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超短篇小説10 "死神"

私は死神。


死の淵にいる人間の最期を見届ける立会人である。  


人間は死神というと恐ろしい存在と思っている人が多いかも知れないが、そんなことはない。  


私達死神は死の淵にいる人間に今までの人生の記録、つまり走馬灯を見せるという使命がある。  


しかし、最近困ったことがある。  


最近の人間は医療技術というものを身につけたことにより、死の淵にいた人間が息を吹き返すということがある。  


何故それが困るのかというと、
死にゆく人間が少なくなることにより、
走馬灯を記録しているメモリーの容量が足りなくなってきてしまっているのである。  


それ故に最近は死にゆくものへ見せる走馬灯の内容が薄くなってしまっている。  


それの何が問題かって?  


私達は死ぬ2時間ほど前に死にゆく人間の前に現れ2時間の走馬灯を見せている。


しかし、今の走馬灯は容量不足により20分ほどになってしまったため、余ったの1時間40分がとても気まずいのである。  


それなら、20分前に現れて走馬灯を見せればいいのではと思うがそうはいかない。  


今の死神界の法律では2時間前に現れるという法律から改正されておらず、20分前だと違法になり処罰を食らってしまうのである。  


そのため2時間前に現れなければならない。  


そして、今は2時間前に現れる走馬灯を見せ、その後無言で1時間40分目の前にいるという地獄の様な時間がある。  


むしろ、最近では死にゆく人間がその気まずさから早く死にたがる事例も出てきている。  



という話を今日も死にゆく人間に話して時間を潰している私である。

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