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ヒストリー14 つづき⑦

時間を少し戻す。

《アイリ視点》

ブラグ『アイリ。』

アイリ『はい。』

ブラグ『あれから、10年がたつ。
俺を憎んでいるか?』

アイリは首を横に振った。
その顔もまた、穏やかだ。

ブラグ『何年も、ずっと軟禁状態だった。
旦那として、妻を愛する事もせず、
父親として我が子さえも、手放した。
それでも恨んでいないのか?』

アイリ『憎しみや、恨みなんて私には
ありません。
レオも立派に成長しているのですよ。
それが全てです。10年間、貴方は
間接的ながらも、レオの成長を
助けてくれました。』

アイリの穏やかな表情は揺らがない。

ブラグ『なぜ?なぜそこまで
許せる事ができるんだ?
俺は夫としても、父親としても
何もしてないんだぞ?』

アイリ『何もしてない、なんて
言わないでください。貴方は充分に
私達を愛してくれたと思います。
それが、違う形の愛だとしても、
私はその形を感じて、
今幸せに暮らしています。』

ブラグ『・・・』

ブラグは椅子から立ち上がって、
暖炉の前のソファーに座った。
その背中を、アイリが見つめる。

ブラグ『・・俺は、アイリが居てくれたら
それでいいんだ。』

ブラグの肩が震えている。

ブラグ『なぜ、レオばかりを愛するんだ?
なぜ、俺を見てくれない?
、、なぜ、俺に憎しみの言葉も言わない?』

アイリは黙ってブラグの背中を見つめている。

ブラグ『答えてくれ、、アイリ。』

アイリ『レオは私達の大切な子供。
あの子は愛される為に、私を選んでくれました。
だから貴方も・・』

ブラグ『ダメだ、ダメなんだよ、、』

ブラグがアイリの話しを遮るようにつぶやいた。

ブラグ『レオは、レオの目は赤いんだ、、
〝死神の呪い〟をかけられて生まれてきた、、
あの子は生まれるべきじゃなかった、、、
俺とアイリの仲を割いたのも、レオじゃないか、、
レオさえ生まれてこなければ
こんな事になってなかったんだ、、。』

アイリ『・・貴方、
なぜレオを愛せないのですか?』

ブラグ『何を言っている?〝赤き眼〟の
レオと関わると、
みんなに災いをもたらすんだぞ!?
家族!一族!関わった者全てにだ!
今まで大事に育ててきた愛でさえも・・
〝神への叛逆者〟〔はんぎゃくしゃ〕が〝死神〟だ。
そして神と悪魔の間に佇む存在の死神。
その〝死神〟の呪いにかかって生まれたレオ、、
たった1人の〝死神〟のせいで全部、、全部
壊される、、』

ブラグが両手で顔を覆った。

沈黙。
沈黙。

アイリ『例え神を裏切った〝死神〟でも
〝悪魔〟だとしても、私はレオと生きます。』

ブラグ『・・・』

ブラグが立ち上がった。
服の内ポケットから何かを取り出した。
光る物。
ナイフだ。

つづく。

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