ドイツ語に海が3つあるワケ②
こんにちは。
海に行きたい!
が言えないモンダイ、第二弾。
大洋(5大洋)はder Ozean。
それに繋がっている海がdie Seeやdas Meer。
大洋につながっておらず、湖のような形状をしていても、その大きさや塩分濃度からMeerが使われている場所もあること(ならSeeでもいいんだけど^_^)。
そしてこのMeerは英語のseaと同じであることが前回わかりました。
ではこの5大洋以外の海、das Meerとdie Seeの違いは?
というのが今回のお話です。
もともと海という意味はない
早速、大洋以外の海の名前をざっと見ていきましょう。
Seeが使われている海
die Ostsee
(Baltic Sea: バルト海)
die Nordsee
(North Sea: 北海)
die Irische See
(Irish Sea: アイルランド海)
die Grönlandsee
(Greenland Sea: グリーンランド海)
die Philippinensee
(Philippine Sea: フィリピン海)
die Bismarcsee
(Bismarck Sea: ビスマルク海)
Meerが使われている海
das Ägäische Meer
(Aegean Sea: エーゲ海)
das Schwarze Meer
( Black Sea: 黒海)
das Asowsche Meer
(Sea of Azov: アゾフ海)
das Kaspische Meer
(Caspian Sea: カスピ海)
das Arabische Meer
(Arabian Sea: アラビア海)
das Karibische Meer
(Caribbean Sea: カリブ海)
英語は全てsea。
ところが、ドイツ語はdie Seeとdas Meerと2通りあって、どちらも「海」という同じ意味で使われているという現象。
調べてみると。。
ヤバいの見つけた(笑)。
DUDEN 語源辞典によると、このドイツ語のSeeとMeer、元々同じ意味の単語だったそう。
しかも意味は「海」じゃない( ̄▽ ̄;)。
「湿地」「沼」「池」「湖」のような流れのない水場の意味。
あの、それ言い出したら、話だいぶ変わってくるよ(笑)?
つまりここで、今まで見てきたdie Seeに加えて、der See(湖)が出てくるってことです(泣)。
湖まで話を広げると更に混乱しそうだから、そぉ〜っとしておいたけれど。。
しょうがないぜ〜(See)。
ドイツ語には、実はもう一つ、同じ綴りで男性名詞のSeeがあります。
むしろSeeと聞けば、一般的にはこの男性名詞の、湖という意味での言葉を思い浮かべる人の方が多いはずです。
登場人物を少し整理します。
der Ozean: 5大洋
das Meerあるいはdie See:大洋以外の、多くの場合、それに続く海。(例外は下記の記事ご参照下さい↓)
で、この大洋以外の「海」の使い分けを解き明かそうと思ったら、
der See: 湖
が出てきた、っていうことです。
少し時代は遡りますが、もともとder See(湖・湿地・etc.)があって、そこからdie See(海)という言葉が派生した、というのが歴史的な流れです。
地域差はあれど、14世紀以降にはすでに、海という意味でsēが女性名詞として使われており、ただ、その意味の違い(海と湖)は17世紀以降になってようやく明確になっていったようです。
意味があべこべに?
大昔の言葉の変遷の話から、今度は今現在のドイツで起きている面白い現象を紹介したいと思います。
湖といえば、ドイツで有名なのは南部のボーデン湖や・・
シュタインベルガー湖。
また、北ドイツのハノーファー近くにはこんな湖や・・
ブレーメン北西に位置するこんな湖も。
全て湖です。
ちなみに上記二つは、
Der Bodensee
Der Steinberger See
湖、という意味の男性名詞のSeeです。
問題は北ドイツ。
日本語表記が、北ドイツの湖でメアー、
つまり海(Meer)となっています💦
ドイツ語でもそれぞれ、
- Steinhuder Meer
(シュタインフーバー・メアー)
- Zwischenahn Meer
(ツヴィッシェンアーナー・メアー)
です。
ドイツ人でも❓の現象なのですが。
これは、前回の話のように塩分濃度とか規模とか関係ない、正真正銘の淡水湖の話。
じゃぁなんで、北ドイツでは湖を「海」と呼ぶの?
これは、そもそもSeeとMeerという言葉が「湖・池・湿地」などの意味で使われていた、という既述のことに関係しています。
北ドイツ、特にドイツ北西部やオランダで話されている言葉を聞いているとよく分かりますが、この辺の地域はアングロサクソンの入植により英語の影響を強く受けています。
そんな中、北ドイツでは元々湖や湿地などを意味していたdie Seeとdas Meerから、海の方はseaに近いSeeと呼ぶようになり、そして古くはMere、つまりMeerの方を旧来からの湖という意味で使い続けているために湖をMeerと呼んでいる、ということです。
そういうわけで、Meerは北ドイツの人々にとっては、れっきとした「湖」であります(笑)。
一方、海から離れた南の内陸の方へ行くと、Seeという言葉は北ドイツの「海」という意味からder See(湖)の意味合いが濃くなります。
実際、ドイツ北西部以外ではドイツ語の単語の最後に-seeと名の付く湖がたくさんあります。
der Ammersee, der Starnberger See, der Chiemsee(南ドイツ)
der Wannsee(ベルリン郊外)
もちろん、南ドイツにも女性名詞die Seeで(海)の意味があります。
が、このdie Seeには複数形がありません。
ここに、標準ドイツ語でdas Meerとdie Seeがどちらも海でありながら、一般的な使われ方が南北で違ってくることが関係してきます。
なんだか・・かつて湿地という意味だった海の話だけに沼にハマってしまった気がします。
次回でまとめられる気が全くしませんが、今しばらく深い海のお話にお付き合い下さい。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
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