったからだ。』

ノン『・・・』

フクロウの声、虫の声、風に靡く、山の音だけが2人を包み込む。

そして、また沈黙。

ディエス『俺は絶対に強くなってやるよ。ノンよりも、みんなよりも。』

ディエスの目が、強く光りだした。

ディエス『そして、先生に恩返しをする。俺たちを育ててくれた先生に、最高の贈り物をするんだ!』

ディエスが立ち上がった。

ノン『すげー、いいじゃんそれ!俺たち、みんなでジンオウを驚ろかしてやろーぜ!』

ノンも立ち上がる。

2人で、夜空を眺めた。その先に何があるのか、まだわからない。わからないけど、今の2人には月と星の輝きよりも、もっと大きな輝きを、見つけようとしていた。

ノン『ってか、ディエス。』

ディエス『なんだよ?』

ノン『俺より、強くなるは言い過ぎだな』

ディエス『今はだろ?近いうちにノンを超えてやる!』

ディエスが白い歯を見せて笑う。

ノン『おう、できるもんならやってみろ。』

ノンも白い歯を見せて、笑った。

つづく。

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