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コロナ禍の子育ては”かわいそう”?0歳&2歳を育てるTVディレクターの本音|#コロナ禍のもやもや子育て

わが家の一日の始まりは、朝5時。夫と手分けしながら、まずは去年10月に出産したばかりの6か月の息子の授乳と着替えを済ませ、6時過ぎからは〝イヤイヤ期〟真っ盛りの2歳4か月の娘のお世話。

「きょうはどのお洋服にする?こっちかな?かわいいね~」とおだてながら服を着替えさせ、娘が通う保育園で2歳児クラスへの進級を機に着用が義務化されたマスクのゴムひもを、必死でなだめながら耳にかける。小さな顔が大きなマスクで覆われ、目しか見えない状態になってしまうことを少し切なく感じつつ、2人を保育園へ送り届け、7時台の通勤電車に飛び乗る ――。

私はNHK報道番組センターのディレクター、矢島哉子。先月、産休から職場復帰した。上に書いたようなバタバタとした日常を送りながら、取材やロケに駆け回っている。2人育児にはまだまだ慣れず、きょうを乗り切るだけで精一杯。1日が終わる頃にはヘトヘトを超えてすっかりヘロヘロだ。

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執務フロアでの一コマ

コロナ禍の中で2歳児と0歳児を育てていることを伝えると「大変な中で頑張ってるね」「無理しないでね」と励まされることはとてもありがたい。でも、そのことを「かわいそう」だと思われたり、世間では「#コロナベビー」なんて造語まで飛び交っていたりすることには強い違和感も抱いている。

そんな私がいま携わっているのが、NHKスペシャル「つながれ!チエノワ」プロジェクト

日本全国1億人の知恵(チエ)を寄せ集めて、悩みや課題を解決する新番組
▼前向きな社会ムーブメントのきっかけを仕掛ける
▼第1回のテーマは〝コロナ禍のもやもや子育て〟

ワクワクするうたい文句とまさに当事者というテーマに心を躍らせて鼻息荒くチームに飛び込んで以来、番組には続々と悩みや知恵が寄せられている。なかには、私と同じように乳幼児を育てる保護者から、さまざまな工夫を凝らして子どもにできる限りの経験・体験をさせてあげているという前向きな知恵も・・・。

取材を通じて、コロナ禍のマイナス面ばかりでなくコロナ禍だからこそ気づけた・得られたというプラス面にも目を向けていきたいと逆に励まされるなか、私自身の知恵も少しだけ共有させてもらいながら、今のありのままの思いをつづってみたい。


画像 子どもたち
2022年4月:息子が6か月を迎えた朝。
この後、娘を着替えさせるのに30分・・・

初めての育児を突然襲ったコロナ禍 書けなくなった「育児日記」

このnoteを書くにあたり、改めて、私自身の〝#コロナ禍のもやもや子育て〟の始まりを振り返ってみた。

私が第1子(娘)を出産したのは、2019年12月。産後2か月ほど経った頃からコロナという未知のウイルスの脅威が騒がれ始め、初めての緊急事態宣言。一時期は思い出したくもないほど病んでいたような・・・。恐る恐る、当時の「育児日記」を引っ張り出す。

いつか娘と一緒に読む日がくるかもしれないと、たくさんの楽しい思い出をつづるために始めた日記。2020年の年明けまでは「児童館デビュー」「初めての電車に」「ママの大学時代の友人たちとご対面」と明るいエピソードが並んでいたが、2月の後半からは「明日から予定がゼロ」「今日も1日中おうちに」「1週間が長い・・・」と暮らしが一変。

夫もできるだけ早く帰宅するよう努めてくれてはいたものの、日中はずっと娘と2人きりの〝密室育児〟。気晴らしや情報交換に行ける場所はすべて閉鎖され、外に出かけると言っても、人とすれ違わないように気を遣いながらベビーカーで家の周りを歩くしかない日々が続く。それでも何とか、気持ちだけは明るく保とうとしていたが、5月には限界が近づいていた。

「GWが明けてから疲れがとれない。毎日たいしたこともしてないのに。3月4月は生きてるだけでありがたい、って前向きだったけど、家と公園の往復と代わり映えないおもちゃでさぞかし娘もつまらなかろう、かといってこっちも四六時中遊ぶのは無理。あぁそもそも私が思い描いてた育児はこんなんじゃない!こんなんなら早く働きたい!でも冬に(?)第二波が来るのが怖い!とか、モヤモヤが堂々巡り・・・」

誰とも会えないなか、育児に関する情報を得たいとSNSをのぞいてみれば、可愛く手の込んだ離乳食に0歳からの知育、キラッキラで映えるハーフバースデー(6か月記念)の飾りつけ・・・。下手にまねをしようとしてさらに疲れ、私にはこんな完璧な育児はできない、母性が足りていないんじゃないかとふさぎ込む毎日。

ついには大きく〝疲労〟と書き、「育児日記」をつづることすら放棄してしまっていた。(※娘よ、ごめんね)。

人との接触を避けてというけれど・・・結局救ってくれたのは人との関わり

辛いことはすぐに忘れてしまいたくなるが、そんなボロボロの私が何に救われたのかを思い返すと、周囲の人たちとの関わりだったように思う。

横断歩道の信号待ちで「こんなご時世だけどお顔見てもいい?まぁ可愛い赤ちゃんね」と見知らぬおばあちゃんに声をかけてもらったこと。

緊急事態宣言が解除されて予約制で利用が再開した子育てサロンで、たわいもない話をしていたスタッフさんに「まぁお母さん明るい!こんな明るいお母さんに育ててもらって〇〇ちゃん(娘)は幸せね」と言ってもらえたこと。

