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「社員をサーフィンに行かせよう」を読んだ

Yです。京都のスタートアップでエンジニアをしています。

僕は現在大阪に住んでいて、勤務先の京都までは京阪電車に揺られて1時間ほどかけて通っています。

先日、弊社の代表から「今日車で来てるから乗ってきなよ」と声をかけてもらい一緒に帰ることに。たまたま弊社の代表も大阪在住、かつ僕の自宅から数駅のところに住んでいるようです。

実は8月に転職してきたばかりであまり深い話をしたことがなかったので、前職の話や趣味の話、家族の話などなかなか濃い話ができました。

その中で弊社の経営に多くの影響を受けているという1冊の本を教えてもらいました。その人が影響を受けたものを知ることは価値観を理解する近道だと思いさっそくポチりました。

パタゴニア創業者、イヴォン・シュイナードが考える経営論が書かれている本です。イヴォンの生い立ちから、パタゴニア創業の経緯、どのように経営論が形作られてきたかという歴史が書かれています。

この本で大事だと思ったポイントは以下の3つ
1. いつでもサーフィンにいける ≒ 自己管理が不可欠
2. 可能な限りシンプルにする
3. 地球環境への影響を常に考える

それぞれについて述べていきます。

1. いつでもサーフィンに行くためには ≒ 自己管理が不可欠

まずタイトルにもなっている「社員をサーフィンに行かせよう」の意味について。初めにタイトルを見たときサーフィンを布教しているのかと勘違いしていましたが、原題である "Let My People Go Surfing" を直訳すると「My People(社員)を自由にサーフィンに行かせてあげよう」となります。

パタゴニアでは勤務時間中でも好きなタイミングでサーフィンに行くことができます。サーフィンだけに限った話ではなく登山でも自転車でもなんでもいい。ただイヴォンがサーフィンが一番好きだからこの例を出したそうです。この言葉には彼なりの4つの狙いがあります。

【責任感】
・今からサーフィンに行っていいかなど上司に伺いを立てるようではいけない。
・仕事に責任を持ち、もし仕事が遅れたら夜や週末に仕事をして遅れを取り戻せばいい。そういう判断を自分でできるような組織にしたい。
【効率性】
・午後からサーフィンに出かけることを考えると気分が上がるし、それまでに仕事を終わらせようと効率的になる。
・どこにも出かけられない代わりに仕事をしていないビジネスマンは多い。勤務時間が終わるのをダラダラ待つなど。そこに生産性はない。
【融通をきかせること】
・サーフィンは1週間も先の予定を立てることはできない。その時間にいい波がくるかどうかはわからないから。
・いい波が来たことが分かったらすぐに出かけられるように普段から仕事のスタイルをフレキシブルにしておかなければならない。
【協調性】
・自分がサーフィンなどで会社を離れる際、他の人に仕事を任せられるように誰がどういう仕事をやっているか常に周囲が理解している必要がある。

「いつでもサーフィンに行っていい」というのは決して自由なだけでなく、そこには自己管理が不可欠であることがポイントです。
パタゴニアでは年功序列や定期昇給はなく、個人の達成度合いによって賃金が決まります。更に値下げや降格もあるといいます。

2. 可能な限りシンプルにする

これはパタゴニアの製品デザインの理念の一つです。
いいデザインとは最小限のデザインであり、複雑さは、機能面の必要性が整理されていないことの表れであると述べられています。

以前読んだ日本の本によると、ある人が、剣道の師匠の奥方に、敷き砂利の庭が美しいという賛辞を送った。「粗粒の砂を敷き詰めた一角に、近くの小川で拾った石が三つ添えられていて『心を揺さぶる力強い印象と調和』を醸し出していますね」。師匠の奥方はその誉め言葉に対して「庭は未完成です。三つではなく、ただ一つの石だけで同じ印象を与えられるようになってはじめて完成するのです」と答えた。(125ページより)

これはエンジニアの仕事にも非常に通ずるところがあると思っていて、同じ処理を行うにも複雑なコードになるエンジニアとほんの数行のコードで済ませられるエンジニアの違いはここにあるんじゃないかと考えています。

仕様をそのまま直訳するようにコードに落とすと冗長なコードができあがってしまいます。ただその前に機能で必要な要素を因数分解し、共通化できるメソッドはないか、この仕様はそもそもオペレーションを少し変えるだけで複雑なロジックを実装する必要がないのではないか、などよりシンプルにする力がデキるエンジニアに必要な能力であると思います。

3. 地球環境への影響を常に考える

パタゴニアの環境活動は前身であるシュイナード・イクイップメント社の時、70年代にヨセミテの岸壁への損傷を防ぐという行動から始まっています。

そのことからイヴォンは岸壁を傷つけないクリーンクライミングの推奨と使い捨てではない高品質の製品作りを目指したのです。

パタゴニアの経営論、理念には至るところで環境への配慮が垣間見えます。

【多機能であるか】
・販売→発送→収納→手入れ→廃棄というサイクルの中で各段階で少なからず環境へ負荷をかけている。一つの製品で複数の機能を担うことができれば環境面への負荷も下げることができる。
【手入れや洗濯は楽か】
・衣料品が環境に及ぼす影響のうち輸送と洗濯が2大トップ。
・アイロン、温水洗浄、ドライクリーニング、乾燥機などは環境への負荷が高い。それらが必要のない製品を作ることが大事。
【地球のための1パーセント同盟】
"1% for the planet"
パタゴニア社は少なくとも毎年売上の1%を自然環境の保護および回復を推進する人々に寄付しています。利益ではなく売上。

これまで正直環境のことを考えて行動をしてきませんでしたが、自分が暮らす地球、何よりも自分たちの次の世代が生きていく地球のことを考えて行動をするイヴォンの考えに感銘を受けました。

まとめ

この本を読み終わって改めて今の会社を思い出してみると近い文化ができあがっている気がしました。「定時がないフルフレックス」だったり「家族が一番。家族のためならいつでも仕事を抜けていい」など…。(社員のほぼ全員が家庭持ちなため)

ある人が影響を受けたモノを知ることはその人が持つ価値観がどういう要素で成り立っているのか理解する助けになると思っています。同じ組織のメンバーに「影響を受けたモノ」を聞くのはなかなかいいアプローチだなと思ったので、これを機に今後もやっていきたいです。

また、逆に自分が影響を受けたモノを発信することで自分がどういう価値観を持っているのか知ってもらういい機会になるのではと思いました。

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