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暗幕のゲルニカ:原田マハ

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無力な人々を苦しめるテロリズム、武器を持たぬ人々の命を奪った戦争。その暴挙に、絵筆一本で立ち向かった芸術家がいたことを。芸術家の名は、パブロ・ピカソ。そして、その絵のタイトルは〈ゲルニカ〉


くぅ〜

原田マハさんは、「楽園のカンヴァス」「翼をください(上下)」に続いて3冊目。この方の小説を読み終わると毎回、丁寧な接客を受けた後のような印象を受ける。物語の進め方や登場人物同士の会話に至るまでうまく表現できないけど、とにかくやさしい。

暗幕のゲルニカはゲルニカが描かれたスペイン内戦時と911の同時多発テロ時の2つの時代が交互に描かれていきます。

人類の愚かさから生じた争いの中にあっても、登場人物同士の間には互いへの敬意が決して損なわれることはなく、その会話から感じられるあたたかさや人物同士の絆などから、読者にはある種の「安心」がもたらされます。これが本当に心地よい。安心して読み進められる。

内戦時は実在した写真家でピカソの恋人であるドラ•マールの視点で描かれる。圧倒的な才能を持つ「創造主」であるピカソの直ぐ側にいながら、その創造主が描く自分と理想の自分との溝への葛藤は読み応えがありました。そしてその2人を直ぐ側で献身的に支えるパルド•イグナシオは物語が終盤に向かうほど存在感を増してきます。

現代は、911テロにて最愛の人をなくしたMoMAのキュレーター、ヤガミヨーコが中心です。

時代を超えて、2人の女性とピカソ渾身のメッセージであるゲルニカの物語。ゲルニカは誰のものか?

ゲルニカは誰のものでもない。わたしたちのものだ。


最後に、パリ万博のスペイン館に展示されたゲルニカを見に来たナチスの将校が、ピカソに対して「この絵を描いたのは、貴様か?」と質問をすると、ピカソが毅然とした態度で「いいや。この絵の作者はあんたたちだ」と答えるシーンがありますが、、、

ここはしびれた

死ぬ前に一度でいいから生ゲルニカに対面してみたいと思いました。

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