運良く空きがあり、年度途中からお世話になった保育園の連絡ノートで「園での〇〇ちゃん(娘)の様子や笑顔を見ているとおうちで愛情をたくさんもらっているなぁ~と伝わってきます。何か困ったことがあればサポートするのでいつでも言ってくださいね」と担任の先生に励まされたこと・・・。

小さな優しさの積み重ねで少しずつ心が癒やされ、周りと比べなくていいんだ、自分なりに育児を楽しんでいこう、と明るい気持ちを取り戻すことができたように思う。と同時に、この先どんな状況になっても育児は一人で抱えちゃいけないんだな、2人目を産んだときにはもやもやが限界に達する前に絶対に人に助けを求めよう!と肝に銘じた。

オンライン相談をフル活用 私の「チエ」もご紹介します

そして、去年の10月に第2子(息子)を出産。出産当時は少し新規感染者数が落ち着き、今度こそ児童館でいろんなお友達や遊びに触れさせてあげられるのかも?私自身もゆるく地元の情報交換ができるママ友が作れるのかも?と淡い期待をしてみたものの、年明けからはオミクロン株の大流行でまたもや外出自粛に・・・。

日々小さな悩みは絶えなかったが、少しでももやもやしたら即・行動! 早めに人を頼ることで、1人目の産後よりはぐっと楽に過ごせたように感じている。

今回、番組に寄せられた悩みの中には、そんな私の知恵をお伝えできそうなものもあった。

「コロナ禍で初めての子育て、ずっと悩んでいます。コロナ禍以前に利用できたサービスを今も同じように使えたらうれしいのですが・・・。オンライン相談はどの程度深刻な悩み事から相談したらいいのかわからず利用していません」

私がまず頼ったのが、この「オンライン相談」。利用したのは、東京都が東京都助産師会に委託して無料で行っている事業。相談を希望する日の7日前から2日前までにインターネット上から予約ができ、1回につき最大30分間、助産師の方に専門的な相談ができるものだ。

私自身も初回は「ただダラダラ話を聞いてもらっていいのだろうか、あらかじめ要点をまとめておかないと」とノートに自分の家族状況・子供の様子・相談したい内容などを事細かにまとめるほど気負っていたが(※半分職業病)、いざ相談が始まると「どんな話をしてもいいんですよ、時間いっぱい自由に質問してくださいね」と温かく受け止めてもらったうえ、真っ先に相談したかったミルク量や体重の伸び悩み以外にも、「お母さんの睡眠はとれてますか?」「お姉ちゃんの赤ちゃん返りは大丈夫?まだ大変な時期ですよね」などといろいろな観点から気遣ってもらえ、とても心が軽くなった。

その後も2回、あわせて3回利用。毎回、担当者は違ったが皆さん本当に優しく、専門性を活かした助言に加えて自身の子育て経験も交えながらお話をしてくださり、時には温かい励ましに涙したことも・・・。東京都によると、今年度は週4日(月・水・金・土)実施予定とのことだ。

▼コロナ禍の妊産婦からの相談 東京都助産師会“オンラインで不安話して”▼

▼東京都以外の相談窓口は、こちらの記事を参考にしてほしい。産前産後のママのメンタルケアについて▼

乳児健診や予防接種もそうだが、決まった予約時間に合わせて赤ちゃんを連れて出かけるのって、実は大変な部分も。

出がけに大泣きや爆弾ウンチをするのは日常茶飯事、外の空気を吸えるのはリフレッシュになる一方で、帰宅するとどっと疲労が・・・ということが少なくなかった。

それに比べると、すっぴん・パジャマで予約時間直前にパソコンやスマホの前に駆け込めばいい「オンライン相談」は特に産後の身体に負担が少なく、コロナ禍が終わってもぜひ継続してほしいプラスの取り組みだと感じた。

もやもやと心に悩みがたまってきたな、誰かに話を聞いてほしいな、と思ったら、ぜひこの「オンライン相談」も頼ってみていただけたらうれしく思う。

「コロナ禍の子育て=かわいそう」にはしたくない・・・ 子供たちの未来のために

毎日「育児日記」をつづることを諦めてしまったあと、私は時々、自身の記録や近況報告がてら、ごく限られた友人だけに公開しているインスタグラムにありのままの思いをつづるようになった。

「最近、週末はひたすらピクニック。田舎育ちの両親としても、自然の中には触っちゃダメなものはほとんどないし、雑草やお花や木の枝をい~っぱい触らせてあげられるのでうれしくもある!!
シートの上でゆっくりお弁当を食べるのもとても幸せな時間。コロナ禍がなければもっと商業的な施設に遊びに行っていたのかなと思うと、コロナ禍だからこそ得たものもあると思いたいところ・・・」

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2021年4月:はじめて〝菜の花〟に触れてうれしそうな娘

番組の投稿フォームにも、新たに森や山など自然をフィールドにした遊びの楽しさに親子で目覚めたという知恵、自宅で洗濯ばさみにイチゴをつり下げて〝なんちゃってイチゴ狩り〟を楽しむ知恵、フランクフルトやたこ焼きを作って屋台のように並べてお祭り気分を味わう知恵など、子供たちにいろいろな経験を積ませてあげるためのアイデアが続々と届いている。

きょうも大の字になってすやすやと眠る子供たちの可愛い寝顔を眺めながら、〝#コロナ時代〟を生きるこの子たちの未来のためにも、たくさんの前向きな知恵を発掘して伝えていきたいと、思いを新たにした。

報道番組センター ディレクター
矢島哉子

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5月29日(日) NHKスペシャル「つながれ!チエノワ」

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