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書き出しで引きつけよう

文章を書こうとPCに向かい、そしてフリーズ。
書き出しが、決まらない・・・。
こんな経験、ないですか?

文章があふれている時代です。
「おっ」と読者を引きつけられるかどうか、
決め手の一つは、最初の数行の書き出しです。

キャッチーな、最初の数行。
本文にうまく誘導する書き出し。
そのアイデアをひねり出すのは大変です。
私が書いた記事で、書き出しが強く心に残っているのはこちら。

「私の一番古い記憶は、母の寝間着の花柄だ。あの花柄を思い出すたび、甘やかな気持ちになる。「母」のイメージは、いつも慈愛に満ちた、穏やかで温かい存在だった。自分が、母になるまでは」

三つ子をワンオペ育児していた母親が一人を死なせた事件の裁判について、
当時、私は大型コラム「ニュースを問う」で連載しており、
これは最終回の書き出しです。

「母親はいつもニコニコして赤ちゃんを抱っこしている」と、
平和なイメージを持っていたんですが、
実際に自分が子どもを産んで、ワンオペ育児が始まると、全く違いました。
極限を超えた睡眠不足、身体的精神的疲労で、意識が朦朧とする日々。
子どもは愛してます。が、「あー可愛い」とほほえむ余裕はゼロでした…。

こうして「母性」の幻想が壊れた実体験をもとに、
日本社会に蔓延する「母性神話」に対する批判を書きました。
「心の一番奥で、自分を縛り付けている幻想、価値観」を
「一番古い記憶にある花柄の寝間着の母」でイメージしてもらい、
読者をしっかり引きつけたかったので、断定調の強めの文で書きました。

私は書き出しが苦手なんですが、この時は珍しくすらすら書けました。
(そういえばデスクに直されませんでした。これも珍しかった)
自分が書きたいこと」と、「それを伝えるイメージ」が
しっかり固まっていたから
かなと思います。

こうした書き出しに注目して文章を読み、
アイデアの引き出しを増やしてみてはいかがでしょうか。

私は新聞の連載で勉強しています。
事実を端的に淡々と伝えるストレートニュースとは違い、
連載では読者をストーリーに引き込むために、
いろいろなテクニックが使われているからです。
気になる書き出しがあると、
「なぜ、こう書いたんだろう?」と、書き手に思いをめぐらせます。
アイデア出しの訓練と思っています。

お気に入りの一つが、2022年11月16日の中日新聞市民版。
有松の古い町並みで生きる人々にフォーカスした連載「人情交差点」です。
この日の書き出しは、
「カメラを構えた観光客が、レンズ越しに江戸をのぞく」
「レンズ越し」に「江戸をのぞく」。言葉のコントラストにひかれました。
こうしたお気に入りの文章との出会いも、新聞の醍醐味と思っています!

さて、お知らせです。
次回の文章力とコミュ力アップ講座は6月11日(日)15:40~17:50、
栄中日文化センター(名古屋市中区栄4-16-36)
です!
予約は5月9日(火)~6月8日(木)、先着順です。ぜひお越しください(^^)

文章力やコミュ力を学ぶ中日新聞人材研修事業「ビズトレ」の詳細はこちら https://www.chunichi.co.jp/info/nib

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