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NIリサーチャーコラム #42 クロス集計表の視覚化 ~コレスポンデンス分析入門~(2024年6月執筆)

執筆者: リサーチ・コンサルティング部 A. Y
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。

1)データの可視化

データの解析において、データの可視化や解釈の仕方は重要なテーマの一つになります。

特に、膨大なデータを扱う場合には、効果的で理解しやすい形でアウトプットを表現することが不可欠となり、コレスポンデンス分析は、データの可視化をするために広く利用されています。

今回のコラムでは、コレスポンデンス分析の基本概念から結果の見方、メリット・デメリットまでを紹介し、その魅力と有用性について、わかりやすくお話しできればと思います。

2)コレスポンデンス分析とは

コレスポンデンス分析は、簡単に言うと、「クロス集計表の視覚化」になります。

行と列のカテゴリー間の関連性を視覚的にプロットすることで、データの構造を直感的に理解することができます。

集計表をみて、項目が多く結果が分かりづらかった、結果を読み解くのにかなり時間がかかった等のご経験はないでしょうか。

例えば、下記【図①】の集計表をみて、どのような結果であると解釈できるでしょうか。

※例では、商品A~Dの商品イメージのポジショニングを比較したデータを用いています。

それぞれの商品ごとの特徴を確認して、時間をかければ特徴はある程度見えるかもしれません。

または、下記【図②】のように書式でスケール表示などの工夫をすることで、少しは特徴が見やすくなります。

あるいは、棒グラフや折れ線グラフで表現しても、加工していない集計表に比べると見やすくなる可能性はあります。

では、より視覚的に理解できるように実際にコレスポンデンス分析をかけて分析すると、下記【図③】のようになります。

結果の解釈の仕方は基本的には次のように見ていきます。

✓原点からの方向性を見て解釈する(軸に意味づけをしておくと解釈しやすくなります)
→原点から見て同じ方向にあれば、同様の意味づけができます

✓距離を見て解釈する
→相対的に見て、似ているカテゴリーは近くに配置され、似ていないカテゴリーは遠くに配置されます
※寄与率は、説明力を表します

<解釈例>

  • 商品A:「価格が安い」といったイメージが強い

  • 商品B:「味が濃く」「お酒に合う」といったポジション、また、価格も比較的安め

  • 商品C:「さっぱり」「健康的」といった印象を持たれている

  • 商品D:「本格的」「食べ応えがある」「おいしい」等といったイメージが相対的に強い

このように、商品A~Dを相対的に見たときにどのようなポジションニングにあるかを確認することができます。

3)コレスポンデンス分析のメリット・デメリット

では、ここからは、コレスポンデンス分析のメリット・デメリットをお話していきたいと思います。

【メリット】

✓結果の解釈が視覚的にわかりやすくなる
カテゴリー間の関係を直感的に把握できることが最大のメリットになります

✓多くのソフトで対応が可能
エクセル統計や太閤、SPSSやR、JMPなど多くのソフトで対応可能となっています
※オプションとなっているソフトもあります

✓集計表があれば、分析可能
集計済みのデータがあれば分析が可能となりますので、ローデータの必要はありません
(n表、%表、または、平均値で出力可能です)

【デメリット】

✓結果の解釈が難しい場合がある
多数のカテゴリーが存在する場合やデータの分布が複雑な場合は注意が必要です

✓サンプルサイズの大小はわからない
散布図には、1つの点として表現されるため、サンプルサイズの大小はわかりません

✓外れ値の影響
外れ値があると、特定の要素の率が極端に高くなる、または低くなることがあり、データが歪んで表示される可能性があります

4)おわりに

コレスポンデンス分析は、データの関係性を視覚的に理解するための強力な分析方法です。しかし、その結果の解釈には注意が必要です。

データの特性や目的に応じて適切な方法で処理を行い、また、クロス表とあわせて確認するなど、慎重に解釈することで、コレスポンデンス分析のメリットを最大限に活用できます。

今回ご紹介させていただきましたコレスポンデンス分析は、多変量解析の一つであり、デメリットについても触れさせていただきましたが、ケースに応じ様々な要因を考慮し適切にデータを見ることが重要なポイントになります。

当社のレポートでは、コレスポンデンス分析のようなアウトプットを用いたり、調査結果の視認性を高めてわかりやすく提供することを心がけております。

こういった調査がしたいといった調査実施に関するご相談の他、集計表のデータ加工やレポートの見せ方、その他のアウトプットなどについても、ぜひ当社の経験豊富なリサーチャーにお気軽にお問い合わせいただけましたら幸いです。


執筆者プロフィール

リサーチ・コンサルティング部 A. Y

前職では、主にFW部門に従事、実査現場では実際にアンケート参加者の方の声を直接聞きながら走り回りました。
集めたアンケート結果の集計・分析部分に興味を持ち2013年から当社集計部門へ。
2023.11月より現職。
現在では食品や日用品・消費財などのメーカー様の課題解決のために企画・設計~報告までを担当しています。
単に集めたデータを正確に集計~報告するだけではなく、お客様がより解釈しやすい、新たな気づきを得られるような分かりやすいアウトプットを意識して業務にあたっています。